小説 | ナノ

「ジョジョ最近丸くなったよね」
「体型が?」
「バカね!あのジョジョのどこが弛むのよ!性格よ!」
「あー、そうね。あんまり私たちを怒鳴り散らさないっていうか、完全に存在を無視しているというか」
「その言い方ちょっと傷つく」
 女の声が甲高いのは体の構造がそうなっているのだから仕方がないとは思っていた。しかしなぜこうも喧しいのかはさっぱり理解出来なかった承太郎であったが、きちんと女という生き物を見ればわかってくることがあった。
 まず女の声が高いのは男の気を惹くため。そしてその声を聞かせるためにこうも無駄なおしゃべりをするのだ。声の高低なぞ個人差があって当然だが、自分の周りをうろちょろしている女は全員が全員黄色い声を発する。それは自分の周囲にいる女はほとんどが承太郎の男の部分の気を惹きたいからなのだ。

 承太郎は自分がモテるという自覚があったが、彼女たちが自分に向ける視線はミーハーなものであり、自分が公子に対して抱く気持ちとは遠くかけ離れていると思っていた。似合わない話だが、承太郎の性格がまだ好青年だった頃は女性を愛するという気持ちは清らかな感情なのだという考えがあったし、実際その頃は清い気持ちで公子を見ていた。だからキャーキャーと自分の変わった容姿をはやし立てる女子は自分に愛情を向けているわけではなく、ハーフという希少性や背が高いというモテる男の条件を気に入っているだけなのだと感じていたのだ。
(が、今は違いがよく分かる。俺の外見をキャーキャー言いてぇだけの女もいるが……)
 この考えを口に出すのは相当な自惚れと思われるため誰にも言ったことはないのだが、承太郎は周囲の女子が自分に性的なことを求めている・期待しているのだと自覚していた。そのきっかけが何なのかはよく分からないし、おそらく第二次性徴というやつに伴うものだとは思うのだが、自分が公子へ向ける想いと視線に性的な欲求が混ざっていることで逆に周囲から向けられるものにも同じ匂いを感じていたのだ。
(体を密着させてくるヤツや、上目遣いの女がこうもあざといとは思わなかった。こいつらは俺に抱かれてぇんだ。正直、公子がいなきゃ摘み食いしてもいいんだが……)
 隣を歩く茶色くて長い髪の女を見る。垢抜けた彼女の顔は、隣につれて歩けば周囲の男が羨望のまなざしを送ってくるような整った美人だった。承太郎もハッキリ言って公子よりもこの少女の方が美人だと思う。思うのだが……
(手を出す気になれねぇ)
 女特有の猫なで声でどれだけ名前を呼ばれても、公子が放つ「承太郎」の一言で意識全てを持っていかれてしまう。公子へ向けていた清い情愛はやがて愛情となり、嫉妬を含み、無色透明の水にインクを落としたように黒いもやが心にかかってしまった。
(こうやって俺に媚びてくるのが、公子ならよかった……公子なら、どうやって男に媚を売るんだ?あの他校生にはそれをするのか?)
「あ、ジョジョ、早いよ、待ってー!」
(許すわけねぇだろそんなこと!)
 自分が、人を好きになる気持ちと性的な興味を覚えると、周囲で喧しいだけだと感じていた女も異性として見え始める。だか彼女達の願いは成就されない。情けや遊びでもいいから一度抱いてやればそれでも悦ぶのだろうが……
(俺の溜まりに溜まったモンは、全部公子にくれてやる。俺がどれだけ公子を見ても公子は全く気づかねぇ。つまり、足りねぇんだ。他の女にくれてやるほどの余裕はねぇ)
 承太郎を引き止める女子の声に耳を傾けず、その長い足の歩幅で距離をあけて行った。自宅につくころには一人になっており、門をくぐって靴を脱いでもなお、廊下を足早に通る。
「おかえりなさぁい、承太郎。ママ買い物に出てくるわね」
(好都合だ。家が広いっつってもあのアマいつ部屋を開けるかわかんねぇからな)
 自室に戻ると手早く上着を脱ぎ、鞄を机の上に置く。母が帰ってくるまでに済ませてしまおうと、さっさとズボンも脱いで椅子の上で足を広げた。
 今は溜まったモノを公子に注ぐような関係にはなれていない。だからせめて、妄想の中で汚してしまいたい。あの途中まで一緒に帰った女子生徒の態度を思い出し、それを公子に置き換える。

「ねぇ承太郎、歩くの早いよ」
 そう言って腕にしがみ付く。
「こうすれば離れないでしょ?」
 その体勢になれば当然、腕に柔らかく押し付けるものがある。未だ触れることのないその未知の感触を想像しながら、承太郎はジレンマと精液を発散させた。


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