君の世界に色が付く。

 ドラッグストアの後は、食材を買うためにスーパーへ。俺も涙も大した料理は作れないから、カレーでもつくるか、ということでその材料を買い込んでいた。



「……どした?」

「いや……あんまりスーパー来ないから」

「えっ、まじ?」



 俺がスマホでレシピを見ながら材料をカゴにいれていれば、涙が興味深げにその様子を覗き込んでくる。そんなに興味深々になるくらいスーパーに来たことがないってどういうことだよって思いながら、俺は涙とポジションを入れ替えた。



「じゃあ、俺が材料言うから涙が選んでカゴにいれてよ」

「……うん、」



 ためしに涙に材料選びを任せてみれば、少し嬉しそうな顔をした。笑ったというわけではないけれど、なんとなく目がきらきらとした。俺がスマホに表示される材料を読み上げてみれば、涙は真剣な顔をして材料の選定をし始める。



「それ、ちょっと痛んでるからこっちのほうがいいんじゃね?」

「そうなの?」

「そうだよ〜」



 そういえば親にワケありといったことを言っていたから……親がスーパーで材料を選んでいるところを見たことがないのかもしれない。涙の材料選びのセンスは壊滅的に悪かった。

 俺が知っている範囲で選び方を教えてやりながら、着々と材料をカゴにいれていく。じゃがいもを選ぶときに、涙が良さげなものを選んで「どう?」ってドヤ顔で聞いてきたときは可愛すぎてキスをしそうになった。



「……!」



 肉を選んでいるときに、隣の方で男女が仲よさげに話しをしている。会話の内容から、彼らは夫婦で、そして夕食は俺らと同じカレーらしい。一緒に材料を買いに来たなんて、仲よさげで羨ましいな……と思うと同時に、ある思いが頭に浮かぶ。



「涙」

「ん?」

「俺たちのやってることって、新婚さんみたいだな」

「へっ」



 そう、俺たちは隣の夫婦のごとく、仲睦まじい夫婦のようだ、と。かあっと顔を赤らめると同時に、また良くないことを考えたのか(どうせ長くは続かないなんて思ったのだろう)切なげな顔をした涙の肩を、ぽんぽんと叩いてやる。



「買いものも、花嫁修業だぞ」

「は、花嫁、って」

「俺思うんだけど、世界で同性婚認められているし、日本だって何年もすれば認められるんじゃないかって思うんだよね。だから、何十年って付き合ってれば俺たちも結婚できたり、しない?」

「け、け、……けっこん、……」

「へへ、涙の薬指予約〜」



 涙の左手の薬指に、俺が指で輪っかをつくってはめてやると、涙はそれはもう幸せそうに目を細めた。しかしこのスーパーの肉売り場というなんともいえない場所ということもあってか、「ばかじゃないの」と手を振り払われてしまう。

 可愛い。とにかく、可愛い。ほんとうに涙と結婚をしたいって考えるほどに。

 再び肉選びを涙は開始していたけれど、終始顔が赤くて、きっと集中できていないのかまた下手くそな選定に戻ってしまっていたから、笑ってしまった。




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