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○○○○○○○○

それは昼休みの出来事だった。
昨日と同じように健也に声をかけられ屋上へ行こうとしていた時だ。

「水谷相馬はいるかしら!」

男子校(ちなみに今更だがここは男子校)にしてはヤケに高いアルトボイスが響いた。
声の方は教室の後ろの扉からだ。自分の名を呼ばれたため席を立ち、扉の方へ向かう。なぜか健也も俺の後をついてきた。

廊下に繋がる後方のドアに立っていたのは、茶髪の髪をくるくると巻いて、仁王立ちしている小柄な先輩だ。この先輩は知っている。

「あ、どうも。三笠先輩」
「どうも。…ていうか僕が呼んだらサッサと来なさいよね!」
「おい相馬、だれこの偉そうなチビ」
「…は!?アンタには言われたくないんだけど!?」

横から健也がそう言って顔を出す。いきなりチビ呼ばわりをしてきた健也に、三笠先輩はいつもの調子でキャンキャンと甲高い声で噛み付いた。

「健也、三笠先輩だよ、兄ちゃんの親衛隊隊長のひと」
「え?凌駕の?」
「ちょっと!凌駕様のこと呼び捨てしないでくれる!?このバカ猿!」
「は!?だれがバカ猿だコラ!」
「先輩に敬語も使えないバカ猿って言ってんのよ!」
「んだと!このチビ!」
「だからアンタもチビじゃないッ!」
「落ち着いてください三笠先輩。健也も」

一応ここに来ていたのは三笠先輩だけじゃなく、後ろに控えていたコロコロとした可愛い見た目の先輩二人がアワアワとする。三笠先輩と一緒で、おそらく親衛隊の人だろう。
三笠先輩と健也を制すると、2人とも不満そうではあるが、一歩ずつ退いた。

「…あの、それで今日はなんの用事でしょうか」
「相馬!アンタには大切〜〜〜なお話があるから、隊室まで来てもらうよ!」
「はぁ?ここで話せないことなんすか?」
「アンタには関係ないことでしょ!問題児の転入生くんは、と・く・に・ね!」
「なんで俺のこと知ってんだよ!」
「フン、知ってるよ。…アンタ、親衛隊の中では色々と有名だからね」

含んだ言い方をする三笠先輩に嫌な感覚がよぎった。健也たちのこと、生徒会の親衛隊はどこまで知っているんだろうか…。健也と生徒会はこの前の様子からあまり良好な関係ではなさそうだ。生徒会の親衛隊は規模も大きく過激派な隊もあるため、彼らに目をつけられるとややこしい。
睨み付けている健也のことを軽く一瞥し、三笠先輩は俺の方へ向き直った。

「フン!相馬、さっさといくよ」
「おい、相馬!」
「わかりました。…健也、大丈夫だよ。三笠先輩のことはよく知ってるし、きっと俺が呼ばれたのも兄ちゃん絡みのことだから」

この先輩は今までそれ以外で俺に接触して来ようとはしなかったのは事実だ。どうせ兄に何か言われたのだろう。三笠先輩は俺に当たりが強いが、実際に何か制裁等を受けたことはない。
しかし、何か気に食わないのか健也は「俺もついていく」と引き下がらない。

「アンタみたいな『部外者』には関係ないことだよ。僕もそんな暇じゃないんだ、さっさとしてくれない?」
「健也ごめん、すぐ帰ってくるから」
「……ッチ」

部外者という言葉に何か引っかかった健也だったが結局大人しく引き下がってくれたようだ。

俺はそのまま健也にありがとうの意を込めてポンポンと肩を叩いて、歩き出した三笠先輩たちの後をそのまま追いかける。





「…なんでいつも凌賀(アイツ)の方に行くんだよ」

健也の呟きは空気にすぐ溶けてしまい、誰にも聞こえることはなかった。


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