Q&A
 

11/11/21 Mon (16:56) ● きみをよぶ


シルヴァへ

いただいたお言葉を想像したらすごく和みました。食べ物はいいものですね!



スグリが一番気に入っていそうな料理はなんですか?


「スグリはスープが好きだな」

さっきからぼうっとしているスグリにそう囁きかけると、眠そうな声でスグリが返事をした。うん、とも、むむ、とも判別のつかない声である。夜も長くなってきて、まだ時刻としてはそれほど遅くないのに身体は眠気を訴えているようだった。

その手のなかには、まだ湯気を立てているスグリが好んでいる様子のスープがある。かれと暮らすようになってから、シルヴァの料理には彩りが増えていた。かれといっしょに山に行くと、スグリはシルヴァが目に止めたこともないような木の実や山菜を採ってはシルヴァに食べ方を教えてくれる。試行錯誤しながらそれをいくつかスープに入れてみると味に深みが出て、ついでに薬草で肉に下ごしらえをすると臭みがきれいに消えてスグリの好みの味になったらしい。

食卓にそれを出すと嬉しそうに笑うから、寒くなってきたこともあって近頃はよくこのスープを作る。シルヴァの作る無骨な料理でも残さず食べてくれるスグリを見ていると、自然と手の混んだ料理を作りたくなってくるから不思議だ。まえは少しも楽しいと感じなかった料理を、近頃はすこし楽しんでいるふしがある。

「シルヴァの料理、おいしくて、好きだよ」

選ぶように言葉を手繰り寄せながらゆっくり頷いたスグリが、そうくしゃりと顔を歪めて笑った。眠たげな顔のままで手に包んだカップに口を付ける。このスープに肉のつみれの具をいれるのも野菜を大きめに切ったのをいれるのも、スグリが来てから増えたレパートリーだ。

ひとりでない食事というものがこれほど楽しいのだと、シルヴァは初めて知った。自分の作った料理を美味しいといって食べてくれるのがこれほど嬉しいだなんて、すこしもしらなかった。

俺も作りたい、と自由になってきた言葉でいつもスグリはシルヴァにいうのだけれど、なにかかにか理由をつけてシルヴァはスグリに台所を譲り渡そうとはしない。自分の作ったものを食べてうれしそうにおいしそうに笑ってくれるスグリがすごく好きなのだといったら、かれはどんな顔をするだろうか。考えて、シルヴァは微笑した。



11/11/18 Fri (20:14) ● マニュアル恋愛

椋へ
好みの関係性について語ってください!

「なんでこいつに餌を与えるかな」
「さて、なにから始めようかな!」

楽しげに手元の資料を広げ始めた双子の弟を、柊は生ぬるい目で見た。ちなみに会場は悠里の部屋である。悠里が淹れてくれたココアに口をつけて、椋が一枚目の資料を手に取った。

「チャラ男攻めもいいけどチャラ男受けもいいんじゃないかと思いはじめましたね。生徒会書記×会計のおっとりわんこ×チャラ男が熱い!」
「いきなり身内か…」
「逃がさねえぞ」

一旦腰を落ち着けかけたソファからこそこそ逃げ出そうとした悠里を捕まえて、柊はかれを道連れにした。

「会計は書記に癒やされ絆されてると思うんだよね。そこんとこどうなんですか悠里さん!」
「んー…、たしかに書記はマスコット的な存在だよな。会計の話をいつもニコニコきいてる」
「こいつに餌を与えるなって…」

凄まじい勢いで何かメモを取っている弟に、柊は若干あきらめを含んだ目をしている。眼鏡をかけた向こうの瞳で、悠里が柔らかく苦笑した。

「あとはやっぱり最近の流行に乗って王道転校生脇の脇役受けも熱い!兄さんに興味を示さない珍しい生徒×悠里さんに夢中の地味系男子っていう奇跡のようなカップリングが成立しつつあるよ」
「柊さいきん王道転校生っていう設定忘れてるよな」
「つうかそもそも変装もしてないし、俺って王道転校生なのか?」
「一級フラグ建築士ではあるけどね!」

双子の兄にフラグ建築士の才能があると早くから見抜いていた椋はそんなことをいう。魅力的な関係性が次々と出来始めたのは、やはり柊というイレギュラーがこの学園を確実に変えたからだろう。

「それから次は三年生のね…」
「…長くなりそうだな」
「……あとでなんか奢るわ」

そんなかれは、となりの悠里にそんなことをいいながら表情を笑み崩していた。


11/11/18 Fri (18:56) ● その他

砂糖菓子の王冠・龍太郎へ
幼なじみ殿と本気で喧嘩したときはどうなりますか?

