今日の体育はハードル走。 みんな、ひょいひょいとハードルを跳び越えていく中、ちょっとしたトラブルが。 踏み込みを誤ったまま挑戦した結果、ガシャーンとハードルごと盛大に倒してコケた生徒が1人。
「わ?!大丈夫?ヒロ。」
それは比路のことで、その一部始終を見ていた司が駆け寄り、仲のいいクラスメイトも続いてやって来る。
「比路くん、大丈夫ですか?」
「また派手に転んだな峰岸。」
「・・・・・・・・・。」
しかしコケた当の本人は打ち所が悪かったようで、何を訊かれても何を言われても、何も答えないまま。 股間を手で抑えながら疼くまり、真っ赤な顔して涙目で呼吸を何とか繰り返す。 そんな比路に何があったかというと、
「あははー!ナイス珍プレイだったねヒロ。」
「・・・るさいよ。」
全てを見ていた司のその一言で、経験ある男子は全員ゾッと顔を青ざめてお察し。 さほど話したことがないクラスメイトにまで「大丈夫か?」と心配される始末で、中には腰まで摩って間際らしてくれる生徒もいた。
「ヒロ。とりあえず歩けるようになったら保健室行こうよ。チロ先生に手当てしてもらお?俺も付き添うからさ。」
「うん・・・。」
そのおかげでちょっと落ち着けられたけど、そこ以外にも擦り傷もあるので、体育の先生の指示の元で一旦授業から離脱。司に付き添ってもらいながら、ゆっくりゆっくり。比路のペースでゆっくりと保健室へと向かった。
「失礼します。チロ先生、急患でーすって・・・あれ?」
しかし保健室には、いつもいるはずのチロ先生が不在。 校舎内の見回りに行ってしまっているのか。元々、静かな保健室なのに人の気がないと、もっと静かな部屋となっていた。
「チロ先生・・・、いないの?」
「みたいだね。よいっしょっと。ヒロはここで座って、ちょっと待ってて。」
「ん?うん。」
とりあえず怪我人の比路は、診察用の丸椅子に着席。 司は「いないなら仕方ないよね」と、診察台の上に置いてあった救急箱を開けてガサゴソガサゴソ。傷口手当て用の消毒等を勝手に取り出す。
「司。それって勝手に使っていいの?」
「怪我人を手当てする為だから別にいいでしょ?チロ先生が途中で来ても問題ないって。むしろ『私の代わりに峰岸くんを手当てしてくれて、ありがとうございます』ーって言ってくれるって。」
そしてチロ先生が不在につき、代打俺!と言わんばかり。司がチロ先生に代わって比路を手当てすることに。
「うー・・・。司に消毒されるって何か不安。」
「はいはい。うーうー言ってないで、さっさと傷口見せる。ほーら、沁みるよう沁みるよ。ポンポンに消毒液たっぷり染み込ませたから傷口に沁みるよ〜。」
「痛・・・っ!も、もうヤダ!司に手当てされるのヤダ!こんな傷ぐらい舐めて治すからもういいよ!最悪、絆創膏貼ってくれるだけでいいし。」
「なーに言ってんの。ちゃんと消毒しないと傷口が化膿しちゃうからダメだって。」
「・・・ここぞとばかりに、これで僕に仕返してるでしょ?」
「キノセイキノセイ。文句言ってないで、ちょっとは我慢しろって。ヒロの為に消毒してやってんだから。」
何だかんだ言い合いながら、消毒終わったら絆創膏をペタリ。ひとつずつひとつずつ手当てされた箇所が増えていき、最後の傷口にも絆創膏貼られればこれにて終了。 やっと消毒による痛みから解放されたことにホッと息を吐いた比路。
「司、ありがとう。改めて絆創膏の数を数えると、結構凄いね。それじゃあチロ先生に書き置き残して、授業に戻ろうっか。」
「は?何言ってんの?まだ終わってないのに、勝手に終わらせないでくれない?」
「え。」
けれど司による手当ては、まだこれにて終了ではなかった。
「もう1箇所あるでしょ?ぶつけた場・所。そこもちゃんと見せて。」
「え!?」
先ほど疼くまって喋れなくなるほど強打したあの場所を。 そこもちゃんと手当てするから見せろと命じてくる。 しかし比路もそれは簡単に頷くわけにはいかなかった。 =体操服のズボンどころかパンツまで脱がなくちゃいけない。 =他の友達や親は勿論。自分だってまともに見たことないそんな場所を司に見せなくちゃいけない。 そんなのは嫌だと頑なに拒否をする。
「や、ヤダよ。いいよ、そんな場所まで見なくたって。」
「何言ってんの?かの芸能人だって股間強打して玉がひとつなくなっちゃった人だっているんだよ。ヒロのだって、もしものことがあったらどうするのさ、婿入り前なのに。男にとって大事な大事な場所だよ。」
「婿入りって。でも、こんな場所でパンツごと脱ぎたくないんだけど。外からだって絶対見られるし。」
なので司は「仕方ないな」と口にして。 1つだけ用意されてあった保健室のベッドをチェック。 誰も寝てないことも確認した上で、コッチコッチと呼び寄せて、シャッとカーテンで仕切りを作ってまで閉じて、比路が嫌がった条件を先ず1つクリアさせた。
「これなら誰かに見られることなくなるからいいでしょ?さっさとパンツ脱いで、ぶつけた場所見せて。」
「あのね・・・。」
だがしかし、それだけが問題ではない。 確かに誰かに見られるのも嫌だけど、司にだって見られるのも嫌。 それを分かってほしくて比路は続けて、長々く説明するものの、
「は?今さら何言ってんの?」
と。司が論破。
「ヒロのなんて小さい頃から見てるから見慣れてるし、今だって大浴場とかで見たくなくても目に入っちゃうときあるんだから。本当、今さら何言ってんの?ヒロだって俺の見たことあるでしょ?」
「そ、それはそうだけど。で、でもお風呂の時もそうだけど今は関係ない。というか状況が違う。」
「はいはい。ウダウダ言ってないで、さっさと脱いで見せる。授業だって抜け出して来てるんだから、ヒロがさっさとしてくれないと授業が終わっちゃうじゃん。」
おまけに弱いとこまで言葉で突かれ、比路はおとなしく、覚悟を決めて司の言うとおりに。 保健室のベッドに腰を掛け、ゴソゴソとパンツごと靴下以外、下を全部脱いでソッと畳み自分のそばに置く。 既にもう捨てられない恥ずかしさで、頭がどうにかなってしまいそうだ。
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