Q&A
 

12/02/15 Wed (18:58) ● きみをよぶ

シルヴァへ


たまらないスグリの仕草などを教えて下さい!

「…改めて言われると、こまる」

危なっかしいしそそっかしいしおまけに予測もつかない突拍子もない行動を取る同居人のことは、いっしょに暮らすようになってしばらく経った今でも、いまいち把握しきれていない。

眠たげだったりうれしそうだったり、困った顔をしていたり。その表情の変化は読みとれるようになってきたけれど、しぐさと言われたらさっぱりだ。近頃はスグリも少しずつ大胆になってきて、ひとりでムラを歩くのもあまり怖がらなくなってきている。シルヴァの知り合いであるムラの男たちとも挨拶程度はかわしているし、すっかり懐ききっているアカネと遊んでいるときなんかは、いつもよりずいぶん大人びた顔だ。

「…でも、まあ」

夕食を取ったあとあたたかい暖炉のそばで編み物をしながら座っていたら、スグリはすっかり眠くなってしまったらしい。シルヴァが感心する鮮やかな手つきで編みあげていった編み物を放り出し、シルヴァの肩に頭を押し付けて、どうやら寝入っているらしかった。

その肩を撫でてみる。平素よりも幾ばくか温かい体温が、掌に良く馴染んだ。細く器用な指先をそっとなぞってみると、スグリの手指がすがるようにシルヴァのそれを、とらえて引く。シルヴァがそばにいることを、当たり前だと思ってくれている、反射のような手つきだった。うっすら緩慢に目を開けたあおいろが、ゆっくり瞬いてシルヴァを見、わらう。

「シルヴァ」
「…ん」

寝てろ、と囁くと、安心したようにそのあおいろが閉じられた。こうしてシルヴァのことを信頼しきったしぐさのひとつひとつが、愛しくてたまらない、と思う。うまく言葉にできないけれど、それだけは確かだった。


12/02/15 Wed (18:56) ● きみをよぶ

アカネへ


シルヴァとスグリの二人はどう見えていますか?

「…スグリは、だいすき!一緒に遊んでくれるし、いろんなこと教えてくれる」

等身大の女の子としてアカネを扱ってくれるのは、アザミとスグリだけだった。スグリはアカネが、ムラで唯一の、このムラで生まれ育った娘だということを気にしない。気高くあれとも言わないし、誇りをもてとも言わない。いつも花の香りを漂わせ、アカネの髪を結えたり、紐やなにかをつかった手遊びを教えてくれる。

ほんとうは、もっとたくさんスグリと遊んでいたい、というのは、アカネの胸にいつもある考えだった。けれどもっと長く話し合いに出ていればいいのに、シルヴァといえばさっさと話をまとめ上げてはスグリを迎えにきてしまう。背がうんと高くて、無表情で無愛想で、しかも怖いし、スグリを独り占めしている。と、アカネはシルヴァにかなり敵対心を抱いている。

アカネとシルヴァは、よく似ている。シルヴァもまた、両親がいない身だ。シルヴァは男だったから、ひとりで生きていかなければならなかった。アカネはこのムラでは珍しい女の子供だったから、ムラの世話役であるアザミに引き取られ、こうして生きている。父が死んだ日、母が死んだ日、葬式のさなか、なにか声をかけるでもなく、唇を噛んで立ち尽くすアカネの頭を、ぽんとひとつ叩いて去っていったシルヴァの背中を、近頃よくアカネは思い出す。

「…でも、シルヴァはきらい」

スグリは、シルヴァが攫ってきた違うムラの人間だ。本来ならあんなふうにアカネと一緒に時間を過ごすことなど、決してなかったはずの立場のかれが、どうしてアカネと知り合ったのか、といったら、ひとえにシルヴァがかれを連れてきたからに違いない。

そしてアカネは、そんなところもまた気にくわないわけだった。

シルヴァが迎えにきたときの、スグリの嬉しそうな顔。いつもアカネの髪を梳いては笑ってくれるスグリが、シルヴァに撫でられてはにかんでいる表情。仲睦ましげに、寄り添って帰っていくせなかも。

いつか自分にも、あんなふうに寄り添える背中ができるのだろうか。ふたりを見送ったあと、アカネはいつも、そんなことを考えている。



12/02/01 Wed (06:24) ● きみをよぶ

シルヴァへ

初対面でスグリに白い花を貰った感想は?

