夏戦 | ナノ

 馬鹿にしないでよね

偽ケンジくんはみるみるうちに進化して、見たこともない不思議なアバターへと進化した。
例えるなら仏教に出てきそう。女子がキャーキャー言い出しそうな筋肉。無駄にイケメン感出さないでいいのに。

そばでは2人と追い出したはずのやんちゃ組が呆然としている。
やんちゃ組は無言で完全に外へ追い出した。

「何してるの佳主馬くん。早く勝負しないと大変なことになっちゃうよ」
「…なまえに言われたくない」

そう言うとタンッと攻撃を仕掛ける。間違いない、さっきよりレベルアップしてる。つまり佳主馬くんが一歩…いやそれどころじゃない、押されてる。

「はっ、はやい…!」

んー、私ログインしたはいいものの、いつ出ればいいのかな。
あるか分からないけど佳主馬くんがK.Oしてからか、やられそうなときにしよう。救世主!なんちゃって。

『K.O!』

えーっと、前者、でした。

「カズマくん!!……あーっ!!」

えっちょっと今のなに。
ケンジくんが大声あげて指差して、指差した先をみんなが振り向いてその一瞬の隙を見てケンジくんがキングカズマを回収していった…んだよね?
指差して普通このアバターも振り向くか!?
こんな顔して騙されやすいタイプ?
巻き起こる数々の出来事に感情がいくつあっても足りなさそうだ。もう、なんか、色々と…

諦めて出るしかなさそうだ。

「仕方ないなぁ」
「なっ、なにが仕方ないの…?」
「くそっ…」
「久しぶりに遊ぼうかなって思ってさ、健二さん?いや…ケンジくん?」
「ケンジ、くん??えっと…?」
「…鈍感」

私がキーを入力した途端、画面内にたくさんのチャットバルーンが浮かんだ。

『ナマエだ!!』
『あれ?休暇中じゃなかったっけ?』
『助けに来てくれたんじゃない?』
『えー、まさかー』

おいそこのアバター、まさかってなんだ…!
休暇中だから怠惰を貪ってるとでも思ってるのか!そんなこと言うなら助けないよ?!いや助けますけど助けないと居場所ないし。

「………」

後ろの健二さんの顔を見れば真っ青。
佳主馬くんは「やっぱりね」みたいな顔してる。腹立つ!

「はぁ…全く、みんなしてこういう反応するのやめてよね。一応休暇中なのに」
「お兄さん顔青いし固まってるし…役に立たないね」

この子役に立たないって言った怖い。ケンジくんは役に立つよ!

「で、どうする気?こいつに勝てるっていう勝算は?」
「残念だけど100%負ける。けど、私は別に勝つために来たわけじゃないよ。ちょっと調べ物」
「…あっそ」
「でも絶対、逃がさない」

佳主馬くんも、負けて悔しいみたいだし。思い切り握り締められた手を見やる。

私がなんとかしないと。頑張ります!

prev / next