Q&A
11/11/12 Sat (11:21) ● top
*マニュアル恋愛
→悠里:隠れ甘党
柊:笑うと片頬だけえくぼが出る
雅臣:カフスは付けてるけど耳に穴は空いてない
*きみをよぶ
→スグリ:自覚はないけれど寝相がかなり悪い
シルヴァ:天然気味
*アヴァロンは未だ遠く
→郁人:超低血圧で朝に弱い
洸:器用貧乏
*砂糖菓子の王冠
→龍太郎:ファンには遊び人と思われている
忍:大学ではかなり人気者
*遠回りをしよう
→アルベルト:左利き
エリオット:八重歯
*うそだったんです
→堀内:絡み上戸
先輩:泣き上戸
ちょっと長い話だとこんなもん?わたしのメモみたいになっちゃいましたがだいたいこんなかんじ!
11/11/04 Fri (20:21) ● マニュアル恋愛
「というわけでアンケートとってきたぞ」
「どういうわけだよ。こんなときだけ王道転校生っぽいスキル使うなよ」
柊がノートを悠里のほうへ抛り投げる。それをなんとかキャッチして、悠里は恐る恐るそれをめくってみた。
『いつも仕事率先してやってくれてありがとう』と走りがかれた端正な字は副会長のものだろう。育ちのよいかれは字だってすごくきれいだ。なんとなくむずがゆいような気持ちになっていたら、すぐ下に『ただし柊は渡さないよ』と書いてあった。かれらしい。
『仕事遅くまでがんばるとお菓子くれる。たぶん甘党』と書いているのはわんこ書記だった。だいたい合ってる、と思いながら、なんとなく、悠里がかれらをよく見ているようにかれらも悠里をよく見ているんだな、というのが分かってしまう。照れくさくってそっぽを向くと、柊がわずかに口元をゆるめてそんな悠里の横顔を見た。
この学校で定義される『すき』ではなく生徒会の面々が悠里のことを好いているのはよく知っている。柊と悠里が噂を立てられていたときなんかは仲間意識のあるあいだでおこる独特の、あいつには渡さないなんて熱いやりとりが行われていたことも知っていた。
『浮いた噂のひとつもなくてつまんない』というのは会計の字だろう。丸文字だ。お前みたいにゆるい下半身してない、と悠里が唇を尖らせているのをほほえましく見ながら、柊はちょっとした寄せ書き状態になっているノートをいっしょになって眺めた。なんだかんだいって仲がいいってことは、柊もいっしょに生徒会の仕事を手伝っているから分かっている。
浮いた噂のひとつも、と言いながら、実のところそれらがないわけではない。柊のことだってそうだし、雅臣がああだ。悠里はそれをあしらっているから周りからはそう思われているのかもしれないけれど、状況はそれほど簡単でない。なにせ悠里は、素がこうなのだから。
「あいつら好き勝手書きやがって…」
「いいじゃん。そのノートやるよ」
「…」
文句を言いつつもひとつ頷いて、悠里はその背表紙をてのひらで撫でた。不服げだった口元が、ゆっくりと和らいでいく。いつもの悠里の、やわらかい笑顔。それを見て柊は、やっぱりあいつらには悠里の素は知られないままのほうがいいな、なんて思ったのだった。
11/11/04 Fri (20:18) ● きみをよぶ
「あたしは初めてスグリに会った時、キレイな目だなって思った!」
「お前には聞いてない、アカネ」
「知らないわよそんなの!最近スグリが遊びに来てくれなくてつまんない」
めずらしくぎゃあぎゃあとじゃれ合っているアカネとシルヴァを見て、スグリは嬉しそうに口元を緩ませている。ちょうどアカネがスグリのところへ遊びに来た時にシルヴァが質問に答え始めたのを、興味を持ったアカネが寄っていってその質問の紙をとってしまったらしい。シルヴァもアカネもスグリに聞きとらせないように早口でしゃべるから、内容はスグリにはさっぱりだった。
「スグリは怯えていたから。でも、まああの瞳はすごく印象的だった」
青の瞳はこのムラのどこにも見受けられないものだった。不思議なことに、スグリのムラの血とこのムラの血が混ざるとどうしても、あのような澄んだあおいろの瞳は見られなくなってしまう。
「怯えてた?ちょっとシルヴァ、スグリのこと無理やり連れてきたの?」
「そうじゃない。俺とスグリが会ったのは、満月の夜が最初じゃない」
「え、なにそれ!しらない!」
「今度スグリに聞けばいいだろう」
