Live for the night | ナノ








▼ 後日来店時のセクハラ 中編1

「そうだな。弓月の言う通りだ」

ニヤリと妖しく微笑む弓月に、うんうんと大きく頷く政宗。

「ほら、早苗!今日は王様ゲームやるぞ」

「…古くない?」

突然何を言われるかと思いきや、そんな提案をされて驚く。

「いいからくじを引け。
約束通り、光長に会わせてやっただろう?」

絶対的な命令口調と裏腹に弓月が異常に爽やかな微笑みを向けてくる。

…それを言われると辛い。
明らかに何か裏があるけれど、くじを引かざるを得ない。


「皆で一斉に引くぞ」

「「「せーの!」」」

筒の中から割り箸のくじを引くと、政宗と弓月には赤い印が付いており、私のものには1番と記載されている。


「「王様だ!!」」

なんと、政宗と弓月が王様というまさかの展開!!

開いた口が塞がらない。

なんで、王様が二人もいるんだ!!
てか、番号なの私だけじゃん!!

この二人にはめられたとしか思えない。

「ちょっ!!こんなのインチキでしょ!?おかしいよ!!」

「大丈夫だ!インチキじゃない!ちゃんと同時に引いてたじゃないか」

どや顔で私に"王様1"と書かれたくじを見せつけてくる政宗。
すると、弓月は”王様2”って事か。
王様ゲームの概念が革命を迎えた瞬間だった。

…でも、政宗の言うことはあながち間違ってもない。
なぜなら、私はくじとかじゃんけんとかにめっぽう運がないからだ。
学生時代から、よくくじで外れて大変な委員会に所属してしまったりしていたのは確かだ。

でも、それを差し引いたとしても、王様二人って前提がおかしいのは絶対だと思う。

「君、このVIPルームの使用料、光長の指名料とさっきのお酒でどれだけかかるかわかってるのか?」

「うっ…!」

「俺がオーナーだからこの部屋を特別に開放してやってるだけで、本来なら、客が全ての費用を出すんだぞ?」

ジト目で私に現実を突き付ける政宗に、すかさず弓月が追い討ちをかけてきた。
そんな事言われたら、もはやこの王様ゲームをやりきるしか選択肢は残されていない。

「…わかった。参加するわよ」

「イイ子だ」

私の言葉に満足げに頷く弓月。
ドラゴンフルーツを食べていたその口許が妖しく紅く染まっており、まるで悪魔の様だった。

「じゃあ、俺からだな!」

政宗が例のあの悪戯を考えている時の笑顔を見せる。キラキラ度がいつもの2割増しだった。
…今までのすべての要素から嫌な予感しかしない。

「いや、それはあくまで番号だけだ。命令は別に決まってるだろ」

ところが、弓月が突然政宗を制止した。

「はぁ!?王様1ってあるだろ!?」

「だから何だ?ここは公平にじゃんけんだ」

順番を巡って口論を始めたバカ二人。
チャンスとばかりに逃げようとしたけれど、「甘い」と弓月に捕まえられて背後から抱きすくめられてしまう。
そのまま、奴等は10回くらいじゃんけんを繰り返した。


「1番が王様2の肩を揉む」

何回ものあいこの先に勝利を掴んだ弓月が、そんな命令を下してくるりと私の方に背中を向けてきた。
政宗は面白くなさそうに頬を膨らませながら、今度は焼酎グラスに口をつけて私達を見ている。

「そこ、もう少し強く押してくれ」

肩を揉んでいると、力が弱いとかもっと右だとか色々細かく指示を出してきてめんどい。
しかも、意外と本当に肩が凝っている。
「それなら、ちゃんとしたマッサージに行けよ!」って心のなかで毒づいていたのは内緒の話。

「次こそ俺だな。1番が王様1にフルーツを食べさせる!」

弓月の指令をクリアしたと思ったら、すかさず政宗が私のすぐ隣まで距離を詰めて座ってフルーツが乗った皿を私の前に差し出す。

「えっ…」

「早く食べさせてくれよ」

困惑している私にお構いなしに、まるでエサを待つ雛鳥の様に私に向かって口を開けてくるから、無言のままフォークにオレンジをぶっ刺して口に入れてやった。
奴はそれをもぐもぐして飲み込んだ後、眉間に皺をよせて不機嫌そうに私を見てくる。

「何よ…」

「違うだろ!今のは!ちゃんと"はいあーん"って優しく食べさせてくれよ!」

大きな声で、まるで政権演説の様に大袈裟に訴えてくるのはめんどくささの極み。

「はいはい、わかった。もう一回やるから」

こういう時は抵抗するよりも、適当に言われた通りするのが一番被害が少なくて済むと今までの付き合いからわかっている。

「政宗、あーんして?」

とりあえず、無理矢理作った笑顔で顔をひきつらせながら、フォークに刺したパイナップルを口許へ運ぶ。
すると、奴は嬉しそうに食べていた。

「まぁ、今日はこれで合格にしてやるけど、次からはもう少し笑顔を自然にしてくれよな」

ところが、上から目線で採点されてしまった。
何なの!?これは試験なの!?
むしろ、次なんてないだろ!!

