触って溶かしてあげましょう。

 芹澤のことばっかりを考えて、昼休みがやってきてしまう。なんだか芹澤に時間を奪われたような気分だ。どこまでもアイツはムカつくなあ、そう思いながら、俺は昼食を買うために購買に向かっていた。

 教室から一階下がって、その階に購買はある。だらだらと廊下を歩いていて……俺は目を瞠った。



「……あ」

「――うわっ」



 目の前から、芹澤が歩いてきたのだ。飲み物を買ってきたのか、手には紙パック。芹澤は俺を見るなりぎょっとして、その持っていた紙パックを落としてしまった。



「なーに、芹澤ちゃん。おばけにでも会いましたか?」

「……っ、鬱陶しい金髪が歩いてきたからめくらみしたんだよ、ウザい」

「はっ」



 あいかわらず口達者なことだ。こいつウゼエなあ〜と思えば、同時に泣かせてやりたいとも思ってしまう。



「昨日のお礼、そのジュースでいいよ」

「は? お礼って……やだよ、これはあげない」

「ふぅん」



 落ちていた紙パックを拾おうとすれば、先に芹澤が拾ってしまう。まあ……昨日はたしかに助けてやったけれど、その後で俺が軽く襲っているから、芹澤からすれば「助けられた」とは思っていないかもしれない。別に感謝しろなんては思ってないからそれについてはイラッとはしないけれど……そうやって可愛くないことを言われると、ますます泣かせたくなってしまう。

 ふいに顔をあげたときに目についたものに、俺は悪いことを思いついてしまった。「資料室」の文字。ほとんど人の立ち入らない、開かずの教室。



「……じゃあ、お礼さ、からだでしてくれていいよ」

「……どういうこと?」

「いやいやそれくらいわかれよな。……こういうことだよ」

「えっ……」



 俺は芹澤の手を掴むと、ガラッと資料室の扉を開ける。さすがの芹澤も何をされるのか察して抵抗し始めたけれど、今更遅い。俺は芹澤を中に連れ込むと、扉を閉めて鍵をかけてやった。




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