Q&A
 

12/01/08 Sun (07:28) ● その他

砂糖菓子の王冠・龍太郎へ

龍太郎はわりとキザなところがあると思ってます。

*本編の1314話を書く以前に書いたため、そんなような感じになっていますごめんね!

想いが通じたらまずなにをしたいですか?

「何読んでんの、りゅうたろ」
「…」
「何で無言でしまうんだよ!見せろよ!」
「断る!」

にゅっと横から伸びてきた忍に慌てて質問の紙をポケットに押し込んで、俺は顔が赤くならないようにするのにひどく気を遣った。そりゃあ健全な男子高校生だったころの俺は想い人との過剰な接触にそれなりに思うところもあったけど、今の俺は悟りを開けそうなくらいにはそういうのに慣れている。このぐらい屁でもない。ちょっと見栄張ったけど。

「…そうだ、台本の練習しないと」
「なんで棒読みなんだよ!花梨ちゃんのメアドとかじゃないだろうな!」

人の気をしらない馬鹿は放っておいて、俺はひとつため息をついた。ちなみに花梨っていうのは今日共演した女優で、忍お気に入りらしい。残念ながら彼氏がいるようだったが、それを忍に言えばたぶん怒られるのでやめておいた。健気な奴だ、俺。

「…ずっと一緒にいられればそれでいい。それ以上は何も望まないさ」

国民的俳優が主演を務めるこんどのドラマで、俺は主人公の恋人の元婚約者を演じている。愛し合った女性を遺して事故死をするダイバーの役なわけだが、たぶんこういう感じのことを言っていれば忍にはバレないと思う。ほんとうはずっと、こうしてそばでその笑顔をみていられたらそれでよかった。…忍が笑っていれば、それでよかった。

「そんなイケメンなこと囁かれたらそりゃオチるよなー」

なんて笑いながら忍が身体ごと俺にぶつかってきた。人の気を知らないで。一日五回くらい思ってることを相変わらず思いながら、俺はその体をぎゅっと抱え込んでみる。ドラマの練習ということにすれば、多少のことは許される。それは俺と俺の理性との間の、ちょっとした約束事だった。

「いつかお前が、楽しかったって笑ってくれれば、それでいいんだ」

手を繋げなくても一緒に出かけられなくても俺の本心として抱き締められなくてもキスができなくたって、いい。俺は忍が、目の前のテレビで女性に愛を囁いている俺自身を見つめているこの馬鹿な幼なじみが、大事で好きでたまらないのだから。

「…な、りゅーたろ」

俺のことを完全にソファ扱いしている忍が、チューハイに手を伸ばしながら笑う。忍の笑い声がすきだった。あたたかい感じがする。

「お前と付き合う女の子、たぶんすげーしあわせだと思う」
「…、こんなドラマみたいな台詞、リアルで言うかってーの」
「えー!ぜったい喜ぶのに。じゃあこの口説き文句は俺専用なわけかよ」
「悪いかよ」
「べっつにー」

俺の立てた膝に肘を乗せながら、忍はそういって喉の奥で笑った。


11/12/10 Sat (22:04) ● きみをよぶ

シルヴァへ



スグリの料理はおいしいですか?

「スグリ、平気か」

心配になって声を掛けても、さっきからスグリはそこにいて、というような意味の単語しか放ってこない。さっきから危なっかしい音ばかり聞こえてくるからシルヴァは心配でしょうがないのだけれど、スグリはあれで言い出したら聞かないところがあるのでシルヴァにはそれに従うしかなかった。最近はアカネやアザミにいろいろ言葉を教わってくるのでスグリとの意思疎通も前よりかはよくなっているのだけれど、時々確実にシルヴァをからかったり困らせたりするのが目的で言葉を教え込まれているので困る。

全部任せて、とか、そこで待ってて、とか、やけにはっきりとした発音で嬉々として言われると困りものだ。そのうちとんでもない言葉を覚えてくるんじゃないかとシルヴァは気が気ではない。特に心配なのはアザミだった。彼女はあれで、シルヴァをはじめとするムラの若者をからかうことを非常に楽しんでいるふしがある。