いつになく仲良さそうにじゃれているアカネ(シルヴァにつかみかかっている)とシルヴァ(その額を抑え込んでいる)にほほえましそうな目線を向けて、スグリは意に介した様子もなく三人分のお茶を入れていた。
11/10/29 Sat (07:46) ● きみをよぶ
「…シルヴァの、かあ」
さてどうやって聞き出そう、と思いながらスグリは長椅子に座って剣を磨いているシルヴァをちらりと見た。ああして狩りの道具の手入れをしているシルヴァは真剣そのもので邪魔をしてはいけないと思うから、遠巻きに眺めておく。
スグリ自身、なにか特定の部位に執着するということは殆ど無いからシルヴァのそれは想像もつかなかった。じぶんのムラでも女たちの間に混ざって生きてきたせいか、ムラの若い男たちが騒いでいた髪の美しさだとか足の細さといったものにスグリは一切頓着しないでいる。妹たちやアカネの髪を結んでやることは好きだしシルヴァの長くてきれいな赤髪を弄らせてもらうのは好きだけれど、執着と呼べるほどでもない。
なんてスグリが悶々と考え込んでいたら、シルヴァが剣をそばに置いて寄ってきた。スグリ?とやわらかく名前をよんで、スグリの額をするりと撫でる。その声がひどくやさしくて、スグリは胸がどきどきした。シルヴァの声が、とても好きだ。敢えて挙げろと言われたら、スグリはかれの声のことをいうかもしれないと思う。
「あ」
なんて思っていたら、シルヴァの手がスグリに与えられた質問の紙をさっと奪い去ってしまった。それに目を通したシルヴァが、すこし考え込むそぶりを見せたあとにそうっとスグリのほおを掌で包む。どぎまぎしてかれを見返すと、その表情がほころんだ。
「…」
「……、目?俺の?あ、この色は珍しいもんね」
かれのかたちのよい指先がスグリの目へと寄せられた。ぱちぱちと瞬きをすると、シルヴァがやんわりと笑う。いつもこっちを見てる、と恥ずかしいことを指摘され、スグリは真っ赤になって逃げ出した。
11/10/29 Sat (07:27) ● その他
「…何で本人じゃなくてこっちに聞くんだよ」
「誇張表現を防ぐためにきまっているだろう」
どかりと隣に座り込んだ洸にこともなげにいって、郁人はわずかに破顔した。それからふくれっ面をしているこの騎士の横顔を見据え、ゆるゆると口元をほころばせている。
「何で笑うんだよ」
「昔はあんなに可愛かったのにな、と思って」
「おまえな…!」
洸は力なく脱力すると、もう付き合っていられないとばかりに座りなおしてそっぽを向いた。我関せずの姿勢である。
「騎士学校のころなんか、それなりに女性にも人気があったじゃないか。素行不良のくせに」
「女ってのは危なっかしいのに惹かれるんだよ」
「たしかに危なっかしいな」
「そういう危なっかしいじゃねえ!」
郁人の通っていた学校でも、一度紹介したことがある「喧嘩がものすごい不良騎士」にきゃあきゃあと言っていた女生徒は少なくなかった。身近に郁人や凪といった無条件玉の輿物件があってもそうなのだから、やはり身分に相違はあれどそういった人気はかわらないということか。聞いていないふりをしているのにちょっとだけ耳の先が赤い洸を面白がって眺めながら、郁人はしみじみとうなづいた。
「…でも、一番モテているのはいまなんじゃないか?学生のころはおれのほうが騒がれていたけれど、今はおまえのほうに視線が集まってる気がする」
「お前はあれだ。女が自信なくす」
決して女っぽい容姿ではないくせに女性たちに敬遠されるくらいには整った探偵大先生の顔を見て、洸は軽く肩をすくめて嘆息する。しかし郁人は、近所の娘から騒がれている「あそこの便利屋さんの用心棒さん」を見て、それはたのしそうに笑っていた。
11/10/26 Wed (07:29) ● きみをよぶ
「…ありがとう、シルヴァ」
そうやって笑う、スグリを見るのが好きだ。今日はほおずきの実、明日は甘い果実、その次は、というふうに、かれがどんな表情をして、どんなふうに笑うのか、シルヴァは楽しみでたまらない。
「シルヴァ、今日は、アカネが…」
狩りの道具を片付けたシルヴァを、待ちかねたようにスグリが話し出す。ひとつずつ単語を繋いでいくような拙い話し方ではあったけれど、シルヴァはそんなスグリがいじらしかった。かれが昼間、アカネやアザミにこのムラの言葉を習っているのは知っている。シルヴァもできるだけかれに理解できるような単語で答えてやりながら、ほおずきの実をてのひらのうえで転がしているスグリを見てくすぐったく笑った。
