「…ん…おいしい……!」

目の前にある色々な種類のクッキーの内一枚を試食し、ルーシィは満足そうに笑みを零す。早速ラッピングをしようと、くるっと振り向けばオレンジ色の髪の青年がくすくす笑いながらソファーに座っていた。その小さな笑い声にルーシィはぷぅと頬を膨らませる。いつの間に居たんだろう。

「もお!また呼んでないのに勝手に出てきたのね。星霊王に怒られても知らないわよ?」
「大丈夫だよ、別に何日もこっちに居るわけじゃないんだからさ。」
「それにしたって…。」
「それよりも、ルーシィ。」

呆れたような、困ったような、それでいて嬉しいような顔のルーシィにロキは立ち上がってゆっくりと近づきくいっと彼女の小さな顎を指で上げる。ミルクブラウン色の瞳が大きく揺れ、頬は心なしか朱に染まっていた。ななな、なによと視線を泳がせながらルーシィはロキの手を掴む。

「随分美味しそうなもの、食べてるね?」
「こ、これは…っミラさんとかジュビアとか…ナツ、とか…グレイとか…とにかく皆にあげるもので…!」
「…ふーん?皆に、ね?」

ロキの長い指がルーシィの首筋をなぞれば彼女の体はぴくっと震える。声色は優しいし、表情も柔らかいが目が怖い。彼が何かに怒っている(不満を感じている)ような気がし、首を傾げた。それから少し考えこみ、思いついたようにクッキーを差し出す。

「ロキも食べる?クッキー、食べたいんでしょ?」
「あ、うん…って、え?」
「なんか食べたそうに見てたから。」

別に物欲しそうに見ていたつもりはないが、ルーシィにはそう見えたらしい。差し出されたクッキーを食べるとさくっという音と共に程よい甘さが口の中に拡がった。

「ナツがね、ルーシィは絶対料理出来ないだろって言うからね、料理くらいできるって言ってやったの。そしたら皆の分も作ることになって。あいつってば余計なことしか言わないんだからいやんなっちゃう。」

ロキから離れてぶーぶー不貞腐れながらクッキーを袋に詰めていくルーシィの手を掴み、ロキは自分の方へ引き寄せた。衝動的に彼女を抱き寄せたのは嫉妬からくるものだと自覚している。ルーシィが自分の知らないところでナツやグレイと楽しく会話していたのかと考えると、それはどうしようもないことだとしてもだからこそ寂しく、彼女を独り占めしていたいという気持ちがロキの心を埋めつくしていた。

「ロキ……?」
「…もっと欲しい。」
「?クッキーならまだ…」

ルーシィの言葉を遮って、ロキは彼女の柔らかい唇にそれを重ねる。顔を離し、頬を朱に染めて少し上目遣いで自分を見つめているルーシィの額にチュッとリップ音をたててキスを落とした。額を押さえて余計に真っ赤になっていく彼女を見てなんだか微笑ましい気持ちになる。そうしてふっと笑ってソファーに腰掛け、何事もなかったように本を読み始めるそんな余裕のある彼をルーシィは少し羨ましく感じるが、こうして自分をドキドキさせて楽しそうにしている彼が嫌いじゃなかった。

「一口だけ、ね?」

ロキに聞こえない声でそう呟くも実は彼の中の本能というスイッチがとっくに入っていることをルーシィは知らない。

(大丈夫、一口で全部いただくよ。)



最初は一口だけのお約束


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