「…驚いたな。あれは、儀式の時につかう特別な花だから」

初めて出会ったあの草原があの花の群生地であったことを、シルヴァはそのとき初めてしった。シルヴァにとってそれまで、草原とは駆け抜けるものであって足を止めて花を摘む場所ではなかったから。けれどスグリがそうしたように、シルヴァも草原で足を止めてスグリのために花を摘むことが増えてからは、違う。足を止めて見回せば、シルヴァのまわりの景色はとてもうつくしいものだった。

「…?」

きょとんとした顔でこっちを向いたスグリに笑いかける。スグリがくれた花のこと、そしてあの日シルヴァも色んな想いを込めてかれに手渡した花束のことを手ぶりを交えながら言えば、スグリは照れたらしくぴゅっと台所のほうに引っこんでしまった。

驚きが先に立ったあの邂逅は、どちらかといえばかれの瞳の鮮烈なほどの美しさを伴ってシルヴァの胸に息づいている。ほかのかれのムラの人間のことももちろん知っているけれど、シルヴァにとってスグリのあおいろは、ほかのものとはまた違った輝きを持っていた。

あの花は、シルヴァにとって特別な花だ。特別な花に、なった。同じ気持ちをスグリも抱いてくれていると、シルヴァはそう思っている。まだかれがあの花の意味を知らなかったときも、スグリはあの花を特別好んでいるようだったから。

春が来たら、あの花をまた摘んでこようと思う。今度はシルヴァが、スグリを驚かせる番だった。

12/02/01 Wed (06:23) ● きみをよぶ

クサギへ
スグリのことは諦めたんですか?

――ムラの門に矢が突き立っているのを見つけたのは、クサギだった。それにはやわい紙でできた矢文が括りつけられていて、不審に思ったクサギがそれを開いたとき、かれは思わず抱えていた弓矢を落としてしまうくらいに驚いた。

そこに踊っていたのは、かれの義弟にあたる人物の名前だったからである。

「…姉さん、ちびたち、クサギへ。元気に暮らしていますか」

クサギたちの言葉で綴られた言葉はもちろん、クサギには読むことができた。あのいじらしい義弟は、生きていたのだ!それは信じられないような衝撃を以て、クサギの胸に染みた。あの満月の晩、クサギの手を振り払い大熊のほうへ駆けて行ったかれ。クサギにはムラの者を無事に生かすという絶対の役目があったから、かれを追いかけることは許されなかった。あれから少しして響いた絶叫に、もしかして、というわずかな希望にすがっていたのだけれど。

「…俺は元気です。クサギ、姉さんたちを、よろしくね」

楽しく暮らしているという旨、こちらの仔細を祈る言葉、かれらしくそんな文章ばかり書かれた手紙は、そう結ばれていた。

あの時、スグリを見殺しにしてしまったのではないか、という思いは。…今日に至るまで、クサギの心の決して狭くない一角を氷漬けにしていた。けれどそれが氷解するというのなら、クサギは歩きだせるのかもしれないと思う。

ほんとうは。…ほんとうに、クサギが好きだったのは。

「…クサギ?どうしたの?」

見回りから戻らないクサギを心配したか、カンナが家から出てクサギの背に駆けよってきた。妹たちと年老いた父の面倒、そしてクサギの両親の世話まで引き受けてくれている、しっかりものの妻だ。

「…見てくれ、カンナ」

色々な思いを噛み潰すようにそう言って、クサギはカンナの手に手紙を握らせた。いぶかしげにそれを開いたカンナの顔が驚きに染まる。

―――いつか氷が解けたように、この胸の思いもきっと、きれいに融けてくれるのだろう。すすり泣く妻の肩を抱き、クサギはそっと目を閉じた。

12/01/08 Sun (07:32) ● きみをよぶ

スグリへ

小話たのしみにしてくださってありがとう!
子守唄は歌えますか?

