小説 | ナノ

「危ないっ!」
 警告の声と救出のための手が出たのは同時だった。敵の放った攻撃の射線上にいた公子はその声に反応して振り向いた瞬間、回避も防御も間に合わないことを悟った。
 だがそこから体をふわりと持ち上げる緑色の触手。エジプトへのこの道中、何度か仲間に助けられたことはあったが、激しい戦闘中にこんなにも優しく触れられたのは初めてだった。
「女の子に手ぇ出してんじゃねぇ!シルバーチャリオッツ!」
 攻撃を外して隙だらけのところに叩き込まれる銀の刃が敵本体の肉体へと食い込み、皮膚を弾き飛ばして血を噴出する。
「見ないほうがいい」
 ジョセフが声をかけ、アヴドゥルが視線を遮るように体を動かした。
「みんな、ごめん」
「こういうときはありがとうって言うもんだぜ?」
 承太郎にそう言われてハッとした公子が礼をしなおし、その場を後にした。
「ん。花京院?行くぞー」
「あ、はい。すぐ行きます」
「何か気になることがあったのか?」
「いえ」
 一団に追いつくように小走りで花京院が移動する。今まで紐状になって自分に巻き付いていたハイエロファントも姿を消した。
「しっかし敵はまず公子を狙ってくるな」
「まあ支援型じゃからな。戦争でも補給隊から狙うのは定石だろう」
「一人のところを襲えば反撃のリスクもありませんからね。これからはなるべく誰かと行動したほうがいい」
「じゃあ早速今夜の宿は俺と一緒のベッドで寝ようぜぇー!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「あっ。そういうの一番精神的にくる」

 が、ポルナレフの言う通り宿の部屋も誰かと同室である必要性を感じ、今日はツインを三部屋用意することになった。ポルナレフを除いた全員の中で誰が同室するかという話になり、今夜は花京院が護衛を任されたのだが。
(公子さんに巻き付くのが、あんなに気持ちのいいものだったなんて思わなかった)
 花京院は昼間の戦いを思い出す。咄嗟だったので何も考えずにぐるぐると公子に絡みつき抱き上げたのだが、女性特有のくびれた腰、ズボン越しだったがはっきりと輪郭が分かってしまった太もも、そしていやでも意識してしまう、胸。
 あんなにも無遠慮に異性に触れたのは初めてだ。まったくもってつくりの違う体に性差を感じ、同時に戸惑いも覚える。
(あんなに細くって柔らかいのか……女の人って……)
「お風呂空いたよー」
 髪を濡らしながらバスルームから公子が出てきた。そんなことを考えている最中にそんな恰好で出てこられると、動揺が顔に出てしまいそうになる。
「あ、じゃあ使うよ」
 シャワールームでは少なくとも一人だ。ここでなんとか動悸を抑えてから部屋に戻ろうと深呼吸してシャワーの蛇口をひねった。

