13
生徒会副会長親衛隊の隊室へと通された。

隊室は部活動の部室のような部屋で生徒会親衛隊など人気な隊ほど大きな部屋が与えられる。一応扱いは同好会であるが、隊の掛け持ちは禁止、部活動との両立は許されている。


「相馬、アンタにはいい加減親衛隊に入ってもらうから!」

部屋に入った途端、食ってかかるように言う三笠先輩に俺は身体を後退させる。

「前にもお断りしたはずですが……」

それに親衛隊への無理矢理な勧誘は禁止とされている。必ず本人の同意があってのもと、入隊せねばならない。
兄の親衛隊になど入りたい弟はいるのか?俺は入りたくない。


三笠先輩の言うことに拒否する俺の態度に、三笠先輩は大きくため息をついた。そして、何か思い出したようにこちらを見る。

「…相馬、そういえば携帯はどこにあるの?」
「?ここにありますけど…」

唐突な質問に疑問を浮かべながらもポケットからスマホを取り出す。
貸してと手を出されたため、言われた通り携帯を三笠先輩の手の上に置く。

三笠先輩は画面を立ち上げるとラインを起動し何かを見た瞬間、ものすごく怖い顔で睨みつけてきた。


「ちょっと!なんでアンタ凌賀様のメッセージ通知オフってんのよ!しかも、凌賀様のメッセージ無視してんじゃねーよ!!」
「あ。…通知切っていたの忘れてました」
「なんだって!?」

三笠先輩はめちゃくちゃキレているようで、椅子に座っていた俺の前へドンと机に手をつく。
気のキツいクリクリとした瞳がグッと近づく。

「アンタ、マジでいい加減にしなよ!?アンタの返事がないせいて心配した凌賀様が僕らに「相馬が誘拐されてないか探して!」って勅命出してきて、どんだけ血眼で探したと思う!?電波妨害の調査から誘拐事件の目撃情報探し、あらゆる人間へアンタの身辺調査を依頼して、ワンコにまで聞きまわったのよ!?」

……ワンコにまで聞く心はいかに。

そんなことを突っ込んで聞ける雰囲気ではないため、俺はすみませんと謝るしかない。
三笠先輩の怒りは謝る俺にも全く治らないらしく、ますます早口で怒号を飛ばしまくった。

「そもそも、僕は凌賀様の親衛隊として入ったのに、親衛隊隊長の任務が『体育祭や文化祭などのイベント時の相馬撮影』とか『相馬の今日の運勢調べ』とか『相馬が今日一日の中でクスッと笑った一言について』とかって……なんなのよ!しかも最後のなんかアンタ高確率で笑わないからほぼ報告することないし!!凌賀様からのご命令だから仕方なくやってるけど……監察してればアンタボーッとしたり魚の本ペラペラ読んだり…かと思えばフラフラ急にどっか消えていったり!行動が予測不可能すぎるんだよ!あと凌賀様のメッセージはいつも読まずに一括既読してるし!マジでいい加減にしてくんない!?監察するこっちの身になりなさいよ!」

『相馬のことはずっと見守りたい☆知っていたい☆』をモットーとした凌賀の自分勝手な(しかも個人的興味の入った)相馬案件に三笠先輩は大分辟易としていたようだ。怒りのあまり息がとても荒く、呼吸も激しい。


「今日の蟹座の運勢は12位だったよね…」
「そうそう…相馬くん可哀想に」

…どうやら俺の1日の運勢は親衛隊隊長にも把握されているようだ。
一緒に部屋にいた小さな先輩二人が三笠先輩に聞こえないようこそこそと奥で固まって話していた。
助けて欲しくて一応二人の先輩に視線を送ってみたが、「ごめんね〜」と小声で苦笑された。
助けてくれないのか…。

三笠先輩は自分が興奮していたことに我に帰ってゴホンと息を正す。

「とにかく!アンタが勝手な行動取ると隊にも迷惑がかかるわけ!だからこそ、アンタには親衛隊に加入してもらい、こちら凌賀親衛隊が管理させてもらう!」
「…それは絶対嫌です」

どんな事情であれ、それが俺の自由を奪われる理由にならない。

(ただでさえ兄の連絡がしつこいのに…)



俺のはっきりとした拒絶に三笠先輩は綺麗な細片眉をクイっと動かした。

「そう…。まあ初めから期待はしてなかったからいいよ。でもこちらにも考えがあるから。……二人とも出てきて!」

そう言って三笠先輩は大きく両手を叩いて音を鳴らす。まるで執事でも呼ぶかのような動きに、二人のーーそれは奥の可愛い先輩ではなくーー屈強な男が背後から現れた。

突然に現れた男たちに動揺してしまう。驚いて抵抗もできないうちに身体を抑えつけられ、縄で腕と体ごと縛り上げられてしまう。
物凄い力で縛られ、力を入れたくても入らない。俺はそのまま男達に押さえ込まれるように縛られた体で床へ座り込んだ。奥の二人の先輩達もこの事態は把握できていなかったようで、驚いて抱き合って縮こまっていた。

俺はこの事態に意味がわからず先輩へ抗議する。

「これは…どういうことですか…!」
「フン!隊に入らないというのなら、自分から入りたいと言わせるまでだよ!…さあ、二人ともやっちゃって!」

そう言われたムキムキの先輩達は俺の方へ近寄ってくる。
こんな強そうな先輩たち親衛隊にいたのか…!

兄の顔は万人受けするらしく、イケメンを愛する世の中の女性たちからこんな漢らしい男の人からも支持を受けていた。
しかし、変崎や三笠先輩みたいなどちらかというとあんまり雄々しくない人間しか親衛隊で見たことなかったため、このようなガタイのいい人間がいることは認知していなかった。
親衛隊というもの自体で「制裁」という言葉が無くならないのはこのためか。

無理矢理なやり方に必死に抵抗する。男達が近づかないように必死でしばられていない脚を暴れさせるが、そんな抵抗も彼らには聞かずあっさり捕らえられてしまった。
もう一人の男が背後にまわり首に腕を巻いて身体を固定される。
完全に逃げられない体勢に背中に冷たい汗が流れた。





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