アザミとシルヴァをはじめとするムラの有力者たちの会議が長引くと、しぜん、スグリとアカネが過ごす時間が長くなる。もちろんスグリはそれを楽しいし嬉しく思うのだけれど、いくら大人びていてもアカネはまだ子供なのだ。夜が深まれば眠たくなるのは当然のことである。

「アカネ、そろそろ寝てなよ」
「やだ!」

けれどアカネは、どうしてもスグリと遊んでいたいようだった。作りかけの小さな篭を理由にして、意志のつよい大きな目を眠たそうにしながらも首を縦には振らない。

しかもとなりの部屋から聞こえてくる話し合いが終わる気配はなくて、スグリは仕方なく姿勢を正して少女へと向き直った。

「まだかかりそうだし、ね?」
「眠くないもん!」
「…子守唄うたってあげるから」
「……子守唄?」

アカネはスグリのその言葉に興味を示したようだった。大きなこげ茶色のひとみをきらめかせ、ちらちらとスグリの顔を伺っている。

「よく眠れるように。俺のムラに伝わってた歌だよ」
「…」
「アカネがちゃんと寝るんだったら、歌ってあげる」
「……わかった」

こくりと頷いたアカネの頭を撫で、スグリはごそごそと布団に入り込んだ彼女の傍に座った。低く聞こえてくる話声を遮るように、そっと歌い出す。まだ母が生きていたころは母が、そして妹をあやすときには姉が歌っていた歌だった。一番下の妹たちに歌うのは、スグリの役目だったのである。懐かしく思い出しながら、妹たちにしてやったように歌を歌った。歌詞はない、ただ旋律だけをうたうメロディである。

アカネの手が伸びてきて、スグリのそれをぎゅっと握った。…母もなく、父もいないたったひとりのかのじょが何を思ったのか、スグリにはわからない。わからないけどなにかたいせつなものが伝わってきたから、そっとその手の甲を撫でてやった。歌声は止まらない。目蓋を閉じたアカネが寝息を零すまで、そう時間はかからなかった。

「…スグリ?」

すっと薄く扉が開いて、こちらを覗き込む姿が見えた。スグリはまだ小声で子守唄を口ずさんだまま、唇のまえに人差し指を立てる。するとシルヴァがひどくやさしく微笑んだのが、遠目でもわかった。光を漏らさないようにするりと部屋に入ってきたシルヴァが、音を立てないように扉を閉めて、スグリの隣に腰掛ける。

照れくさくなってスグリが歌うのをやめたら、シルヴァの長い指がその唇に触れた。まるで続きを促すようにじっと見つめられ、スグリは耐えきれずにアカネの子供らしいちいさな掌にじっと視線を落とす。それからむずむずと背中を揺らして、再び小声で歌いだした。

結局、それからしばらくして会議が終わるまで、スグリはずっと歌を口ずさんでいた。シルヴァは飽きる様子もなくそれを聞いていたのだけど、結局眠らず仕舞いだったので、スグリが内心でリベンジを誓ったのはいうまでもない。


12/01/08 Sun (07:31) ● きみをよぶ

シルヴァへ

はじめにスグリを連れて行った時は、お嫁さんにするつもりだったんですか?なりゆき?

「なりゆきだな。あの状況で、スグリが家に入られたくないことはわかった」

あの時、初めてかれに会った時とは全く違う真剣なまなざしでシルヴァを睨んでいたスグリを思い出す。家族というものに縁遠かったシルヴァにはその時、その意味は測りとれるようでいて測りとれてはいなかった。けれど今はちがう。スグリのことを考えれば、家族がどれほど大切な存在なのかということは、はっきりとわかる。

「ん…?」

夜も遅く、それでもアザミに請け負った仕事らしい薬草をすりつぶす作業に没頭していた背中は、先ほどから眠気に負けてうつらうつらと船を漕いでいた。聞き慣れない言葉をシルヴァが呟いたのが聞こえたのか、寝言なのか判別のつかない声が漏れる。安心させるようにその背中を撫でてやると、スグリはすぐに静かになった。再び眠りに就いたらしい。

シルヴァはあの侵攻のリーダーだった。そのシルヴァが嫁を手に入れない限り、あの侵略は続いただろう。となればスグリの家族も、ほぼ間違いなく見つかって連れてこられていた。それを防ぐためには、スグリがそうしたように、身を呈してシルヴァに攫われるしかなかったのだ。…シルヴァは、べつに、それでよかった。シルヴァが欲しかったのは、ただ家族だったから。なによりも、シルヴァは目の前で家族を守ろうと必死になっているスグリの力になってやりたかったのかもしれない。かれの家族を守りたいという思いは、それほどまでに強かった。

