僕となまえ、アブラクサスはいつも3人で一緒にいた。僕は昔からなまえが好きだったしなまえも同じ気持ちだろう。特段、告白などはしていない。未完成な僕ら。それがいけなかったのか、最近なまえに悪い虫がついた。





「やあなまえ!今日も可愛いね!」
「おはようハリス。」

なまえの桜銀の髪がふわり、と揺れる。つい今の一瞬までリドルに向けられていた笑顔は今は別の男に向けられていた。男の名はハリス・ウィルソン。レイブンクローの7年生で、卒業前になまえと仲良くなる、あわよくば恋人にというのが狙いらしい。もちろん、なまえは彼の下心に微塵も気付いていない。元より博愛主義のなまえは人を疑うことをあまりしない。リドルは、なまえのそうゆう純粋さが好きではあったが今回は苛々する原因に他ならなかった。リドルの機嫌の悪さにいち早く気が付いたアブラクサスは苦笑いして「リドル、顔に出てる。」と彼の肩をぽんとたたいた。

「じゃあまた後で。」
「うん、バァイ。」

ハリスから解放されたなまえはふぅと溜息をついて再びリドルの隣に腰掛けた。

「モテモテだなあなまえは。」
「そんなんじゃないよ。」
「またまた。何を話していたんだい?」
「ホグズミードに一緒に行かないかって誘われたの。」
「―!」
「あ、でも断ったよ?だってアビィと…それにトムと一緒に行くもん。」

なまえがちらっとリドルを見て頬を染める。心なしかリドルが不機嫌そうな顔をしている気がしたが。

「それはそれは、嬉しいことだね、ねえリドル?」
「……。」
「だからその代わりに今夜8時に東の塔に来て欲しいって。」
「…は?」
「へぇ…行くの?」

なまえは不機嫌そうなリドルと、眉間に皺を寄せたアブラクサスを交互に見て、う、うんと応えた。どうして怒ってるんだろう―となまえはリドルをキョトンと見つめる。

「リドル、怒ってるの?」
「―怒ってない。」
「でもこっち見ないし。」
「…なまえ、お前は本当に馬鹿だな。」
「む。馬鹿って何よ。」

リドルのローブを引っ張り頬を膨らましているなまえは可愛い。可愛いがこれでほだされるわけにはいかない。リドルはジロッと赤い瞳でなまえを睨んでから溜息をつき、アブラクサスに先に戻れと一言言いなまえの腕を掴んで人気の少ない通路に連れて行った。

「なによぅ、何怒ってるのよぅ。」
「なまえ…お前本当にわかってるのか?」

掴まれた腕を振りほどきなまえはむすっとしてリドルを上目遣いで見つめる。負けじとリドルは冷たい視線を送り、低い声で呟いた。

「少しは人を疑うことを覚えろ。」
「…ハリスはいい人だよ?」
「どこがだ。下心しかないだろ、あいつはお前のことが好きなんだから。」
「そんなこと…」
「今日東の塔に行ってなんかみろ。襲われるぞ。」

襲われる―一瞬どういう意味かわからないような様子だったがすぐに頬を染めてたどたどしく口を開く。

「…なによ、リドルなんか毎日毎日女の子に差し入れもらったりラブレターもらったりしてるくせに…!」
「あれは向こうが勝手に来るだけで僕は喜んでない。」
「同じじゃない!リドルは―」

ムキになって声を荒げるなまえを壁に追いやりリドルは射ぬくような瞳でオレンジ色の瞳を見つめた。

「なまえ、お前は誰のものだ。」
「―…リドル…」
「そうだ。お前は僕だけ見ていればいいんだ。」
「…んっ…」

リドルは優しく、なまえの唇に自分のそれを重ねた。顔を離せば真っ赤になったなまえがいてリドルはニヤリと笑う。

「…わかったか?」
「わかった…///」

へなへなとその場に座り込むなまえに溜息をつき、リドルは手を差し伸べた。

「わかったなら今夜あいつに会いに行くなんてやめるんだね。」
「うん―。」
「ほら、寮に戻るぞ。」

リドルの手を取りなまえはゆっくりと立ち上がった。前を向いて歩く彼の表情は読み取れないが、今までもやもやしていた気持ちが一気に吹き飛んだ気分になり、なまえはニコニコ笑う。

「好き、リドル。大好き。」
「―…!!!」

後ろからポツリと聞こえてきた言葉にリドルは振り向き、目を丸くした。

「?リドル??」
「―………いや…///」

すぐにまた前を向いてしまったがなまえはリドルが耳まで赤くしているのに気が付き、心底幸せそうに微笑んだ。寮に戻るとアブラクサスが、二人が手を繋いでラブラブモードに入っていたものだから呆れた表情でだが喜ばしいと言わんばかりに「良かったな。」と声を掛けたらしい。



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