楽しそうなスグリの鼻歌が聞こえてきていた。不可解な切断音の出所は台所である。シルヴァのことを考えてくれているのはよくわかるのだけれど、スグリは決まってかれのムラの料理をむりにアレンジしようとする。その心遣いはいじらしいしありがたいと思うのだけれど、肉の扱いに慣れていないスグリにとってそれはかなり難しい作業らしかった。いつか手を切るんじゃないかとシルヴァは気が気ではない。無理にシルヴァに合わせなくてもスグリのムラの料理をシルヴァも食べてみたいのに、スグリはなかなか頷いてくれなかった。

「シルヴァ!」

出来たよ、というふうににっこりと笑いながら、盆を持ったスグリがシルヴァの待つ居間に戻ってきた。それを受け取って机の上に皿を置きながら、シルヴァはちょっとだけ苦笑いをする。もとの料理の良さを殺している気がしてならない謎の物体が乗った煮物からはスグリ自身も目を逸らしているようだった。やっぱりこんどスグリに、いつも作っていた料理で良いんだよと言い聞かせようと思いながらシルヴァはフォークをとる。ありがとう、といえばスグリがそれは嬉しそうに笑うので、いつもシルヴァはそんなささやかな問題を見過ごしてしまうのだけれど。



11/12/10 Sat (22:03) ● きみをよぶ

シルヴァへ


スグリを好きになったきっかけは?

うつらうつら船を漕いでいるスグリの頭を肩に乗せてやると、かれはちいさく身じろぎをした。湖の清涼さを思わせるその瞳も今はふわりと色をぼやけさせ、起きているんだか寝ているんだかわからないような表情をしている。それでも視界のなかにシルヴァの赤色を認めたか、その口元だけがちいさく動いて微笑みを形作った。

「スグリ」

眠いならおやすみ、と言葉のかわりに伝わるような手つきでもってその髪をなでてやると、ついにスグリの目蓋が閉じられる。じわじわと肩口から伝わる体温が、ひどく心地よかった。

このじぶんの庇護という翼の下で生きている、頼りないけれど時折はっとするほど芯の強い存在に惹かれたのはいつからだったろう。もとはきちんと自分の家族を持って家族とともに生きてきたスグリを、家族を守りたいというかれの願いという不可抗力のせいでこのムラに攫ってきてしまってからしばらく経った。最初のうちはごく子供だと信じて疑わなかったスグリに家族愛とも呼べる感情を抱き始めたのは、ひどく早い段階だったとシルヴァは思っている。

シルヴァにとって、自分を無条件で信じてくれる少年の存在はひどく大きなものだった。けれどふいにどこか決意を孕んだその意志のつよいまなざしにはっとさせられることが増えて、スグリが見せてくれる自分への笑顔がどこかとても特別なものに感じられて、気付けばかれのことを、前もって抱いていたそれとは違う感情で愛するようになっていた。こうして体温を分け合うほど近づいて、本当は自分の腕のなかに閉じ込めて大事に大事に仕舞っておきたいと思うようになって、いま、シルヴァはとてもしあわせだと思う。

静かに寝息を立て始めたスグリの口元は、ほころぶように笑んでいた。きっといつまでもかれの存在をこうして特別に感じ続けるのだろうと思いながら、シルヴァはスグリを起こさないように砕心をしてかれを抱き上げる。相変わらず頼りないほどには軽い体を抱いて暖炉の前に座り直しながら、シルヴァは自分の口元がどうしようもなく揺るんでいることを自覚していた。

11/12/04 Sun (12:54) ● マニュアル恋愛


雅臣へ



柊のことはどう思ってますか?


