恋する女子、もとい、お付き合いしている男女が一番盛り上がる時期は「なんといってもアレする前よね!」と男ならみんなイチコロ(古い)な笑顔で顔に似合わず目玉が飛び出そうな発言をしたミラさんに、あたしは飲んでいたトロピカルジュースを噴き出した。ちなみに、アレと伏せ字にしたのはあたしがそんなエロスな単語言えるだけの度胸がないからだったり。

なんでミラさんがそんなことを言ったかといえば、『ソーサラー読者の女子1000人にアンケート!これであなたも大人の階段のぼっちゃお!』という特集が掲載されている雑誌を広げているせいである。
週刊ソーサラー。表紙はよく見知った銀色の髪のお姉さま、ミラジェーン様。水色のビキニがよくお似合いです。だけどそんな清廉な顔に似合わない文字がどどんと大きくミラジェーンの身体を横断していた。横断って、あんた。と自分に突っ込む。

大人の階段…
それくらい、全く経験がないあたしにもどんな意味を指すのかわかる。

体験談だけに留まらず全20ページの大特集は、実践のテクニックまで丁寧に教えてくれていて、や、やあね。まだそんなところまで辿り着いてないけど…。ざっと概要よ、概要。

事の発端は、珍しく報酬をたっぷりもらえたあたしが小説を買いあさろうと本屋に行くと言い出したことから。カナが一緒にいく、と言うので2人で行ったら、あたしが推理小説を選定している知らない間に籠にいれられていた。珍しくエロスだらけなお気に入りのこの週刊誌に既にあたしは目が釘付けになっていた。

「は、初体験が12?!!!嘘でしょう!!!!」
「え、そう?普通じゃない?あたしは14だったなあー。」
「え、ええ〜?!!!!」
「カナ年上の人と付き合ってたから。」
「あ、相手はおいくつでしたの?」
「ルーシィ、なんか口調変わってるけど。」


だ、だって14歳よ14歳。その頃のわたしなんて屋敷で毎日英才教育受けてたし一人ぽっちで…っていいけどそんなことはもう。てゆうか12歳ってなに?
でもカナはなんとなくわかる、って言ったら失礼かしら。でもおっぱいおっきいし。…おっぱいの大きさならあたしも負けてないはず。

いやいや、わたしが気になるのはそこじゃなくて、年上ってとこ。な、何歳くらいだったのか気になるとこよね。決して、わたしが年下であいつが年上だから、とかは関係ないわ。断じてないわよ。

「確か29歳よね?」
「当時ね。懐かしいわー。」

29歳?15も下のカナに?!

「………ロ、ロリコン?!!!」
「まあ、そうなるわね。」

けらけらと笑うカナにわたしは目を点にした。だってそんな年上の人となんて考えられない。年齢不詳だけど、多分見た目4つくらい上のあいつとだって考えるのが恥ずかしすぎて…いやいや、考えるな自分。ま、まだ早いでしょうよ。あれ、でももう半年よね……………そ、そうね、この本にあるように、そろそろでぃーぷきすってやつくらいは…でぃーぷきす…でぃーぷって、でぃーぷ…そうよね、舌を絡め合う、あ、あれよね、つまりそう…や、やば、頭に血が、鼻に血が集まってきた。それでもあたしは世間の女子がどんな経験をしてるのか気になって、次のページをぱらっと捲る。そこにはあれへの期間が円グラフで書かれていた。そしてその下には平均期間。

「彼との初めてのあれまで平均3ヶ月………さ、さ、3ヶ月?!!!」
「へー、よく3ヶ月も我慢できるわね。あたし無理。」
「が、がまん…。」
「でもまあ王道よね、3ヶ月って。」
「お、王道なんですか?」
「ルーシィはロキと付き合いだしてもう半年よね。」
「…ミラさん、よく覚えてますね。」
「ふふ、だって面白いから。」

面白い?
覚えてる理由が面白いってどう解釈をすべきなのかしら。

「でもそんなに驚くことないじゃない。半年付き合ってたらあなたもロキともう「ミラさん!!!!!!」

顔を真っ赤にして慌てふためいているだろうわたしをぽかんとした顔でミラさんが見つめる。そんな顔も綺麗。じゃなくて!

「…もしかしてルーシィ、ロキとはまだ…」
「………………」
「……………。」
「………嘘でしょ…」

ミラさんとカナが驚くのも無理はない。だって相手はあのロキだもの。女と見れば口説き落とす老人でも子供でもマダムでも、誰にでも優しい(女限定)あのロキだものね。わたしもまさかロキがこんなに我慢強いなんて知らなかった。我慢強くなければ、あたしは今頃高心拍でお陀仏だったと思う。

「まあ、いいんじゃない?ロキに任せておけば。きっとルーシィのペースに合わせてくれてるのよ。」
「そうだねえ。ま、がんばんなルーシィ。」
「そ、そうね…」

そう、ロキに任せておけば、そのうち自然にこの本にあるように、ロキが優しくあたしに触れて自然に自然に……………


「ちょ、ルーシィ大丈夫?!」


ああ、、想像力が豊かすぎなのも困りものね。小説家を目指す者としては100点、なんつて。

鼻から血が滴り落ちるあたしの脳裏には、シャツをはだけた姿のロキが実に官能的に笑っていた。





そんな妄想すら


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