君の泣き声が聞こえる。

 昼休みになって、俺は購買まできていた。いつもはお弁当だけれど、今日は持ってきていないから適当に購買で買おうとしていた。

 購買はいつも馬鹿みたいに混んでいる。漫画なんかでよくある、人気パンの争奪戦も行われている。俺はそこまでパンにこだわりはないから、後ろの方で人が落ち着くまで待っていた。



「あれ……もしかして、藤堂先輩ですか?」

「?」



 そんなとき。俺の脇からひょこっと出てきた男子生徒が、俺に声をかけてくる。知らない人だった。華奢で、中性的な顔立ちをしている……俺を先輩と呼ぶということは、一年生。



「あ、俺、逢見谷っていいます。生徒会の会計です。藤堂先輩は芹澤先輩と仲良いから気になっていて」



 逢見谷……そういえば生徒会にそんな子がいたような気がする。涙には悪いけれど俺は生徒会総会とかには一切興味がないから、生徒会のメンバーすらよくわかっていなかった。でも、この逢見谷という子は良い子そうで、好感がもてる。副会長の春原のせいで、生徒会にもつイメージがあまりよくなかったが、この子のおかげで俺のなかの生徒会像は回復していた。



「そうそう、俺、今日、生徒会の代表的な感じで芹澤先輩のお見舞いにいくんですよ。まあ芹澤先輩はすぐに退院できるみたいですけど、心配ですからね! よければ藤堂先輩も一緒に行きません?」

「え? ああ、いいけど」

「よかった! じゃあ、放課後待ち合わせで! あ、藤堂先輩、メッセンジャーのID教えてください!」

「いいよー」



 逢見谷の誘いは別におかしなものではないけれど、ちょっと戸惑ってしまう。はじめましてな先輩後輩が一緒にお見舞いにいくというのはなかなかにハードルが高いような気がする。ただ単に逢見谷のコミュ力が異常に高いのかもしれないが。

 でも、別に嫌というわけでもないから、快諾した。メッセンジャーのIDを交換して、軽く放課後の打ち合わせをすると、逢見谷は去っていってしまった。




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