「え、友達」
「……真顔で言うなよ」

いつものふざけているときと違って素の表情でしれっとそんなことをいわれたので、柊は寸の間面喰って黙りこんだ。そもそもなんでこんなことになってるんだっけ、と思いながら、周囲から突き刺さる視線に耐える。

珍しく食堂にやってきた風紀委員長がこれまた珍しく食堂にいた転校生に声を掛けたことで、不自然なくらいに周囲は静まり返ってしまっていた。まさか会話の内容までは聞こえていないだろうが、なんとなく居心地が悪くてむずむずと椅子の上で体を揺らしてしまう。

「友達欲しかったんだよなー、俺。ほら、見ての通り普段ひとりぼっちだし」
「…だから真顔で言うなって。いっぱいいるだろ、ほら、風紀委員とか」
「ああいう奴らが俺に冗談とかいうと思うか?あいつらガチで俺のこと上官か何かだと思ってるぞ」

実際似たようなもんだけどさ、と言いながら雅臣は学食のカレーを食べている。なんとなくひとつ息を吐いて、柊はすこし感慨深く目の前の男を見た。風紀委員には柊も幾度となく世話になっている。色々な人物に追いかけまわされてめんどくさくなって乱闘騒ぎを起こしたことは両手の指では足りないくらいあった。統率のとれた集団だ、というのが総評である。

「…ま、俺も」

不承不承、といったふうに視線をあげて、それから柊はにっと頬を釣り上げて笑った。悠里と一緒にいる時とはまた違う、どこかぎらぎらした笑みである。

「お前とはいつかガチで喧嘩してえと思ってるよ」
「えっそれどういうこと!?」

…たのしそうに笑う柊と珍しく困った様子の雅臣に、周囲が色んな意味でざわめいたのは言うまでもない。


11/12/04 Sun (12:25) ● マニュアル恋愛

柊へ


柊のマニュアルでのキャラだったのですか?

「あれだ、王道転校生」
「そのわりにかつらもかぶってないし眼鏡もしてなかったじゃないか」
「必要ねえしべつにお前みたいに演技しようと思ったわけでもねーからな」

湯気のたつココアを吹いて冷ましながら、柊はそういって頬を釣り上げた。隣に座って肉まんを割っている悠里がしんそこ不服そうな顔をする。いつものように、第二音楽室にて。

「でもまあ結果オーライだったもんな」
「うっせ」

しあわせそうに肉まんにかじりついている悠里は氷の生徒会長なので、購買の人気商品であるそれですら気軽に買えない立場だ。真面目な悠里は完璧に演技をしようとするから、そういった細かな楽しみは諦めてしまいがちなのである。柊はだから、あくまでも快活で分け隔てのない、けれどとくべつそんな氷の生徒会長と仲のいい転校生を演じてかれのぶんも肉まんを買ってその手に押しつけてやった。柊がじぶんの役どころを最大限に利用するのは、もっぱらそんなことに限られている。

「でも、すごいと思うぞ。椋くんがよく教えてくれるけど」
「おいちょっと待て。アイツお前になにか変なこと吹き込んでんじゃねえだろうな」
「…ノーコメントで」

一瞬しまった、という顔をした悠里が口をつぐんだ。柊は次に会ったらぶっ飛ばす、と脳内でえへらえへら笑っている弟に誓い、とりあえず悠里に向き直る。弟には他人に…ことさら悠里には知られたくないことをたくさん知られているのだ。あと、あいつは勝手にひとのことを小説にしたりするので油断がならない。

「何を吹き込まれた?吐け!」
「柊顔怖いぞ!どうみても悪役の顔になってる!」

ちょっと顔をひきつらせながら悠里がゆっくり後ずさった。もちろん悠里には椋が近頃の学内BL小説で柊が引っ張りだこだとかそういったことを言っていたことなんて言えるわけがないので、とりあえず昼休みが終わるまでの時間をいつになく鬼気迫った柊から逃げ回ることになってしまった。


11/11/27 Sun (14:46) ● マニュアル恋愛


椋へ


学園内ではどんなCPが人気なの?