 風呂から上がると公子は布団にうつぶせになっており、スタンドが足腰を揉み解していた。この使い方はスタンド使いならだれもが一度は試すやつだ。
「花京院もやらないの?」
「いや、僕のスタンドは広い場所だと落ち着かないみたいだから」
「広いって、ツインの部屋だよ?」
「もっと狭いところのほうが好きでね」
「あー、わかるかも。ロフトスペースとか好きな感じでしょ」
「人間でいうとその感覚だろうね。まあ、ロフトでもハイエロファントからしたらまだ広いみたいだけど」
「えっ、となると……あのミニ冷蔵庫の中とか落ち着くの?」
「いや……あ、うん。そうだね」
 本当は人間の体内に潜むのが好きなんだ、とはなんとなく言えなくなって適当な相槌でごまかした。
(気持ち悪いよな……体の中に入るのが好きなスタンドで、しかも巻き付いたときに気持ちいいなんて思っちゃうなんて)
 字面だけ見れば完全に変態である。
「だったら私のスタンドでやったげるよ。寝て寝てー」
「えっ」
 強引に押し倒されたわけではないのだが、遠慮することが出来ず言われるがままにうつ伏せの体勢をとる。
 そういえば他人のスタンドが自分に触れるという経験はいままであまりない。どちらかというと他人のスタンドの拳で殴られたりといったことのほうがまだあるのではなかろうか。
「わっ」
「どうしたの?」
「す、すごい……人のスタンド、すごい」
「どうしたの!?」
「いや、感覚っていうかなんていうか……変な感じ。ふわふわっとしてぐっ、みたいな」
「な、なんか急に脳みそが溶けて消えた人みたいな発言になってきてるんだけど……えー、じゃあ私もハイエロにやってもらいたいから……」
 一通りマッサージを終えると公子はクローゼットの中に入っていった。外側から扉を閉めてと合図をする。
「ここならまだいいかな?」
「そ、そこまでしなくても」
「だって、ふわふわっとしてぐっ、ってのを体感したい」
「わかったよ……ハイエロファントグリーン」
 クローゼットの隙間から紐状になったハイエロファントがするすると侵入する。真っ暗な中、淡く緑色に光る触手が伸びて公子の体に巻き付いてくる。
「あの、気持ち悪く、ない?」
「全然?今のところ確かにふわふわっとしてる」
 関節付近に巻き付いた場所にぐっと力を入れる。まだ若い公子は凝っているわけではなかったが長時間の徒歩移動や激しい戦闘により筋肉が疲労している。それを優しく揉み解してやることで溜まっていた疲労物質が薄まっていくだろう。
「んっ」
 クローゼットの扉から漏れる、少女の甘い声。しかも体の輪郭が分かるほどにスタンドを巻き付かせ、体を揉み解している。
(まずいまずいまずいまずい今ここで出てこられたら見られる……!)
 自分もマッサージを受けてリラックスしていたため体が反応しやすくなっているのだ。見られないように何かで隠さねばと慌てて布団を被るも、それが余計に性欲を高めてしまう。
 ベッドの中で横になって目を閉じていると聞こえる喘ぎ声に似た音。ハイエロファントの感覚を共有してしまえば、暗闇の密室で少女を好きなように触り、その表面を這いずり回っているのだ。
「も、もうちょっとやってあげるから動かないでね」
「うん!」
 触手の端を自分のそそり立ったそれに巻き付かせ、公子の体と同じように表面を移動させる。感覚を共有すればまるで公子の全身でペニスをしごいているような感覚が味わえるのだ。
(もうちょっときわどいところにこすりつけたい……でもそれはさすがにばれるかな)
「花京院、体勢がちょっとキツくなったから出るね」
「あーっと!ちょっと待って!」
 慌てて公子の体を引き留め、持ち上げ、触手をネット状にして支えてやる。
「ど、どうかな」
「うん、でも重たくない?」
「平気さ」
 緑色のハンモックに揺られている公子はご機嫌なようだ。しかもこの状態はつまり、
(お、お尻の感触が……柔らかい)
 公子に男の大事な部分を押し潰されているような、未だかつてやったこともなければ想像したこともなかったプレイはさらに興奮を促進する。
「ん……気持ちいいよ」
(僕もだよ)
「あっ……ちょっとそこ痛いかも」
「じゃあ優しくするね」
「ありがとう」
(ああ……最中の恋人同士みたいじゃないか……で、出そう)
 いよいよ発射しそうになると理性で押さえつけていた欲望が噴出し、大胆な行動をとらせる。触手が、風呂上りでブラジャーをつけていない胸を持ち上げるように動きだすとさすがに公子も不安そうな声をあげる。
「か、きょう……いん?」
「この辺りをほぐしてやると全身の疲労が緩和されるんだよ。呼吸を深くして」
「う、うん」
 ハイエロファントとの感覚共有は胸一点にする。すると公子の柔らかな胸に自分のものを挟み、しごいているのと同じ快感が襲ってくる。
(ああ……出る、出る、出る、出る、公子のおっぱいに……出……い……くっ……!)

 クローゼットの中でぐったりとしている公子を、本体である花京院自身で優しく横抱きにしてベッドに運んでやる。
「気持ちよかった?明日もやってあげるから、また僕と同室になろうね。おやすみ、公子」


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