蘭拓
2013/07/19 23:56




毎日考えているから、忘れる事は無い。

たとえまたどんなに脅威的な力が襲ってきたとしても、もう絶対に忘れてやるもんかと心に誓ったんだ。
いっそ忘れてしまったほうが楽になれると思う時も、無いわけじゃないけど。それでも俺は、どうしても神童を想ってしまうから。お前の事を、想うから。


「神童…今頃何してるかな…」


電話かメール、どっちが良いだろ。
…いや、ダメだ。神童の邪魔になるような事はしたくないし、会いたいなんて言ったらアイツは絶対気にするだろうから。我慢してるのは、俺も神童も同じだもんな。
そう考え直し、俺は充電器に繋いだままの携帯から目を逸らす。 


想う、忘れない、忘れられない。
目を閉じても、閉じなくても、いつだって俺の頭の中は神童のことでいっぱいで。ああほら、現に目の前の課題だって真っ白なままだ。空白は、諦めてしまった問いの答えじゃなくて。まるで俺の心を映している様で。何となく、黒く塗りつぶしてやりたくなるけれど、シャーペンは机の上に転がったままで、俺は手を伸ばす気にはなれなくて。


「前に会ったのいつだっけ…」


毎日考えているから、忘れる事はない。けれど。
そう遠くはなかったあの日々が色褪せていくのを、俺はどうする事も出来なくて。

最後に手を繋いだのはいつだった?
神童を抱き締めたのは、キスをしたのは、ピアノを聴いて紅茶を飲んで、他愛も無い話をしながら2人きりで過ごしたのはもうどのくらい前だった?

「きりの、」なんて、普段他の奴らの前では見せない微笑みで、いつもと違う甘ったるい声で俺の名前を呼んでくれたのは、きっと昨日も夢の中だけだった。
神童に会いたくて会いたくて仕方ないって気持ちを、俺は毎晩夢の中で慰めてるだけ。

馬鹿だよな、ほんと。今度神童が旅立ったのは過去でも未来でもなくて、同じ時間枠の、ほんの少しだけ遠い場所なのに。会いにいける距離なのに、俺は寂しくて仕方ないんだ。


泣き虫なのに強がりで、優しくて頑固で、凛々しいのに儚い、何でもひとりで抱え込んでしまう神童が、心配だ。同じ場所に行けなかったのに、選ばれなかったのに。それでも、お前のそばでお前を支えてお前と一緒に戦いたいから。やっぱり諦めたくないから。俺は俺の精一杯で、絶対に追いかけて隣に立ってお前が好きだってまた何度でも伝えるんだ。だから、


「俺のこと忘れて一人で泣くなよ、拓人…」


これはずっと待ってた意地っ張りで頑張り屋のアイツから「霧野、今何してる…?」って電話がかかって来る5分前の話。


(今夜もまた)
(星が流れて)
(優しい夢だけ見せてくれる)


*************


冒頭しか考えてなくて暴走した結果です(笑)
相変わらずごめんなさい^^;
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