「おまえ、バカだろ。」
「……たまに言われます。」

鼻を、いや、頭を冷やそうと外に出てみたら丁度グレイがギルドに来たところだったらしい。なんて運が悪い。両鼻穴につっぺをしているところをぎょっとした顔で見られた挙げ句、ちゃっかり手放せずにいる例の雑誌まで見られてしまった。なぜかことの次第をしどろもどろに説明(言い訳)すると、溜め息をつかれてバカと言われた。おっしゃるとおり。

「こんな本に振り回されて、ほんと単純。」
「ちょ、あのね、振り回されてるわけじゃ、いや振り回されてるけど単純ってあんたね。」

いや、単純かやっぱり…

「あ、あの、この本にはあれとかそれに到るまでに平均3ヶ月とか書いてあるんだけど、やっぱり平均そんなもん?グレイはミラさんと…」
「あ?お、俺とミラは、」
「ああっいいの言わなくて!また鼻血出しちゃうから!」
「いや、自分で聞いたんだろ…つか鼻血って…」

俺仕事行く準備あるから行くわ、とそそくさ中に入って行ってしまったグレイはきっとあの様子だとこちら寄りね。(グレイってわかりやすい。)

「はー…いつまでも外に居られないし、仕方ない、気晴らしに仕事でも」
「なんの気晴らし??」
「ぎゃあ!」

ぎゃあ、って、ひどいなルーシィ化け物にあったみたいに、と苦笑いするのは、あれについて絡めて考えていた渦中の人。いつもながら突然音もなく現れるのは今日だけはやめてほしいんだけど。

「なに読んでるの?」
「よ、読んでない!読んでないから!」
「まあ大体察しはつくけど。」
「つ、つくの?!」
「僕らも明後日で半年かあ。どうするルーシィ?僕はもうそろそろ限界でさ、」

ロキの長くて綺麗な指が、あたしの頬をなぞらえて唇に辿り着いた。

「姫をなかせてめちゃくちゃにしたいくらいなんだけど。」

僕のことしか考えられなくなるようにね、そのまま、指を滑らせて耳元でいつもと違う、低くて色っぽい声で囁かれれば心臓がきゅうっと鳴き出し、異常に心拍数が上がっていく。なんて言えばいいかわからないけど、ドキドキしすぎて泣きたくなる。もうだめ、あたしロキに殺される、こんなのずるい。

いや、あ、ロキ、と言葉を選んでいると、唇に滑らせていた指で、滲んだ涙をすくってくれた。ロキの顔を見ると楽しくて仕方ないといった意地悪な笑みを浮かべていて、あたしばっかり余裕がないみたいなのがしゃくに障った。から、ロキの襟をぐいっと掴んでルーシィ、と言い終わる前に形の良い唇へあたしのそれを重ねてやった。

「……ばか。」

息がかかるくらいの至近距離で勝ち誇ったようにそう言うと、顔を真っ赤にして呆然としているあたしの恋人。(多分あたしも負けずに真っ赤だった。)仕返しをされる前に彼の前から逃げだそうとしたけどがっしり腕を掴まれて

「誘ったのは君だよルーシィ、」

覚悟してね?

と、今まで見たことがない官能的な笑みを浮かべられた。

ああ、あたし今日は心臓が止まって死んじゃうかもしれない。






彼と彼女の恋愛事情


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