「殴り合ったりかじったりだよな」
「いつの話だよ」
「小学生」

我が物顔をして俺の部屋で寛いでいる幼なじみ様は、俺より先に質問を読み上げるとついでに回答までしやがった。どういうことだ。

「中学じゃあしばらく口利かないとかあったけど」
「たいていお前が謝るからな」
「…まあ、いつも六割くらい俺がわるいからな」
「…十割だろ」

聞こえませーんとかいって耳をふさいでいる忍をちらりとみた。喧嘩の原因なんていつも些細なもので、けれど喧嘩をするたびにクールダウンしてはこちらの様子をうかがって謝るタイミングを探しているあいつをみていると、俺もなんとなくいじらしさとかを覚えて許してしまうのだ。

「高校のときは優しかったよな、龍太郎」
「俺はいつもお前にすげー優しいっての」

高校では忍が気持ち悪いストーカーに付きまとわれたり、部活が違うせいであまり長く一緒にいられなかったのもあって喧嘩はほとんどしなかった。してもそれは忍にもっと警戒心をもてとか注意するようなものばかりだったんで、お互いに気遣うものだったのを覚えている。

一番俺たちの関係が不安定だったのは多分高校だと思う。喧嘩だって震える忍を励ますのだって距離はゼロでやっていた。抱きしめる身体は思っていたより華奢だったのでどうしたらいいかわからなくなることが多かったけれど、俺はよく耐えたと思う。理性的な意味で。

「いま本気で喧嘩したらどうなるだろうな」
「泣かす」
「怖えよ!」

笑いながら身体をぶつけてきた忍の背中を抱きしめるかわりに、ごつんと頭をぶつけてやった。

11/11/15 Tue (20:52) ● きみをよぶ

シルヴァへ

複数件質問がありました!やさしくてあたたかい恋といっていただけてとてもうれしかったです!!


スグリのどんなところが好きですか?



右肩の温度が優しい。シルヴァはゆっくりと身体を動かして、肩にもたれかかっているスグリの背中に腕を回す。剣を磨く日課を終えて籠を編むスグリに近付いて、隣に座ったのは半刻ばかり前だろうか。半ば身体を預けるように傾いだスグリを胸で受け止めて、邪魔にならないようにその手指が複雑に動く様を見ていた。

「スグリ」
「んー?」

スグリからはいつも花の匂いがする。それは実際に野に咲いている、シルヴァがかれに持ち帰る花の匂いであったり、またその顔に浮かぶ柔らかい満面の笑みでもあった。シルヴァにとってスグリはいつでもそばに咲くきれいな花である。

「シルヴァ?」

名前を呼んだきり黙り込んだシルヴァに、スグリは訝しげな声をかけた。すっぽりと背中を抱えられているから感じる安心感だとかそういうものがスグリから感じられて、くすぐったいけれどいじらしく嬉しい気持ちが湧いてくる。

あたたかいスグリの身体を抱えているとなんだかこころが安らいでいく。攫って来て最初こそぎこちなかったスグリも今ではシルヴァの存在に馴染みきっている。いじらしくシルヴァの世話を焼こうとするし言葉を覚えようとするスグリが愛しくてたまらなかった。