「僕が把握している限りでは三つのBL小説同好会があるね。それぞれ派閥というかCP戦争は繰り広げてるみたいだ」
「…またやってるの、椋。きもちわるい」
「リオンいいところに!まあちょっと付き合ってよ」

通りかかったリオンを捕まえて、ゲスト、と銘打った席に座らせる。この友人はしんそこ気の毒そうな目を僕に向けてから、仕方なく会話に加わってくれるようだった。ちなみに僕が悠里さんと仲がいいということがこの間偶然に発覚し(悠里さんに話しかけられてるのをリオンに見られた)首を絞められながら問い詰められたのは記憶に新しい。リオンはヤンデレの素質があると思うんだけど悠里さんのまえではその鱗片すら見せないのでさすが用意周到だと思うね。この小悪魔健気襲い受けめ。

「ひとつは兄さ…、じゃなかった、柊総受け思考の同好会だね。主流はやっぱり俺様生徒会長×常識人な転校生みたい。王道だよねー。リオン、目が怖い」
「嫌がらせ?僕に対する嫌がらせなの、椋」

しまったこの話題は不味かった。とりあえず話を逸らそうとえへらえへら笑いながら二つ目の同好会の説明に移ることにする。さいきんはなんか悠里さんは昔兄さんが潰した不良チームのトップだったとかいう妄想設定が流行ってるみたいです。王道設定おいしいです。まあ僕としては悠里さん受けももうちょっと流行って良いんじゃないかなって思ってるけどね!!

「二つ目はこの学園にいる『姫』たちを中心に書いてるグループだね!」
「やっぱり僕に喧嘩売ってるよね、椋」
「痛いです痛いです」

ヘッドロックをかまされるけれどやっぱり兄さんのとちがって手加減が感じられる。リオンは良い子だ。ちなみにその同好会での一番人気は三年生にいる前の生徒会副会長である。同じ代の会計と良い雰囲気なのにくっつかないのが周りからすればもどかしくてしょうがないらしい。たしかにあそこは美味しいよね。チャラ男×ツンデレ美人猫とかやっぱり人気も出る。ちなみにリオンは女王様キャラとして一部のマニア層にものすごく人気が高いんだけどヘッドショットかまされたらさすがに僕でも死ぬと思うので黙っておいた。

「三つめは雑食系マイナー派閥。萌えられれば何でもござれ!ってやつだね!」
「やつだね!とか言われても全然わかんない」
「プライド高いのを屈服させるのが好きっていうつわものたちがうじゃうじゃいるよ」
「なにそれこわい」

リオンったらけっこうノリがいい。悠里さんに「そばにいていい」と言われてからというもの目に見えてしあわせそうなリオンは周りをハアハアさせてるなんて気付いてないんだろうなあ、と思うとちょっと良心が疼いた。ちなみに三つめのサークルは本当にカオスである。まあ(俺様生徒会長としての)悠里さん受けとかリオンの前で口にしたらサークルの部室が血のバレンタインデー事件みたいになりかねないので口には出さないけど。あと雅臣さん受けとかやってるつわものもいると聞いている。こっちも風紀委員の耳に入ったら血をみるね。萌えの前では時として人間は命すら顧みないところがある。

「まあこんな感じかな!リオン付き合ってくれてありがとう!」
「なんかすごく疲れた。食堂で悠里さまに会えなかったらなんか奢ってね」
「おっ、おねだりキタコレ!リオン今の台詞もっかい!」

あっ今のパンチは本気だった。


11/11/27 Sun (14:28) ● その他


アヴァロンは未だ遠く・洸へ


郁人に叶わないなと思う時はいつですか?


