夏戦 | ナノ

 お説教

正座つらい。足ピリピリしてる。つつかれたら息できない気がするから触られないことを祈ろう。
現在、私の部屋にて佳主馬くんと向き合う形で正座させられています。かくいう佳主馬くんは崩してますけど。ずるいでしょ。いやいやだってね?ばれない程度にゆっくり崩していったら睨んでくるんだもん…
片目だけで睨まれると意外と怖いものだよ。せめて両目で睨んで…それもいやだわ。

「で、全部吐いてもらうけどさっき何したの?何でアイツ倒さなかったの?何で自分のこと隠してたの?」
「聞きすぎじゃ…いえいえ何でもないですのでそのゴミを見るかよような目をやめてくださいドMじゃないんで嬉しくないです」
「そんな被害妄想はいいからグズグズしてないで早く言って。僕も早く戻りたいんだから」
「じゃあ戻ればい…すいませんごめんなさい言いますからもう少し目を和らげてくれると嬉しいかな」

しかし私の発言など耳にもないのか、いいから話せと言わんばかりに睨む目は和らがない。部屋の温度が更に冷える。これ以上冷えたら寒さで死んでしまう。そろそろ自分の身が大変なことになりそうだ。

「順番に言うから何も言わないでくれると嬉しいんだけど…言ってもせめて一言程度に私の心を抉らない程度にしてね!?」
「善処する」

あっ嘘だ。

「まず何をしてたのか、だけど。さっきはあれ専用にウイルスを作ってたの。戦っても勝てないことは分かってたし、少しでも向こうの情報があった方がいいと思って。調べ物っていうのはそのことです。効くかどうかはぶっちゃけ自信ないんだけどね。これについての質問はありますか」

まとめて聞かれても困るため一つの回答ごとに質問をするのが得策だと考えた。間違っていなかったみたいで佳主馬くんの目も若干普段の目に戻っている気がする。

「それでウイルスの効果はいつ出るの。確認はいつする気」
「短時間だったから高速処理はできない。効き目は動きが止まったのを見た感じそこそこ。早くても30分で解析できるはず」

納得したのか次を促された。だんだん何をしているのかわからなくなってきたよ。

「倒さなかった理由はいいから3番目の質問の答え」
「あっハイ。別に佳主馬くんだったからとかじゃなくて、単純にバラした時のリスクを減らすためです。サブ垢もあったけど、わざわざ逃げるために作ったわけじゃないし。まぁ、あの対応はやらかしたなって思ったけど」
「最初からそう言えばよかったのに長引かせすぎ」
「ごめんなさい…」

何故に佳主馬くんに私は説教させられてるのか…あれ?外の様子がおかしい。

「だいたい昨日の夜だって…」
「ねぇ、なんだか居間のあたり騒がしくない?いっぱい声聞こえてくる…私ちょっと行ってくる!」

外で自転車のブレーキ音とか机の食器がガシャンってなる音がしたから絶対何かあった。これは行かないと駄目な感じだ。本能がそう告げる。

それにこんな長々説教のような何かを受ける必要はない!
だから佳主馬くんの気が緩んだ隙を見て、私は痺れる足に耐えながらこの部屋を飛び出した。

「ちょっと、まだ僕話してるんだけど!」

そう叫ぶ佳主馬くんの声を後ろに聞きながら、歩を進める。
よからぬことが起こってるかもしれないのに、動かずにはいられない。

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