小説 | ナノ

※暴力表現あり

 シンガポールで承太郎が戦っている頃、ジョセフ達は一人のスタンド使いと遭遇していた。街中でハイエロファントを出したところを見ていたらしい。
「その不思議な背後霊を探しています。こんな人物なんですが心当たりありませんか?兄の仇なんです」
 結局その男は誰の知識の中にもおらず、スタンド使いと戦いながら旅をする一行について回って仇を取ると半ば強引にメンバーに加わった。彼女の名は主人公子。ポルナレフと同じく、仇を討つためには命を捨てることも厭わない強い意志があった。

「私の魂も上乗せするわ……」
「兄の仇、ですか。Good!面白くなってきた!」
 そしてとうとう、めぐり合えた。どうやって兄が死んだのかも確認することが出来た。最後に、兄の魂が解放され天へと放たれるところも見届けた。
「終わった……」
「公子、国へ帰るか?飛行機のチケットをじじぃに手配させるが」
「ううん。私もDIOを倒しに行く。人の命を何とも思わない、コイツよりも下衆な存在なら倒さなくちゃ。それに、肝心の敵討ちのイイトコは承太郎に持ってかれたしね。私がDIOのトドメを刺すわ」
「頼もしい限りだな」

 そう言っていた、はずなのに。

「公子は来ません。皆と合流する前に彼女と話をしてきました。兄の仇を取った以上、危険を冒したくないそうです」
 数日振りに再会した花京院から告げられたのは、公子の戦線離脱宣言だった。
「マジかよ!」
「女性を危険に巻き込むわけには行かない。彼女の選択であるならば意思を尊重しよう」
「しかし、挨拶くらいしていってもよかったんじゃないのかのう……」
「……がう」
「花京院」
「何だい承太郎」
「本当だろうな」
「ええ」
「……ならいい。俺たちだけで行くぞ。イギー、案内を頼む」
 一向はイギーの見つけたあの館へと向かった。公子を置いて。

