小説 | ナノ

「承太郎、いつまで電話使ってるの。誰かから電話かかってきたら困るでしょ?」
「あー、ちょっと待ってろ……やかましい!こんな時間にかけてくるヤツなんざいねぇだろうが!」
 電話口から花京院の笑い声が聞こえてくる。
「笑うな」
「いや、だって……ホリィさん、理不尽に怒鳴られてるのに嬉しそうだから」
「女ってのはよーわからんな」
「だからって君に怒鳴られて嬉しい女子ばかりじゃないよ。主人さんにはきちんと謝罪できたかい?」
「そこは突っ込んで聞くな。それより、何であの女と協力しようってな話しになったんだ」
「彼女の意思は相当固いよ。それなら野放しにして危険にさらすより手元に置いて管理した方がいい」
 昼間の紳士的な態度を一枚めくれば、そこには合理主義者の顔があった。置く、管理、まるで公子を物のように例えて話す彼の口調は、冷静さの中に人間らしい感情がない。
「お前が面倒見るってんならそうしろ」
「そうするよ。あとでやっぱり俺が守るぜって言っても遅いよ?」
「あぁ?」

 翌日昼休み、公子と承太郎、花京院の三人は屋上で実験をしていた。アンセムの腕についているスナイパーライフルの照準を、ハイエロが覗き込んでいる。
「おお。見える見える。教室の中までハッキリわかるよ」
「じゃあ、このスコープを見ることが出来るのはスタンドだけで、遠距離型なら本体も視界を共有してみることが出来るってことですね」
「そうみたいだね……承太郎、暇そうだね」
「実際暇だ」
 スタープラチナも試しに覗き込んでみると、見えたと言いたげにこくんと頷きはしたが、承太郎にそれは見えないので意味がない。そのうえスタープラチナ自身も攻撃の間合が手足の届く範囲までなので、遠くを見なければならない場面と言うのはまず訪れない。ということで早々に暇を持て余しているのだ。
「拗ねるなよ。ところで、この集まり、何かしら名前が欲しいよね。名称がないと不便じゃないか」
「うーん……スタンド集会?」
「ネコかよ。普通に捜査隊でいいだろ」
「ロマンがないなぁ、承太郎は」
「じゃあなんだ。前みたいなゲームっぽい名前をつけてくれんのか?花京院」
「前?」
「ああ。エジプトへの道中の仲間たちだよ」
「ちなみに、それは何て名前だったんですか?」
「スターダストクルセイダース」

 結局この三人に名前はつけられることなく、必要なときは捜査隊と呼ぶだろうということになった。
 その捜査隊は早速放課後集まり、調査を開始する。
「そういえば先輩方受験勉強は大丈夫なんですか?」
「僕らがそういうの必要そうに見える?」
「はは……」(うわぁ、ムカツクの一周してやっぱりムカツク)
 全ての被害者の位置を示した地図を広げて見せると、やはり公子たちの住まう公暁区を中心に敵は動いているようだ。
「出没時間は結構まばらだ。深夜の誰もいない時間を狙ったかと思うと、主人さんがやられたように白昼堂々なんてこともある」
「スタンドの射程から位置をある程度絞れないんですか?」
「うーん、難しい質問だね。実はスタンドは解明されていないことも多くあってね」
 花京院は身振り手振りを加えてスタンド初心者の公子に分かりやすく説明をした。
 例えば、ジョセフのハーミットパープル。これの射程はどのように考えるか。茨の届く範囲というのも一つの答えだが、ジョセフは日本からエジプトにいるDIOを念写することもできた。この二カ国の距離は直線で大体9800km以上になる。
「それに、長いもので数百キロの射程を持つスタンド使いもいる。ある程度敵の能力が分かれば何タイプか絞れるとは思うんだが」
「私の足に傷を付けたのは敵の能力じゃないんですか?」
「ああ、あれはスタンド能力を覚醒させる不思議な力を持った金属の破片で付けられた傷だ。犯人のスタンドがそれを持ち、あちこちで人を傷つけている。それがスタンドを目覚めさせるためなのか、それとも小さな傷でも高確率で殺せるからなのかは分からない」
「俺の勘だと前者だな」
 今までだんまりを決め込んでいた承太郎が口を開いた。
「殺害を目的としているなら、死ぬ“かも”しれないなんて不明確な方法は取らない。それにコイツのように手に入れたスタンド能力で復讐に来る可能性だってあるはずだ。敵を作るようなもんだろ」
「じゃあ、能力者を増やすことが目的?何のために?それに、何故この街で」
「その辺りは本人に直接聞くしかねぇ。今は居場所の特定が先決だ」
「ジョースターさんの念写は?」
「情報が少なすぎる。一応日本に向かってはいるが、その間にじじぃへ渡せるような手がかりを少しでも多く見つけたい。が、行動指針がまったくない状態だ。地道にパトロールするしかねぇだろ」
 承太郎の言うパトロールとはすなわち、街中をぶらつくだけだ。つまり、遊びに出かけると言うことである。
「三人で手分けしますか?」
「いや、主人さん。君は財団でも言われていたがメンタルに若干の不安がある。常にツーマンセルで動こう。じゃあ承太郎、昨日の電話で話したとおり、僕が彼女につくよ。いいだろ?」
 不適に笑う花京院を見て、承太郎は帽子のつばを掴んだまま動きを止めた。数秒後、口をつくように一言飛び出す。
「連絡は」
「は?」
「連絡はどうすんだ。遭遇したときに知らせる手段が俺にはねぇぞ。お前らは遠距離型で何かしら射出する能力があるんだ。それを信号拳銃みてぇに扱えばいいだろ」
 携帯電話のないこの時代、確かにばらけて行動するにはそのリスクがあった。
「そうだね。アンセム、君連射は可能かい?」
『ワタシハボルトアクション方式ヨ』(一度撃つごとに手動でレバーを引く動作がある)
「うーん、何発空に向かって撃つかで内容を決めようと思ったんだけど無理そうかい?」
『ソレナラ、マァ』
「よし、じゃあこうしよう。見回りする場所の中心点を決める。そこからお互いに時計回りと反時計回りに回ろう。何か発見したら弾を撃つが、このときの発射数は中心点からの方角によって変えよう」
 大体の場所が分かれば相手を見つけるのは難しくない。公子は障害物を透かして見ることができるので、花京院を障害物と認定しなければすぐに見つけることが出来る。花京院もハイエロの触手で周囲の捜索するのは得意だ。
 こうして二手に分かれたのだが、またしても承太郎と共に行動することに公子は大きなため息をついた。


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