▼姉貴とベッリーナ
※『福音の小舟』夢主(デフォルト名)で登場
「……アデレードから電話をもらって来てみれば……お前ら……病人相手に何してやがるクソガキ共」
「ゲッ、姉貴ッ!?」
「パンチェッタ……ッ!」
「アァ?なんでお前が姉貴を知ってんだァ?」
「お前に言う義理はねェな」
夜になってアデレードの部屋にやって来たパンチェッタを見て、プロシュートとブチャラティが新たな火花を散らした。そんな二人をよそ目にアデレードは美しい訪問者を笑顔で迎える。
「いらっしゃい、パンチェッタ」
「Ciao,angioletto.Come stai?」
「È così così.」
そう答えるアデレードの額にパンチェッタが自分の額を当てて熱を比べ、ふむ。と頷く。
「また夜中に上がりそうだな。薬は?」
「まだ」
「じゃあ何か食わねぇとな。キッチン借りるよ」
パンチェッタはそう言うとキッチンに立った。手際よく調理を始めるパンチェッタに三人がぼんやりと眺めていると、カウンター越しに彼女と目が合う。
「アデレードはベッドへ戻れ。プロシュートとブローノはこっちに来て手伝え。そうやって喧嘩するだけなら帰りな」
命令するように指示を出すと三人ともハッとする。アデレードは寝室へ戻り、睨み合っていたプロシュートとブチャラティはキッチンへ入った。
「見舞いに来たならせめてあの子を安心して寝かしてやりな」
『……Sì.』
「全く……」
おとなしくなったかと調理を始めれば、邪魔だ、そっちこそ退け、とまた言い合いを再開させる二人に遂にパンチェッタの拳が炸裂した。
数十分後、パンチェッタが寝室のドアをノックしてやって来る。
「パスティーナインブロードを作った。食べられそうか?」
「Grazie.食べるわ」
アデレードはゆっくりと身体を起こして、パンチェッタからのトレイを受け取った。深皿にはブロードスープとパスティーナと溶き卵が入っている。スプーンで掬って食べれば、じんわりと胃が温まった。
「……何だか静かね」
「あぁ……あの二人は帰らせた。いても邪魔だからな」
あんなに言っても言う事を聞かなかった二人がパンチェッタには逆らえずに帰った事を知って、アデレードは思わずふふ、と笑う。
「ん?」
「いいえ。何でもないの。彼ら、どんな顔して帰ったのかしらと思って」
「どうせ相変わらずくだらねぇ喧嘩しながら帰ってるだろうさ」
「案外仲が良いのかも」
「私もそう思う。喧嘩するほどって言うやつだな」
クスクスと笑い合いながら話している内にすっかり食べ終わってしまった。一緒に運ばれてきていた薬を飲んでしまうと、パンチェッタがアデレードを再びベッドに寝かせる。
「さて、お前ももう寝た方がいい」
「Grazie.」
アデレードの額にかかった前髪を整えてやると、パンチェッタはそこにキスを落とした。
「おやすみ、アデレード」
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