夏戦 | ナノ

 夏休み

例年と変わらない夏休みが始まった。
変わったのは学校くらい。中学校だからって、小学校の繰り上がりだし別地域の人が少し増えた程度だから大して人も変わらないから、特に何も思わないけど。

名古屋の夏の気候は、じめじめとした蒸し暑さに包まれる。
母さんから聞いた話だと、東京よりは体感的な気温が高いらしい。
愛知県の位置的に仕方ないことだとは思うけど、やっぱりこのじめじめとした暑さは嫌いだ。

僕は今、終業式を終えて帰っている。
友達何人かに呼び止められたけど断った。
帰ったらスポンサーからのメールとかOMCの事とか確認しなくちゃいけないし。
確か昨日、ナマエっていうスポンサーの担当者がメールくれてたはずだから、その続きが来てると思うんだけど来てるかな…

実は、そのナマエってOZの世界じゃ有名人なんだ。 知らない人は多分いない。
年齢公開はしてないから歳は分からないけど、噂では若いっていう話で、毎日のように管理センターで働いてるっていう、所謂スーパーウーマンって奴?
うーん。よく分かんないけど。深くまで知ろうとは思ってないし。ただ、OZに来てない日を見たことがないってくらいのバケモノらしい。とんだ廃人だなぁと思うよ。褒めてる褒めてる。

「ただいま」
「おかえりなさい佳主馬」

ちょうど洗面所から洗濯カゴを手に出て来た母さんに迎えられ、抱えていた洗濯カゴを無理矢理奪ってリビングに向かう。母さんは妊婦だ。父さんや師匠に手伝うように口うるさく言われてる。別にイヤイヤやってることはないけど。

「メールの確認したら干すの手伝いに行くから置いといて」
「あ、ちょっと待って。今年も明日から大おばあちゃんの家に行くからご飯食べた後にでも準備してね」

きた…毎年恒例の長野の行事。
僕もそんなに馬鹿じゃないから学習能力ぐらいある。
毎年毎年の事なんだからギリギリになって準備をするのも面倒だし、僕はもうすでに準備をしていた。あとは夏休みの宿題と、衣類系を詰めるだけになってる。

「それならもう準備してある」
「あら。ふふ、流石お兄ちゃんね」
「っ、何言ってるの、違うし!部屋行ってくる!」

誤解されるのは嫌だから説明を加えておこうかな。
いつもより仕事が早く終わった日があって、そういえばそろそろ長野に行く時期だなって思い出して、直前の準備は面倒だしそれなら今のうちにやっとこうって準備しただけであって!!調子狂うからやめてほしい。ていうか俺、妹とかいらないし、お兄ちゃんとか言われるの嫌なんだけど?

冬休みに長野に行ったときも、ほとんどの親戚にからかわれたし、みんなして僕をいじらないでよ!僕は遊び道具じゃない!

でも、今年の夏は、ちょっと違う夏になりそう。

いや、そんな訳ないか。僕超能力者とかじゃないし。
超能力者とかだったら今頃能力使いこなしてるから。あのいじめっ子だってどうにかしただろうし。
じゃなくて、早くメール確認しないと。

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