君の世界に色が付く。

 自転車を漕いで、数十分。いつもみたいに二人乗りをして、目的地に向かう。



「ちょっ……なんで、俺が……!」



 まず始めに俺たちが来たのは、ドラッグストアだった。外に出たのは、夜ごはんの準備をするためでもあったが、もうひとつ理由がある。



「いや、だから丁度今切らしててさ、」

「結生が買ってくればいいでしょ!」

「え〜、じゃあ、一緒にレジにいこう?」

「……うん?」



 ゴムが、なかったのだ。セックスの時に使う、アレ。ついでに言えば、涙とするにはたぶんローションも必要になるから、それも買いたかった。ちょっとした意地悪のつもりで「涙がレジに持っていってよ」なんて言ったら怒り出したから、結局一緒にレジにいく羽目になったけれど……この場合、店員にどういった目でみられるか、涙は気づいているのだろうか。というか、ゴムとローションを買うこと自体には何も言ってこないのか。涙も俺とセックスしたいんだな、って思うと、しみじみと嬉しくなる。

 レジの前にきて、カゴを店員の前に出そうとしたところで、涙は気づいたらしい。二人でゴムとローションを買うのは、「二人でエッチします」宣言になる、と。かあっと顔を赤らめたけれど、そのままぷるぷると震えてカゴを突き出した。

 可愛いなあ、なんて本当に思う。あのツンツンしてた涙が、こうしてエッチをするための準備に付き合ってくれるのに、感動した。店員から袋を受け取って、恥ずかしさのあまり俯いて歩いている涙に声をかける。



「これでエッチできるな」



 涙はこく、と頷いた。俺がわしゃわしゃと頭を撫でてやれば、涙は俺のことを見上げてくる。



「……恥ずかしがんなって。恋人ってこういうもんだから」

「……ん」



 人影のない、ドラッグストアの駐輪場。涙がほっぺにちゅっとキスをしてきたから、俺は唇にキスを返してやった。




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