平和な日曜の午後、僕は暖かいのをいいことにいつも昼寝をする木の下で読書にふけていた。人も来ないし丁度いい場所。そうして和かな陽だまりにあてられているうちに眠たくなってきて、意識を手放しかけた時だった。

「リドル見つけたっ!」
「………なまえ?」

僕はなまえを見てぎょっとした。今日はハロウィンか…いや、それにしても。

「見て、可愛い?アビィがくれたの♪」
「…随分浮かれた格好だね。」
「えへへ〜…リドル可愛いって言ってくれるかなぁって思って恥ずかしかったけど着てきちゃった///」
「…(可愛い奴。)馬子にも衣装ってやつだな。」
「…なんか意味はわからないけど誉められてる気がしない。」

むくれたなまえの頬に手を伸ばすとぴくりと肩が揺れる。ほんのり染まった紅い頬は襲ってくれとでも言ってるようだ。僕はなまえの柔らかい唇に触れてから口付けた。

「…なまえ、酒臭い。」
「……気、気のせいだよ。」
「アバダケ「シャンパンを飲んできました。」

杖を向けて脅してやると、なまえはあっさり白状した。ああ、なんか変だと思った。僕に言われてならともかくアブラクサスがくれたものを自分から進んでなまえが着るわけないんだ。つまりこいつは。

「酔っぱらいに用はない。」
「リドルになくても私はあるの。」
「…そんな可愛い顔しても駄目だぞ。僕の言い付けを守らなかったなまえが悪い。自業自得だ。」

僕の言うことなどお構いなしに膝の上に乗ってきたなまえはうーんと唸る。唸りたいのはこっちだ。

「おかしいなー、アビィ、美味しいから少しだけなら酔わないよって、リドルにばれないから大丈夫って言ってたんだけど。」
「…飲んだとき何かされなかったのか。」
「何も…もう少しでラリるのになあ、とは言ってたけど。」

ほら見ろ、酔い潰してああだのこうだのしようとしてたんだあの変態は。アブラクサスがくれるものに手をつけるなとあれだけ言い聞かせてるのに僕がいないとすぐ誘惑に負ける。

「食い意地が張ったなまえにはアブラクサスがお似合いかもしれないな。」
「…リドル…」

不安そうな顔をするなまえ。少しは反省しろ。僕はなまえを無視してまた本を読もうとしたけどそれは彼女によって制された。顔を上げるとニコニコ笑っているなまえがいる。

「な「リドル、妬いてるの?私にはリドルだけだよ。」
「は…?」
「…私にはリドルしかいないの、リドルが大大大好き。だからそんなこと言わないでよぉ…」
「なまえ、わかったから…」

息がかかる程の距離になまえの顔がある。わざとか?わざとやってるのかなまえ。さっきから胸だってあたってるし、てゆうかまだ昼間だし、いや僕は別に今ここでしても構わないんだけど…

「なまえ、離れろ。」
「いや。」
「…いやって…」
「だって、リドル怒ってるもの。」
「…はあ。」

参った、なまえにはかなわない。結局、なんだかんだで僕はなまえに甘いんだ。そう、アブラクサスにも散々言われてる。

「なまえ、そろそろ離れないと僕限界なんだけど。」
「…何が?」
「…何がって、ナニ。」

視線をちらりと下に向けると、なまえも一緒に視線をずらす、と同時に真っ赤になって慌てて離れようとした彼女をがっちり捕まえて引き寄せてやった。

「リリリリリドル様、私用事を思い出しました…」
「へえ、僕より大事な用事があると?」
「いいいえ、とんでもない滅相もございません!リドルより大事な用事なんて…」
「あるわけないよね、なまえは僕が大好きだもんな。」
「リド…ひゃっ…」

白い首筋に舌を這わせれば跳ねる身体と一気に紅潮する頬が、可愛くて愛しくて。なおも逃れようとするなまえを逃げられないようにしっかり抱き寄せてから僕はにやりと笑った。

「なまえ、今日はハロウィンだよね。」
「…っ…う、うん…」
「trick or treat。」
「………」
「あれ?お菓子くれないの?」

一瞬きょとんとして、それからはっとしたように慌てるなまえに僕はもう一度口付けて、耳元で囁いた。

「悪戯、決定だな。」



Halloween、酒に酔う君に酔う僕


(そんな貴方に私は酔い痴れた。)







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