「いつも、だな」

珍しく依頼が入ってきたかと思えば、やっぱり浮気の調査だった。ぶーぶーと文句を垂れながらも郁人は俺が集めてきた情報を眺めすがめつしながら、さっきからその何が詰まってんだか底知れない頭を回転させているようだ。

実際問題俺がコイツに勝てるのなんて剣の腕と家事のスキルぐらいだと思う。長年一緒にいるからこいつが色んな意味で凄いことなんて本当に自然に思ってしまってるけど、それもどうだかなって最近たまに考える。

「なにがだ?」

郁人がペンを走らせているのは一枚の白い紙だった。依頼人の名前が書きこまれ、それを取り巻くように情報が整理されていく。さっきまで断片でしかなかった状況が郁人の頭のなかで一つのストーリーになって、それでそれが俺の目にも目視できる姿をとる。それを見ているのが面白かった。浮気相手の候補は数人いたが、それのうちひとつが情報と情報にぶつかって消える。アリバイ、というやつだ。依頼人である夫人にそのまま見せるときに使うつもりなんだろう、いつもより丁寧に説明を書き加えた紙がみるみるうちに出来あがっていく。

「お前の頭んなかって、どうなってるんだろうなと思って」
「…どうなってるって、ふつうに脳が詰まってるぞ」
「俺はときどきそれもあやしいと思うけどな」
「なんだ、それ」

言葉や智識が目に見えるのなら、それがそのままぎゅうぎゅうに詰まっていたっておかしくない。俺はそんなふうに思っている。チェスやなんかっていうボードゲームの達人は一手コマを進めれば四十手先まで予想がつくというけれど、郁人の頭もそんなふうになってるんじゃなかろうか。そんでもって、俺はその駒ってわけ。無理難題をどうにかこなすのは骨が折れるけど、けっこう俺はそんな役回りを気に入っている。こうして郁人が謎を解き明かす、その横顔が好きだった。


11/11/21 Mon (17:15) ● その他

アヴァロンは未だ遠く・郁人へ

更新を待っていてくださった質問者さま、まことお待たせ申し上げました!(笑)


もし洸がほかのひとの騎士になると志望したらどうする?

「…びっくりする?」
「……なにが」

じーっと見つめられ、五分ほど経って。ようやっと郁人が出した答えはかれらしくもなく疑問形だった。ひょいとかれの手にあった紙切れを取り上げて一瞥し、洸は何度か瞬きをする。

「…あー、こりゃびっくりするわな」
「するな。とりあえずびっくりする」

想像もできない自分の姿に思わず頷いてしまった洸をもう一度つま先から頭のてっぺんまで眺め、郁人はほうっと息を吐いた。郁人はその実、洸が何があっても自分の味方だという前提条件を、一度も危ぶんだことがない。

「びっくりして、それで、考え直せっていうな」
「…まともに答えられると照れるんだけど。やめろよ」

洸は郁人の髪をくしゃくしゃ撫でると、そういってちいさく苦笑いをした。生まれてすぐにかれの騎士になることは運命づけられていたといっても、それが脅かされたことが無かったかといえばうそになる。端的にいうと、洸の成績が悪すぎたせいだ。

騎士学校に通っていたころ。仮にも帝国の誇る東の大公候補の騎士がマナーも教養も赤点の不良でいいのか、という話は嫌味のように幾度となく洸の耳にも入ってきた。当の本人、つまり郁人が面白がって助長していなかったらさすがの自分も態度を改めていただろう、と洸自身も思っている。すべて、郁人の騎士になれないのだったら意味がなかったから。

「お前は見張ってねえとほんと危なっかしいからな」
「それは光栄だ」

二十を越えても相変わらず常人には及びもつかないような破天荒かつ天衣無縫な郁人の行動を、それでもいつも楽しみながら追いかけていることは棚に上げる。洸が肩をすくめると、さきほどの紙でどうやら何かを折っていたらしい郁人が顔を上げて笑った。褒めてねえし、と言いかけた洸の額に、その何か―――、すなわち紙飛行機が飛んできて命中する。洸はもうどうしようもなくて、ただなんとなくすごく満ち足りた気分になりながら、斜陽の探偵事務所でくつくつと笑いを漏らしたのだった。



  


ToP



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