夏戦 | ナノ

 -Who are you?

(あなたはだれ?)

*********

「…、…、お……!!」

ん……なんだろ、誰かに呼ばれてる気が。

「なまえ、なまえってば、そろそろ起きなさい!!」
「うわあん起きるからその手に持ってるパソコン返してください!!」

一言でまとめよう。寝 て ま し た。みんなおはよういい目覚めだね。
ついでに言うとその間パソコンが人質になってました。
ここは笑うところじゃない。

ん?ちょっと待つんだ、みょうじなまえ。

Q・パソコンをログアウトしてから寝ましたか?さらに試合結果は覚えていますか?

背中を嫌な汗が伝う。
もしかして…

「あ、あああ、あ、ああああ、あ」

A・していない。寝落ちした。

寝てる間に充電終わった!?
そ、そんな…ぐす…向こうで充電させてもらおう。

「もう、馬鹿だなぁ。ほらパソコンしまって。もうすぐで着くから」

馬鹿って言った、ねぇ馬鹿って言ったの!?(前半しか聞こえていない)
娘に馬鹿だって!?もう知らないんだから、ほんと知らないんだから!
朝の出来事といい今といい!
ケンジくん、サクマくん、私の愚痴は長くなりそうだから覚悟して!
とか思いつつ、キャリーバックを用意する私はきっと負け組だ。100%確実に。お母さん許すまじ。

改札出てからも道のりは長いらしく、上田駅の二階にある、うえだ でんてつ べっしょ線?っていうのに乗って
豊里局前停留所で じょうでんバスに乗り換え、陣内前っていう停留所で降りて徒歩…
駄目だ暗号にしか聞こえない。
しかも何?この炎天下の中徒歩とか…
必要最低限外に出ない私には死亡フラグでしかない。

「そんなところで嫌そうな顔しないで、さっさと移動するよー」
「私は初めて来る場所なんだから、さっさととかいう単語使わないでよ」
「は?何言ってるの?なまえは10年ぶりに行く場所なのに」
「え?」
「3歳のとき一度来てる、一度だけだけど」
「でも当時3歳でしょ?記憶があるとでも!」
「あんたの事だからないと思う」

やっぱりこの人酷い。一旦DNA鑑定してもらおうか。
是非この方が実母か知りたいね。

「あれ、もしかして美南おばさん…?」

そこには黒髪で高校生くらいの、私とは到底違う雰囲気を纏った可愛らしい女の人と、さっき斜め前で溜息ばっかついて、しまいには伝染させてきた女の人とは反対に頼りなさそう男の人がいて、しかも何故かお母さんの名前知ってて…
あなた方は一体どちら様でしょうか。

「あら、夏希ちゃん?」
「わ!やっぱり美南おばさんだ!」

2人は猛烈に抱擁しはじめた。

(もう一度問おう、あなたはだれ?)

prev / next