とりあえず、二人のお題をちゃんとクリアした私。
なんだ、普通の王様ゲームってか、ただの雑用係じゃん!

てか、もうこれで終わりでよくない?

なんて思っていた時だった。


「1番が王様2に膝枕しろ」

弓月から新たな命令が下る。

「えっ!?膝枕!?」

完全にセクハラの気配を察知。

「そうだ。早くしてくれ。太ももが待ち遠しい」

物欲しげに私の足に視線を送る弓月。
弱味を握られている私は、言う通りにせざるを得ない。
完全に落とし穴があるとわかっているのに、
そこに向かって歩いていって落ちるリアクションを取らなきゃならないお笑い芸人みたいな心境だ。

「…どうぞ」

満面の笑みを浮かべていそいそと私の太ももに頭を乗せる弓月。

「柔らかくて気持ちいいな」

頬を太ももに擦り寄せてくる。
ワンピースだからスカートの下はストッキングのみ。
さらさらとした艶のある滑らかな髪の毛が肌を撫で、肌の温かさが伝わってくる。
まるで猫の様に目を細めて寝転がる姿は可愛くて、ただ、見とれてしまう。

そんな時だった

ぎゅっーー

いきなり胸を鷲掴みにされる。

「ちょっ!?何すんのよ!」

案の定、奴は急に胸を揉んできた。
思った通りの展開に先ほどまでのまったりとした時間は一気に殺伐としたものに変わる。

「すまんすまん。ちょうど目につくとこにあったからな。ついつい…」

「”ついつい”じゃないでしょ!?もう!」

へらへらと笑い全く反省の色を見せないこの男。
おまけに、離れたとこで政宗はうらやましそうに指をくわえてこちらを見ている。

…段々と雲行きが怪しくなってくる。
嫌な予感しかなかった。

「ほら、弓月、もう気が済んだでしょ?」

「う〜ん。本当は毎晩こうしてお前に膝枕してほしいところだが仕方ない」

奴の口説き文句を聞き流し、無理矢理起こして離れさせる。
変な事される前にそろそろ帰ろうかなぁと思い始めてきた。

「君、帰りたいとか考えてただろう?今」

代わりに近づいてきた政宗が私の顔を覗き込んでくる。

「な、何で分かるのよ」

毎回、このホストには度肝を抜かされる事ばかりだ。
エスパーなんじゃないかと思う位恐ろしい。

「そりゃ、君の事が好きだからさ。でも、まだこのゲームは終わってないからな、それは無理な相談だ」

さらっとすごい発言をしつつ、私の行動を制する。

「もういいでしょ?ちゃんと命令聞いたじゃない」

「まだダメだ!これからが本番なんだよ!」

政宗が私の両肩をつかんで熱く語る。

「そうだ。ゲームの終わりは俺達が決めるからな。お前に拒否権はないぞ」

オーナー様にそんな事を言われてしまっては逆らえない。
仕方なく、次の命令を待った。


「1番が王様1のバナナを食べる」

「…は?」

意味がわからなくて、もう一度聞き直す。

「だから、意味わかるだろ?遊びは終わりだ」

カッコつけながら、自分の股間を指さす政宗。

下ネタかよ…!!

気付いた瞬間に襲われる脱力感。

頭痛くなってきた…


「何をもたついているんだ?王様の命令は絶対だろう?早く政宗の言う通りにしろ。ほら」

突然、弓月が私を政宗の方へと突き飛ばし、バランスを崩して奴の元へ崩れ落ちてしまう。
ちょうど、座っているお腹の部分に倒れこみ、奴はそんな私を抱き起こした。
背後からは憎らしい弓月の忍び笑いが聞こえる。

「よし!捕まえた」

右手で私の腰を抱いたまま、嬉しそうに歯を見せる政宗は器用に左手でズボンのチャックを下ろして、自分自身を取り出した。
真っ白なスーツと彼を覆う肌の中で赤黒く主張しているそれは鮮烈で、思わず視線を注いでしまう。
すると、当の本人は私の反応に嬉しそうに目を細めていた。


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