▼33:偉大なる死とベッリーナ@

「な、なんなんだ!?ここは!?」

「どうやら亀の中のようね」

「どういう仕組みか解らんがあの鍵が亀の甲羅に嵌まるとなぜか能力を発現させて、その鍵が出入り口となってこの空間を作り出し中に隠れられるらしい」

ミスタの疑問も無理はない。
亀に引き寄せられたと思えば見知らぬ部屋に落ちてきたのだ。
アデレードとブチャラティの説明にナランチャがまだ信じられない様子で、今しがた入ってきた天井の窓へと手を伸ばすとズボリとめり込んで彼の身体が浮いた。

「うおっ!」

頭だけ出たナランチャはすぐにドサリと椅子の下へと落ちて戻ってきた。

「うおーッ!カッケーッ!!」

「この部屋……幻覚とかではなく本物の部屋ですよ、これ。ソファとか家具とかも本物だ」

「冷蔵庫の中も飲み物が冷えてるぜ」

喜ぶナランチャを傍目にフーゴとアバッキオが冷静に確認する。

「これなら安全に列車に乗ってヴェネツィアまで行けそうだ」

「フィレンツェまでの所要時間は3時間30分、次のローマまではノンストップで1時間半……少しはゆっくり出来そうね。レオーネ、水をくれる?」

アデレードが時計をちらりと見て、冷蔵庫の前にいるアバッキオに頼んだ。

「ガス入りで良いんだろ」

「Sì.グラスふたつに注いで。ストローもお願い」

Lo so.(解ってる)

アデレードの注文にアバッキオが手際良く片手に2つグラスを持ち、氷と炭酸水を注ぐ。ストローを付けてからひとつをトリッシュに、もうひとつはアデレードへ渡した。

「ほらよ」

「……あ、ありがと……」

「Grazie,mio fratellino.」

「……弟?姉弟なの?」

「いとこだ」

トリッシュの質問にアバッキオはそう一言答えてソファに座ると目を閉じる。
フーゴとジョルノもソファに座って寝る体勢に入っていた。この三人はポンペイに行った疲れもあるのだろう。
アデレードがトリッシュを一人掛け用のソファへ座るよう促した。

「トリッシュもここに座ってゆっくりすると良いわ」

「ええ」

トリッシュの向かい側にブチャラティが座り、ナランチャは天井を見上げ、ミスタは冷蔵庫を物色している。
アデレードはストローで氷をカラカラと混ぜながら置時計の横にある花瓶に差してある薔薇を見ていた。
ふとその薔薇の花びらがハラリと一枚落ちる。

「……少し出てくる」

アデレードはグラスを花瓶の横に置くと天井へ手を伸ばした。
背後からブチャラティがそれを制止する。

「動くと危険だ」

「この列車にプロシュートたちが乗ってるの」

「……彼らとは互いに干渉しない約束だった筈だが?」

「あなたの言っていることは解っているわ。でも彼がいるなら、私は行かなくちゃあいけないの」

Perché no(なぜ)?」

「そんな怖い顔しないで。15分で戻るわ」

「……10分だ」

「Grazie mille.」

厳しい表情のままのブチャラティの頬にアデレードはバーチをして、亀から出ていった。

「……ミスタ、10分後にアデレードを連れ戻せ」

「俺が行っていいのかよ?」

「ああ。俺はトリッシュを護らなきゃならねぇ」

ミスタの溜め息が聞こえる。
ブチャラティはそう言ったきり黙った。
自分が行けば冷静でいられる自信がないとはどうしても言えなかった。





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