スグリはきっと、何にでも喜ぶのだと思う。シルヴァがかれに手渡せば、きっとかれにとってそれはきらきら輝いてくれるのだと思う。そんなかれのことだから、逆にシルヴァはどうすればかれを一番喜ばせられるのかわからなかった。けれどかれの好きそうなものを探すのは、シルヴァにとってもひどく楽しい作業なのであるわけで。
「スグリ」
「?」
不意打ちでかれの額にひとつ口づけを落とすと、かれはひどく驚いた顔をして、それから蕩けるような笑顔を向けてくれた。
11/10/26 Wed (07:17) ● きみをよぶ
「し、嫉妬…?」
スグリはちらちらとシルヴァを見て、困ったように首をかしげた。このムラに連れられてきて、早数カ月。けれどその実、スグリはあまりシルヴァの交友関係を知らないでいる。
異族であるのにこのムラで意見番のような立場にあるアザミとは、友好的な関係である、ということは知っている。アカネとはあまり仲が良くないようだけれど。たぶんあれは、アカネが一方的にシルヴァを怖がっているのだと思う。ほかのかれの知り合い、というと、スグリのムラを襲ったこのムラの若い男たちがまっさきに思い浮かぶけれど、シルヴァはかれらをこの家に連れてきたことはない。
シルヴァがこのムラで、クサギのようなリーダー格であることは知っている。そばでかれを見ていたからわかるけれど、リーダーにはリーダーとしての責任や苦悩がたくさんあった。それを淡々とこなすかれの横顔を、スグリは純粋にすごい、と思う。かれが慕われているのは周りの反応からもわかるから、なおさらだった。
「…スグリ」
ぎゅ、と腕を引かれシルヴァの腕のなかに引っ張り込まれ、スグリは思わず体を竦めた。びっくりして顔を上げると、微笑んだシルヴァに頬をつままれる。そんなに百面相をしていたかと恥ずかしく身を縮こませ、ついでにかれにきいてみた。
「シルヴァは?」
ずずいと質問の紙をかれに押しつけてみる。けれどスグリの交友関係はといえば同じムラの女たちやアザミやアカネに限定されていて、このムラの男たちとのかかわりはほぼないと言っていいから、人気も何もあったものではない、とスグリは思っていた。
「…」
シルヴァはすこし考え込む様子を見せた後、けれどなにも答えずに、ぎゅっとさらにつよくスグリを抱え込む。なんだかかれらしくて笑ってしまってから、スグリはその背中に抱きついた。
11/10/25 Tue (07:37) ● きみをよぶ
「シルヴァは髪、弄っても怒らないよね」
最初こそシルヴァに対して遠慮だとかそんなものを色濃く感じていたスグリも、どろどろと甘やかされて触れられることに慣れてしまえばかれに触れることをためらうこともなくなった。首をかしげたシルヴァに笑いかけてその隣ににじり寄り、かれの長い髪に触れる。くすぐったそうに頬をゆがめたシルヴァが、スグリにぎゅうぎゅうと押されるままに態勢を変えてスグリに背中を向けた。
「スグリ?」
かれの髪を結える紐を解き、広がった赤い髪を掌ですくう。さらさらと流れていくそれを指で梳くと、シルヴァがくすぐったそうに肩を震わせる。なんとなく甘い笑いを含んでそれを眺めながら、スグリはけれどそれをやめようとはしなかった。
下に三人も妹がいると、髪を結えるのにも慣れてくる。妹たちはこんなに長い髪をしていなかったけれど、と思いながら、ゆるくそれを編み始めた。花を編むのとは勝手が違うその長い髪はスグリの手にはすこし余ってしまう。すぐにするりと逃げそうになる毛束を捕まえておくことにひどく苦心をしながら、スグリはそれに熱中をした。
そうなると、シルヴァも動くことができなくなる。スグリが背後でなにやら髪を弄っているのはわかるのだけれど、振り返ろうとするたびにシルヴァ、とどこか甘い諭すような声で言われてはお手上げだった。あとで思うさまスグリの髪も撫でまわしてやろう、と思いながら、ゆっくりシルヴァは目を閉じる。くすぐったいけれど、スグリの手指の感覚はいやではなかった。
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