たとえるなら、外を飛び回る小鳥が指に止まって囀っているような感覚だった。渇いた乾季の地面に雨が染み込むような自然さでスグリの存在はシルヴァのなかに息づいている。

「好きだ、すごく」

きっとスグリには聞き取れない小さな声でそういって、シルヴァは家族愛に限りなく近いくらいの愛しさでそばにとどめておきたいと思うその華奢な身体を抱きしめた。

「ん、なに…」

いとしいと思う気持ちをくれたスグリを、ひどくいとおしく思う。こんなふうに誰かを思うだなんて、少し前のシルヴァは考えてもみなかった。抱えたままのスグリがわずかに身じろぎして、それから喉の奥でちいさく笑う。通じていないはずなのにきっと、その言葉の伝えたいことは伝わったのだろうと思うと胸があたたかくなった。

腕のなかで首を伸ばしたスグリの唇が、かすめるように頬にふれる。くすぐったそうに笑ったスグリを、シルヴァは潰れてしまいそうなくらいに抱きしめた。



11/11/15 Tue (20:49) ● マニュアル恋愛

悠里へ

嬉しいお言葉ありがとうございました!!



ファーストキスはいつですか?

「で、どーなの、悠里」

ニヤニヤしながら雅臣がこちらを眺めてくるのを、悠里はじと目で眺めた。楽しそうである。悠里はちょっと呆れて肩をすくめてから、アイスコーヒーをひとくち飲んだ。いつもどおり質問があるからと呼び出されたこの風紀委員の根城には一通りの生活雑貨は揃っているので、勝手にポットをつかって勝手にコーヒーを淹れている。インスタントとか味しねえじゃんとか言っている雅臣には砂糖を大匙五杯くらいいれてやった。

「ファーストキスじゃない」
「えー。じゃ、誰?」
「麻里」
「このシスコン」

実家の箪笥の上にはその証拠写真がばっちりと飾られている。当時どう見積もっても幼稚園児だとかそういうことは、悠里の沽券を守る上ではどうでもよかった。ふふんと勝ち誇った顔をすると、雅臣はちょっとだけ口角を釣り上げている。口を開かれたらどうしようもない言葉が溢れてくることは透け見えていたので先手を打った。

「言っとくけどあの件については一切許してないからなこの変態」
「悠里根に持つタイプ?」
「あれを根に持たないほうがどうかしてるだろ!」

まっとうな学校だったら居たたまれなくて自主退学していてもおかしくないレベルだ。周りも雅臣自身もごくふつうに接してくるせいで事のおかしさを錯覚してしまいそうになるけれど、悠里はいちおう一般常識をまだ覚えている。

「割と我慢したほうだと思うんだけどなー」
「わけわからん!」
「俺も事情知らなかったわけだし。まあしょうがないってことで」
「どこがだ!」

ツッコミ役の重大さを身にしみて感じながら、悠里は呆れてため息をついた。そんな悠里を見てにやにやしている雅臣がコーヒーを口にした瞬間ものすごい変な顔をしたので、ちょっとだけ溜飲を下げておこうと思う。



11/11/14 Mon (19:45) ● マニュアル恋愛

雅臣へ

同一の質問が数件ありました!


悠里との身長差はどのくらいですか?

「悠里ちょっとこっち来て」
「いやだ」

悠里がいい、と駄々をこねた雅臣のせいで高々書類を届けるだけなのに屋上に足を運ぶ羽目になっていた。それなのに雅臣は書類を受け取ろうとはせず、ニヤニヤ笑いながら悠里を招き寄せる。

いつも郎党を連れ歩いていない雅臣は今日だってこの風紀委員の根城にひとりでいた。どうやら寝ていたらしいとわかるのは、ソファに掛布がわだかまっていたからである。一応は学校の見回りが仕事であるから、下校時間まではここにいなければいけないのだろう。

「警戒すんなよ」
「するに決まってるだろ」

いまにも抱きしめてきそうに腕を伸ばしている雅臣の腕が届きそうな近くまで寄る程、悠里は雅臣の気持ちを軽く思ってはいない。いまさらかれに力でどうこうされるという危機感こそまったくなかったけれど、出来れば墓穴を掘るのは避けたい。

