Hell of scenery

*****


『涙、ほら……手は、こっち』

『あっ、……結生、……ん、……』



 結生に、誘導されて、俺は結生の背に腕をまわす。そうすると、結生は、優しく微笑んで俺にキスを、してくれた。優しい、優しい、花びらのような、キス。裸になって、たくさんいやらしい声を出させられて、エッチなことをしているのに……すごく、純粋なことをしていると、そう思う。

 結生が……好き。大好き。ベッドのシーツは、単調な白だった。でも、結生に抱かれていると、そのベッドのシーツは花嫁のベールだったり、真っ白な砂浜だったり、空高くの雲だったり、色んな白にみえる。ああ、こうしていると、世界はこんなに、美しい。



『はぁっ……あ、……ぁんっ……あっ、』



 ベッドの軋みと、シーツの擦れる音、ちゅぷちゅぷという出し入れの音、それから結生の吐息と俺の声。「している」ときのこの音たちが、ものすごく、甘い音に聞こえてきた。



『ゆ、ゆきっ……あっ……あっ……』

『……』

『もっと、……ゆき、……ゆき……』

『あー、うぜえ』

『えっ……?』



 俺が、幸せで、結生の名前を呼んでいると……ぱたり、結生が動きを止めて起き上がる。

 ……俺は、息を呑んだ。その目に、震えた。

 結生の目は、昔俺をいじめていた人たちの目と、同じものになっていた。



『おまえめんどくせえんだよ。おまえが精神異常なのは知ってたけどさぁ、やっぱ無理だわ。我慢の限界』

『ゆ、ゆき、……』

『セックスだっておまえとしててもつまんねえし。体ペラいし……なによりインバイの子じゃん? 無理、汚い』

『……、……えっと、……』



 冷たい言葉。ショックを受けたのかといえば、違うと思う。やっぱり、言われてしまったか、という諦めのような感覚。いつか、こういった日がくることを、知っていたから。

 でも……辛かった。もっと、結生に見つめられたかった。結生に触られたかった。結生に、キスをして欲しかった。結生の、隣にいたかった。



『結生……やだ、そばにいて……お願い、結生……嫌いにならないで……結生……好き、……好きです、……結生……』




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