▼ 魅惑の絵画
「封じられた獣」――ペリュトンについて調べるように頼まれた(脅された)ナギは、おろおろとしながら王城を散策していた。いくらメイド服を着たところで、男なのだからバレる可能性が高い。なるべく目立たないように、そろそろと王城のなかを歩いていた。
なるべく、与えられた部屋から離れたくない。そう思いながら、部屋の近くをうろついていると。ふと廊下の壁にかけられていた絵画が目に付いた。絵画には、羽の生えた鹿のような生物が描かれている。
「不思議な絵……」
ぼんやりと絵を眺めていると、後ろから「おい」と声をかけたれた。ナギがビクッと振り返れば、そこには兵士が立っている。
「貴様、何をしている。仕事にもどれ」
「あっすみません……! あの……この絵って……」
「この絵……?」
少し、頑張って裏声を出してみた。これはさすがにバレるだろうと思っていたがナギだったが、意外とバレないようである。兵士はナギの姿には何も言及しなかった。
「俺もよくわからないが……この城には、似たような絵がいくつか飾ってあるぞ」
「有名な生き物なんですか?」
「知らん。そんな生き物、見たこともない。それより、早く仕事をしろ」
「あ! すみません!」
不思議な生き物。
美しいその生き物は、なぜかナギの心を奪うのだった。
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