「質問が来ててさ」
「どんなだよ」
「…えーっと。悠里のスリーサイズ」
「あからさまな嘘つくな」

ちょっと笑ってしまってから、悠里は雅臣のそばに寄った。その手にある紙を奪い取り、ほんのわずかだけ高い位置にある雅臣を見上げる。

「お前何センチ?」
「ずっと測ってない。悠里は?」
「春はたしか180センチだった」

けっこう背高いよな、と口元を緩めて、雅臣は腕を伸ばして悠里の頬に手の甲で触れた。

「軽いけど」
「俺は喧嘩なんてしなくてよかったからな。そうだ雅臣、後ろ向けよ」

首を傾げて背中をむけてくれた雅臣に背中をくっつけて、悠里は書類を頭の上に載せた。びくり、と硬直した気配のある雅臣の背中から身体を離し、書類の傾度を見る。

「五センチない…くらい?」
「五センチはねえな。三センチくらい?」

ふっと零れた雅臣の笑みが、珍しくなんの屈託もなく優しかった。相変わらず書類を届けるだけでぐだぐだと時間を潰した悠里が生徒会のメンバーに散々からかわれるのは、この一時間後のことである。



11/11/14 Mon (19:43) ● その他

あるいは名前をポチ・先輩へ


わんこくんはどのくらいきれいですか?

「俺のほうがきれいだよ」
「否定はしませんけど真顔でいうことですかそれ」

もう暗くなってきたから、と女の子たちを帰宅させたせいで生徒会室にいるのは俺と先輩だけになっていた。ちょっとだけ二人っきりになりたかったからとかそんな下心込みだったのは当然だけど、俺と先輩の間に横たわるのはいつも通りの雰囲気だけ。まあそんなところも好きなんだけど。

「でもお前は笑うとかわいいよね」

くすくすと笑いながらいった千秋先輩が手を伸ばしてくる。その手に耳の後ろをくすぐるように撫でられ、俺は書類を手にしたまま硬直した。いちいち触り方がエロい。

「俺限定で犬みたい」

なんでかしらないけどいつも余裕たっぷりのかれが憎らしくて、俺は俺よりずっときれいでかわいい先輩の腰に腕を回した。書類を机に放り投げて引き寄せると、眼鏡の奥の瞳が緩慢に細められる。

「飼い犬に手をかまれるってこういうことをいうんでしょ」
「躾けが足りなかったかな、ポチ」

それでも満足そうに唇をゆがませるんだからほんとうにたちが悪い。かわいくてきれいでそれでいて意地悪で、とんでもなくドSだ。

「俺をこういうふうにしつけたのは、あんただ」

邪魔な眼鏡を取っ払ってがぷりとその唇にくらいつくと、ちいさく千秋先輩が喉の奥で笑ったのがわかった。


11/11/12 Sat (11:22) ● その他

うそだったんですの秋良先輩へ
堀内くんをそのあと名前で呼びましたか?

「ヨビマシタ」
「先輩、嘘はいけませんよ」

うるさいぞ堀内。照れくさいもんは照れくさいんだよ。

まったくもって罪悪感を覚えてないわけじゃない。秋良先輩、と俺のことを呼ぶ堀内のことがすきだから、俺が名前で呼んでやればあいつがどう思うかくらい知ってる。

けど、けどやっぱり、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよな。なんかいまさら呼び名を変えるなんてのはさもなにかありましたみたいで周りの目も気になるし堀内の反応も気になる。気になるというよりは怖いというきもちのほうが大きいのかもしれなかった。

「先輩?」

なにかかわいいものを慈しむような手で堀内が俺のほっぺを撫でる。堀内はいろんなことを胸に抱えているあいだ、そんなふうな…なんていうんだ、恋人みたいなふうに俺に触りはしなかった。
けど色々吹っ切れたらしい堀内はけっこうこういった、あまい色を含んだ触れ合いを仕掛けてくる。堀内がきゅうにそんなふうになったから、俺は自分からアクションを仕掛けられなくなった。

「先輩?」
「…堀内」

なんとなく腹が立ったので堀内の胸倉をつかむ。目をまん丸くした堀内にちょっとだけ溜飲を下ろして、名前を呼ぶかわりにその背中に腕を回す。おろおろと腕がさまよっている気配ににやにやしながら、俺はぎゅっとその背中にしがみついてやった。


  


ToP



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