 その間にあった出来事を、花京院は笑顔の裏に隠した。視線を気取られぬサングラスをかけた顔から、そのウソを察知できる者はイギーだけであった。

 合流前日。
 ジョセフたちが宿泊するホテルの名前は財団員から聞いている。建物の近くまで来た花京院はハイエロファントで誰がどの部屋に宿泊しているのかを探り当てる。部屋割りは日によって違うが、いつもシングルの部屋を使っていた公子はこっそり連れ込んだイギーと同室するようになっていた。
 公子の泊まる2704の扉をノックする。不審そうに返事をした公子だったが、ドアスコープを覗くと慌てて扉を開いた。
「花京……!」
「シッ」
 開いた扉から手早く身を滑り込ませると内鍵をかける。
「目大丈夫!?」
「ああ。問題ない。それより少し二人で話がしたいんだ。出来れば、イギーにも聞かれたくない」
 ベッドの上で丸くなっていたイギーが耳をぴくっと動かし、片目だけでこちらを見る。その仕草から「俺ぁ興味ねーぜ」と言っている気がした。
「ちょっと面白い出方するけど、悲鳴をあげないようにね」
 公子を抱きかかえると、花京院はベランダから外へと飛び降りた。ハイエロファントがロープの役目を果たし、建物を次々に移動していく。
「ど、どこ行くの!?」
「ちょっとそこまで」
 たどり着いたのはスラムと呼んでいいような場所である。靴も履かずにこんな場所に連れてこられたのだから公子は花京院の意図を汲み取れず緊張で身を固くした。
 一枚の鉄扉の前まで来ると、ハイエロファントでそれを開ける。中は暗く地下へ階段が伸びているようで、湿っぽい空気が鼻の奥に充満し思わず咳き込んだ。
「ここどこ?」
「僕の用意した隠れ家ってとこかな」
 その言葉通り、生活には困らない程度の雑貨や家具がある。だが地下室のため窓はなく、裸電球の灯すオレンジの光が頼りなく周囲を照らすだけで、長期間ここにいることは精神衛生上よろしくないと思う。
「まあ、ベッドにでも座って」
 言われたとおりベッドの淵に腰かける。
「入院中にも皆の活躍は聞いていたよ。財団員の人が色々教えてくれた。ジョースターさん毎日電話いれてるのって、財団への連絡だったみたいだね。そこで公子、君が当初の目的であったお兄さんの敵討ちを終えたことも聞いたよ。おめでとう」
「ありがとう……?でいいのかな?変な感じだね」
「そこでだ。これ以上君を危険な目に合わせたくない。ここで君は旅を終えるべきだ」
 その提案に返ってくる答えが、花京院には察しがついていた。公子の性格からして、投げ出すような真似も、仲間にだけ死地へ赴かせるようなことも絶対にしない。案の定、承太郎に答えたことと同じことが返ってきた。
「そうか。僕の言うことが聞けないのか。まぁ、そう言うと思ってはいた。だからこんな場所に連れ出してこの話題を切り出したんだ。……お仕置きしてあげよう。君がどれだけ非力で、戦いに向かないのか、僕が教えてあげる」
 二人は同時にスタンドを出す。エメラルドスプラッシュを公子のスタンドがガードするも、至近距離からの狙撃に体が後方へ仰け反る。そこへトドメを刺すように、花京院の膝が公子の腹に入り、小さなうめき声を上げて公子は倒れてしまった。
「言うことを聞け」
 今までに敵にすら発さなかった低音の声と、眼光を失った瞳。殺意ではないがまた別の脅威を全身に帯びる姿に、公子は歯をカチカチと鳴らした。
「今まで他の男連中と親しげにすることには目を瞑った。ポルナレフに必要以上のスキンシップを許すことも、アヴドゥルに特に接近して話をすることも、承太郎と二人で行動することも、互いに仲間意識から来るものだから許した。だが今から行く場所には敵しかいない。君をそこへ行かせる訳には行かない」
「……そんなこと、花京院に指図されるいわれはない!なんでそんな親みたいなことを同い年のあんたに言われなきゃいけないのっ!」
「君が好きだからだよ!どれだけ伝えても冗談と流されたけれど!僕は君を壊したいくらいに好きなんだ!」
 同じ場所にもう一度膝が入る。胃液が逆流する感覚と重く広がる痛みに思うように体が動かない。
「好きだ。DIOを倒したあと、ここにもう一度戻ってくる。それまで君はここを出ることを許さない。二日僕から連絡が入らなければ迎えが来ることになっているから安心して」
 ハイエロファントが公子に手錠をかける。白い指先がいとおしそうに公子の手を撫でて消えた。
「僕は死ぬかもしれない。それほどまでにヤツは強大でおぞましいんだ。死ぬ前に君に思いを伝えられてよかった。叶う事はないだろうから、最後に君を一方的に愛してから行くことにするよ」
 安物のベッドは二人分の体重に大きく軋む。
「帰って来られたら、ゆっくりと君を愛するよ。でも今は時間がないから……」
 精一杯の抵抗にと放たれた蹴りを、花京院はわき腹で止めた。そのまま手と腹で押さえ込むと、足を開き服と下着をハイエロファントで脱がせる。
「時間がないから暴れるな。次に僕に攻撃したら容赦しない」
「あー……そう!」
 今度は反対の足で顔面を狙うも、それは空いた手に塞がれ両足を取られてしまった。左右に開く動きに合わせて公子は恥ずかしいポーズをとらされる。
「容赦しないと言ったはずだ」
 開かれた足はハイエロファントでそのまま固定され、何も身につけていない下半身を花京院に見せ付ける形になった。
「少し慣らそうかと思ったが、不要みたいだからね」
 花京院も下の服と下着を脱ぐと、取り出した赤黒い性器をそのまま押し当てた。乾いているから摩擦でひりひりと痛むのは公子だけで、花京院は痛がる公子の顔を真顔で見つめながら腰を振る。
「本当は口でもしてほしいんだけど、さすがに噛みつかれると痛そうだからね。こっちで全部抜くよ」
「全……部?」
「空っぽになるまでね。何せ目が見えなかったから妄想だけじゃ物足りなくてさ。ここまで溜めておいたものが本物の公子で発散できるなんて嬉しいよ。じゃ、まずは……一回目」
 入れて間もないというのに花京院は身を震わせて動きを止めた。腹の中のものが脈打っているのが分かる。
「はぁっ……このまま……抜かずに二回目しようか。いい具合にローション代わりになって、さっきより気持ちよくなるはずだよ。公子も、よかったら声を上げて良いからね。だってここでどれだけ助けを求めても……」

 絶対に聞こえないから。


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