「どうした?****、何か元気ないな。」

先程キッチンから麦茶を持って来てから一度もしゃべらない****を、チョッパーが心配そうに覗きこむ。****はチョッパーににぱっと笑顔を作り、何でもないよと言って見せたが、ひとりになりたいと立ち上がり場所をうつした。

(やっぱり、サンジ君に嫌われてる…のかな、私。嫌いとまではいかなくても、良くは思われてないのかも…)

最近サンジに話しかけても心のこもってない返事しか返ってこないことに、****はやはり違和感を感じていた。

(ここに来たばかりの頃はにこにこしながら話してくれてたのに…嫌われるようなこと、知らない内にしちゃったのかな。)

サンジの態度は最初から素っ気なかったわけではない為、尚更最近のサンジの態度が寂しい。仲良くなれなくとも、せめて前のように普通に話せるようになれないかと何度も溜め息をついてしまう。
サンジに初めて逢った時、すごく綺麗な顔立ちをした人だという印象を受けた。一見女性のように華奢だが、実は細くてもたくましいこと、戦闘も強いこと。何を考えてるのかわからないように見えて実は一番気を配っている、みんなのことをきちんと考えている優しい人だということ。****は仲間になってから数ヶ月、ずっとサンジを見てきた。サンジを知る度に、どんどん好きになっていっていた。夜二人でキッチンで話す時間が何よりも楽しみだったが、最近ではサンジの態度が変わった為、なんとなくキッチンへ近寄ることが怖くなっていた。

(…私、サンジ君のことこんなに好きなんだなぁ…)

サンジを想うだけで胸が締め付けられる。****は泣きそうになってしまい、うつ向いた。そこに、昼寝から覚めたゾロが寝起きで不機嫌そうにしながらやってくる。

「おい、****。メシだとよ。」
「あ、ゾロっ…お、おはよう!今日の昼なんだろうねっ!」

泣いてたところを見られたくなくて、とっさに涙を拭い、笑顔を見せて誤魔化すようにキッチンへ向かう****のあとをゾロは訝しい顔で追う。二人がキッチンへ行くと既に全員揃っていて、いつものように騒がしい食卓が繰り広げられていた。ゾロはナミの隣が空いていたのでどかっと座り、****はサンジの向かいに座った。

「あの、サンジく「おいサンジ!肉はもうないのか!」
「あぁ?取り分はそれで終わりだ、てめぇには少し多く盛ったんだ、文句言うな!」
「なんだよ、ケチコック!」
「んだと、クソゴム!」

****がサンジに話しかけようとした時、丁度ルフィが毎度の如く肉をサンジにせがんだ為、二人のやりとりが始まった。しかし、いつもナミに怒鳴られて終了するのだ。****は微笑みながらその様子を見つめていた。

(なんか、サンジ君の向かいで食事取るの久しぶりかも…)

正面からサンジを見るのが久しいことのように感じ、嬉しそうに目を細める****をサンジが心配そうに覗きこんだ。

「どうした、****ちゃん。口に合わなかったかい?」
「あ、何でもないのっ。すごくおいしいよ!気にしないで。」

自分がぼーっとしていたことに頬を染めながら慌ててかぶりを振るが、ふと気が付くと、他のクルーは既に食事が終わっているようだった。この一味は食べるスピードがすさまじく速いと思う。それとも、自分が格別に遅いのだろうか。いつも最後まで食べていても、ナミやロビンが残ってくれているが今日はぽつんと残され、またサンジに嫌われるのではないかと****は冷や汗をかいた。

「ごめんね、サンジ君!!私食べるの遅くて…」
「ん?いいよ、ゆっくり食べな。慌てて食べると胃に悪いぜ。」

煙草に火をつけ、サンジは優しくそう言った。****はサンジが思いがけず優しい口調だったのでホッとし、残っている昼食を食べ始める。

「…サンジ君、あの、…サンジ君に聞きたいことがあるんだけど…いいかなあ。」
「ん?なに?」

サンジが聞き返すと****は寂し気な顔でサンジを見つめた。

「…サンジ君…私のこと、避けてるよね。ていうか…嫌われてるのかな、なんて。」
「…っ」

サンジはすぐ答えを返せず何も言えずに黙ってしまった。****はそんなサンジの様子を見て、やっぱり…と心の中でうなだれた。

「…あ、ごめんね。なんか変なこと聞いちゃった、忘れて?あ、そうだ。私用事思い出したから、部屋戻るね。」

作り笑顔で気まずそうに席を立ち、キッチンを出て行く****をサンジは引き止めることが出来なかった。頭をぐしゃぐしゃしながら煙草を加え、シンクに寄りかかる。

「あー…やっぱナミさんの言ったとおり誤解されてんな…。つーか、なんて答えりゃよかったんだ?…告っちまえばよかったのか…」

どうすればいいかわからず、****が残した昼食を見た。告白してしまえば誤解は解けるだろう。でも告白したからと言って彼女が自分の気持ちを受け入れてくれるかはわからない。

もし****に受け入れられなかった時、何もなかったように接することが果たして出来るだろうか?サンジは正直自信が無かった。

「…どうするかね、こりゃ。」






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