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「…おい、転入生、早速サボりかよ〜。これじゃ部長に怒られるじゃん」

旗中はそうぼやきながら機材を片付け始めた。


そう、旗中の言う通り、転入生はHRにやってこなかったのである。
旗中がいることに担任も何か察したのか、こちらを見て苦笑いするレベルだ。先生が何かしたわけではないのだろう。

旗中は機材をボストンバッグに仕舞い込むと、肩に背負った。

「相馬。俺、転入生撮ってこいって命令されてるからちょっくら探してくるわ。もし転入生に会ったら俺に連絡してくんね?」
「ああ、わかった」
「あ、変崎もヨロシク。お前聞いてただろ」
「は?俺もっ?…わかったけど」
「おう。じゃあ、行くわ、またな」

後ろにいた変崎にもそう声をかけた旗中はそのまま教室から出て行く。放送部も大変だな。あのケチ根性のすごい旗中が一銭にもならないような放送部の仕事をやっているのが少し不思議だが、彼もきっと好きでやっているんだろう。


変崎は旗中が出ていくのを見届けると、ふうと息を吐いた。

「てか転入生来るんだ。しかもうちのクラスとはね〜」
「そうだな」
「それと、凌賀さんとか絡んでるってマ?」
「?ま?」
「あ、マジの略ね。了解の『り』とノリは一緒」
「り」
「えっ!相馬…飲み込み早いじゃん…!できる子…!」
「なにをそんなに感動しているんだ…」

凌賀さんもこんな気持ちなのね、とよくわからない感傷に浸りはじめた変崎の額にデコピンをしようとキツネさんの手を近づけようとする。しかし慌てて変崎はおでこを両手で隠してのけ反った。そんなに逃げなくても…。

「まあ、生徒会が手伝う的な話は聞いたけど…。俺もよく聞いてない」
「へえ〜…。まぁウチも隊からなにも聞いてないしなあ」

変崎の言ってる「隊」とは恐らく「生徒会の親衛隊」のことだ。変崎はもちろん、凌賀の親衛隊に所属している。基本的に凌賀に関することは親衛隊から伝達が来るらしい。
一応スマホを取り出して確認したようだが、「なにも来てないわ」と変崎は画面を閉じた。

「凌賀さんの手を謎の転入生が煩わせるのはなんだか気にくわないけどなぁ…。まあ、俺らと転入生は無関係っちゃ無関係だし、とりあえず授業行こうぜ」
「ああ…そうだな」

次の授業は体育だし、俺も更衣室へ向かおう。
そう思い、体育着を手に取ろうとしたとき。机の下に何か落ちていた。

「これ…」

落ちていた物を拾い上げると、それは青いUSBだった。なんでこんなところに。

「相馬〜はやく〜、ってあれ?それ、旗中のじゃない?なんかパソコンにぶっ刺してたの見たよ」
「そうなのか?」
「うんうん、しかもUSBをわざわざ教室で落とす奴なんて放送部とかぐらいだろ」
「なるほど」

旗中、出ていく際にUSBを忘れて行ったんだろう。結構こう言うのをなくすとアイツうるさいんだよな。


「…変崎。このUSB、旗中に返してくる。必要なデータとか入ってたら困るし。先に行っててくれ」
「え?あ、わかったけど…体育で着替えもしないといけないんだから遅れんなよ」
「わかった」

変崎と別々に分かれて、俺は旗中の教室へ向かう。旗中すぐ近くにいてくれればいいが。




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