夏戦 | ナノ

 世界の大混乱

眠い。素晴らしく眠い。意識が朦朧とする。でもやらなきゃ。一向に行方を追えない犯人探しとパスワードの変更を行っているが、どうやらすぐに新しいパスワードを解析して変更しているらしい。どこだ、どこにいる!半分寝ている頭を起こすため頬を両手で叩くが、隣の部屋が騒がしい。子供達が騒ぐ声と健二さんの慌てた声で意識が完全に覚醒する。知らぬ間に太陽が昇っていた。
最後まで足掻いて追い詰めようと思うがここは一旦手を引いて、今はOZによってどこか異常がないか順を追って探しに行こう!
まずは声が遠ざかった方から考えて居間に向かう。
着いてすぐに見つけたくなかった異常を見つけた。テレビから流れる朝のニュースの音声が「OZは大混乱に陥っています」と告げたのだ。
すぐそばで健二さんと真悟と祐平が騒いでテレビより騒ぎ声が耳につく。もううるさい!!

「ちょっと!3人とも黙って!」

ここに来てから一度も大声を出さなかった私が、突然大声を出したからか3人とも動きを止め口をポカンと開けて、黙った。ずっとそうしていて。
管理棟のパスを盗んで乗っ取りをしたのは把握できているが、目的が分からない。犯人はなにがしたい?

そして映ったのは、見たことのあるある顔。ただしモザイクがかかっている。

「これって…まさか…」

後ろに突っ立っている人に怒りの目を向けると「僕は違うんだ!」と必死に訴える健二さん。
もう一度テレビ画面を見て本人と比較してもどう見てもこれは健二さん。
昨日聞こえた気がした音は幻聴じゃなかったのか。

「健二さん、夜中に届いたメールあるよね。それに返信した?」
「うっ…はい…」
「返信したメール見せて」

状況が読めないとおどおどした彼が差し出した携帯を、昨日のOZでの行動と同じようにひったくって送信メールを見る。
あ、最後の一文字違うじゃん。
じゃあ犯人は健二さんじゃない…となると昨日の人たちとかその他の回答者か。
でも可笑しい。
だってテレビの向こうで動いているのはケンジくんなんだもん…え、ケンジくん!?健二?ケンジ?
うわ、まさかの展開きちゃった感じですか…同一人物的な感じですか…

「えっと、あのー、健二、さん。OZにログインできないんじゃないかな、多分…」
「そ、そんなぁ!?」

慌てて私から携帯を受け取って、超高速でパスとIDを入力してるけど出ないらしい。
OZは3回だけパスワードとIDが入力できるシステムで、3回失敗するとあまりよろしくないことになる。
ただ、それは1つの機器につきってことで携帯で3回失敗してもパソコンからやれば3回できる仕組みになっている。私のパソコンを貸してあげないこともないけど…どうしようか。
声をかけようか迷っていると何かを思い出したかのように居間を飛び出す。
まだどこに何の部屋があるか分からないから行き先を予想することができない。
健二さんがケンジくんと分かって、このまま見過ごすことはできなくなった。例えケンジくんじゃなくても、この大きな問題に巻き込まれた人が周りにいると分かった以上彼に着いていって助けるしかない。私も後ろを追いかけることにした。

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