あの時あの花を差し出した、きれいな目をした少年。鮮烈にシルヴァの胸に刻まれたあの邂逅を思えば、きっと運命だったのだろうと、シルヴァはそんなふうに思っている。

「…それに、スグリは女じゃないからな」

どう見ても女の衣装であるあの白いローブ、今でもスグリが時折日に当てて眩しそうに眺めているあれ、を着ていたスグリに、シルヴァは最初こそかれが実は少女だったのか、と思った。けれど触ってたしかめて、スグリがれっきとした男であることはすぐに知れる。だからかれを連れてきた当初は、年の離れた弟でも見るような、そんな気分でいたのだけれど。

…そもそも年がそれほど離れていなかった、というのは、シルヴァやアカネの中ではちょっとしたタブーになっている。また蒸し返してスグリにへそを曲げられたらたまったものではないからだ。ちょっとだけ口元を緩めてから、シルヴァはスグリを寝室まで運んでやろうと立ち上がる。シルヴァの大切な家族は、安心しきって眠っていた。

12/01/08 Sun (07:30) ● きみをよぶ

スグリへ


どんなときにシルヴァを「すきだな」と思いますか?

「…こんな俺にもやさしくしてくれるし、料理上手だし」
「ほんとにあいつやさしいの?」
「やさしいよ」

ふてくされたように手足をばたばたさせているアカネをほほえましく眺めながら、スグリはそういって笑った。本人を前にしてはぜったいに言えないような(それには照れに先立つ言葉の壁という理由があるのだけれど)ことをぽろぽろと零せるのは、それだけスグリがシルヴァのことを好いているせいだ。胸のうちにとどめておくのが難しいくらいに湧き上がる感情は、音を得ていくらでも唇から溢れだす。

「山とかに連れてってくれるのも、すごくうれしい」

体が弱いから野で駆けられないから、と、もといたムラでスグリは女たちのようにムラの外に出ることは基本的になかった。だからシルヴァが、スグリの体のことを気遣いながらも躊躇わずにスグリを外の世界に連れだしてくれることが、とてもうれしい。そんなときにますますスグリは、ああシルヴァのことをすきだな、と思うのだった。

「元いたムラでは、スグリはなにしてたの?」
「花を編んだり、蔦を編んだり、女の人がやる仕事をたくさん」
「でも、あたしは、スグリがそういうこと教えてくれるの、うれしい」

アカネはちいさな拳を固め、そう力説してくれた。きっとずっとスグリより強いこの少女もまた、スグリへの好意をこうやって一生懸命に示そうとしてくれている。ちょっとだけ微笑んで、スグリは少女の髪をなでてやった。

「アカネのことも、大好きだよ」
「ほんと!?」

ぱあっと顔を輝かせたアカネが笑う。きらきらしたその笑顔に、スグリも嬉しくなった。…きっとその日アカネがそんなふうなことをシルヴァに言ったんだろう、ちょっとだけシルヴァは拗ねていたけれど。

12/01/08 Sun (07:29) ● その他

砂糖菓子の王冠 龍太郎へ

*本編の1314話を書く以前に書いたため、そんなような感じになっていますごめんね!
もし忍に気のありそうな人間が現れたらどうしますか?

「…どうする、っつってもなあ」
「なになに?何見てんの?」

手にした紙を奪われないように素早く折りたたんでポケットに突っ込みながら、龍太郎は能天気な顔をぶら下げた幼なじみをじと目で見た。

「お前、意外とモテるよな」
「お前ほどじゃねーよ」
「そりゃそうだろ」
「…デスヨネー」

とにかく友人の多い忍は、いつも友達だと思っていた人間から好意を寄せられることがほとんどだった。しかも性別を問わずモテる。幼なじみをやっていればよくわかるけれど、龍太郎に対してのそれのようにミーハーな部分がないぶん、忍が向けられる好意のほうが重いというのが龍太郎の感覚だった。

もっとも、今は芸能人と一般人という歴然とした差異があるのでそれには及ばないけれど。

「特に男にモテるよな」
「やめろよそういうこというの…女の子はみんなお前のほうに気ぃとられるに決まってんじゃん!このイケメン!」

どうやら自分以外の男の好意にはかなりの恐怖を感じるらしい忍が、わずかに身震いをしてから噛みついてきた。笑ってそれを受け流しながら、龍太郎はそっと窓の外に目をやった。

いつか、このままこうして何にも忍に伝えないままに、だれか忍のことを奪っていってしまうようなものが現れたとき。いったい自分はどうするのだろうかと、ほんとうは分かってしまっているはずの答えから目を逸らして、親友としての模範解答をいつまでも探している。
  


ToP



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