君の泣き声が聞こえる。

 カラオケを二時間ほどして、ようやく病院にいくか、となった。まあ楽しかったけれど、正直俺は涙のことが気になって気になって仕方なかった。ただ、逢見谷はいい奴だし一緒にいて楽しいから、普通に友達としてまた遊びたいなとは思う。今日はとりあえず涙のところに早く行きたかった。



「先輩ってカラオケよくいくんですか? すごく歌上手なんですね!」

「そうか? 人並みだよ。カラオケはそれなりにいくけど……」

「えー? うまかったですよ! 最後に歌ってくれた曲とかきゅんってしちゃいました!」

「あれネタ曲っしょ。あんなガチガチのラブソングネタ以外で歌わねーから」

「いやあ、藤堂先輩にやたら合っていたっていうか……俺、わりとガチでキました」



 ベタ褒めしてくれる、後輩の鑑。涙もいい後輩持ったなあ、なんて、俺は逢見谷の言葉をそんな風に受け止めていた。

 でも、そんな呑気な考えはすぐに吹っ飛ぶ。人気のない、路地。逢見谷はキョロキョロと周りを確認すると……



「!?」



 俺に、キスをしてきたのだ。



「はっ!? え、何!?」

「奪っちゃった〜!」



 俺は何が起こったのかわからず、ひたすらに混乱していた。逢見谷はにこにことしながら俺から離れていき、悪戯っぽい目つきで見つめてくる。



「おふざけですよ、おふざけ! よくやるでしょ?」

「よくやるの!?」

「へへ、藤堂先輩だったら本気にもなりそうだけど」

「いやいや、本気にならなくていいよ」



 たしかに最近は遊びで友達とキスなんかをする奴はいる。逢見谷ならそれをやりそうだし、違和感はない。ただ男の恋人である涙がいる俺は、たとえ同性であっても遊びでキスはしたくない。

 まあ、逢見谷は怪しい発言はしているけれど、本気にはみえない。それほど気にしなくてもいいかな、と俺は思っていた。




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