夏戦 | ナノ

 衝撃の事実

着いた場所は納戸。あぁ、パソコンといえば例の少年がいたっけ。この二人面識あったんだ。

「いた!」
「これお兄さんがやったの?」

情報が早いのか彼はさっきの特番を見ていた。
いや、情報が早いとかじゃなくてOZ関連だもの。それどころじゃないよね。OZが世界にもたらす影響は果てしなく大きいんだから。にしても早起きだね。

「ちっ、違うんだ!とにかくそれ貸して!」
「言い方が駄目。もっと取引先に言うみたいに言って」

取引先?!見た目通りというか少年厳しいね?!

「も、申し訳ありませんがパソコンを貸してください…」

ちゃんと取引先に言う"みたい"に返す健二さんも凄いと思うよ。言い方少し違うかななんて上から目線で言えるわけない。

とりあえず許可は降りたらしく、さっと彼は横にずれた。
というかなんだろ…昨日は暗かったのと、画面しか気にしてなくて気付かなかったけどこのパソコンどこかで見た気が…

「ありがとう!いいパソコンだね」
「スポンサーからの賞品」

そうだ、私キングカズマにスポンサーからとして送った賞品だった。でもどうしてこの人がこれを持ってるの?まさか、いや、そんなわけ。ケンジくんに続いてこの人が?ないない。あってたまるか。

「どうして、どうしてログインできないんだ!」
「何そんな焦ってんの」
「アカウント乗っ取られたみたいなんだ…」
「なんだ、なりすましか」
「へっ、で、でも僕パスワード抜かれるようなことしてないし。どうしよう…」
「やったからこうなったの!」
「ええ?!一体何をしたっていうんだ…」
「とりあえず、サポートセンターに連絡」
「それだ!」

アカウントが認証されてないんだ、かかるわけないのに。

「あ、もしも「あなたのOZアカウントを認証できないため携帯電話回線に接続できません」かっ、かからないよ!」
「落ち着きなよ」
「アカウント乗っ取られたのは健二さんだけじゃないから。落ち着いて、大丈夫だよ」

その時、後ろから足音が聞こえてきた。
ちらりと覗くと聖美さんがコードレスフォンを持ってこちらへ歩いてくる。

「小磯くん」
「うわぁっ」
「だから落ち着きなって」
「東京から。佐久間さんっていう人」

佐久間…サクマ…?
健二さんがケンジくんなら、佐久間さんはサクマくんだよね…俺ら同じ学校で同じ部活なんですって言ってたし。
もうやだ何この展開…
私がナマエだとバレるのも早いかなと頭を抱える。
目の前の二人は私の存在など見えていないらしく見事空気と化した。いいのよいいのよ、いつも空気だから。慣れっこだよ。

「…君、もしかして…」
「黙って、集中できない」

少し落ち込んだ後自分で立ち上がって状況を確認する。素早いキーボードの音が耳につく。あれ、この状況はなに。
一体私が空気のあいだに何があったの!?

「け、健二さん」
「へっ、なまえちゃん?」

震える声で健二さんの名を呼んだために驚いた顔で健二さんが振り向く。

「この数秒で、一体何があったの」
「実は佳主馬くんがキングカズマでね」
「なんかよく分からない単語が聞こえてきました、なんですか?佳主馬くんがキングカズマって。どちら様ですか?キングカズマ?え?」

嫌でも漢字の読みが分かった。カズマって読むんだあれ。スポンサーの商品を彼が持ってるってことはあってたまらない展開が見事成立したってこと。信じたくない。ケンジくんとサクマくんとキングカズマって。世界って狭い!嬉しくない!

「なまえちゃん!現実に戻ってきて!」

「雑魚だよ、こんなの」
「わぁっ!!凄い!!」

私と健二くんがわいわいやってる最中も彼は必死に?頑張ってたらしく、偽ケンジくんを捕まえた。

雑魚だよについてはノーコメント。触れたら負け。
と、その時。

「愉快犯発見しました!」
「逮捕だ!」
「「逮捕だー!」」
「わぁっ!」
「っ!?あぁ!」

悲痛な叫びが響く。やんちゃな少年2人により佳主馬くんは気を取られ、わずかにキーボードを押す手が離れた。
力が緩まった程度だったけど、それでもボタンが押せていなかったのは事実である。画面の中のキングカズマが押さえ込んでいた偽ケンジくんが野次馬の中に走り込んでいき、パクリとアバターを飲み込む光景を目を見開いて見ている佳主馬と健二くん。

驚かなかったわけじゃない。でもふと浮かんだのは私がすべき行動だった。私は佳主馬くんの隣に移動し、失礼ながらこっそり座らせてもらう。

ついでにやんちゃ組は外に追い出した。邪魔されたらたまらない。

パソコンは部屋に置いてきてしまった。
ならば携帯を使えばいい。
何をしようかって?そんなの決まってるじゃない!

OZ!

私にとって、大事なところなんだ。荒らされてたまるか。

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