声はいつまで覚えていられるんだろう。
顔は?雰囲気は?温もりは?
君を失うのが怖い、なんて言えば君はどう思うんだろう。




「どうしたの、それ??」
「あ、これ?綺麗でしょ、ミラさんにもらったの。」

ご機嫌なルーシィと違いロキは少し憂鬱そうな顔で彼女を見つめた。よく見知った花を彼女は持っている。

「……ルーシィ……」
「?なあに?」
「ちょっと、来て。」
「??」

ロキに呼ばれるまま彼に近づくと、腕の中にすっぽりとおさめられる。いつもと違う彼の鼓動。何かに怯えているような、そんな音。ルーシィの香りが鼻腔に届くが今日は彼が切ない表情を浮かべる原因になる香りが一つあった。空間に漂う強い花の香りが不安を煽る。

「…僕さ、歳を取らないんだ。」
「?うん、星霊だもんね。」
「でもルーシィは人間だ。」
「そうね。」
「だから、歳を取る。」

ぎゅうっと抱きしめる力が強まりルーシィは窮屈さから眉間に皺を寄せた。だけど、彼の心が透けて見えるようで―いつまでも彼の中に植え付けられた『死』を癒すことが出来ない自分に苛立ちと淋しさを感じ、非力だとこういうときに思い知らされてしまう。

―あたしがそう感じていることを、きっとロキも知っている。

ロキの背に手をまわし、彼の温かさを確かめるように静かに目を閉じた。こんなに温かいのに、彼は人間ではなく星霊だ。だがルーシィ自身、それを淋しいと思ったことは一度もない。彼は呼べばいつまでも来てくれるしたくさんの愛情をくれる。星霊が故に、人間同士では得られない絆もあるとルーシィは感じていたから。だけどロキは、もしかしたらそうじゃなかったのだろうか。もしかしたらずっと淋しさを抱えていたのかもしれない―人間と星霊という越えることの出来ない壁に。だって、どんなに一緒にいても、自分は先に逝く。それは人間である自分と星霊である彼の間に、待たずともやってくる現実だ。

「僕も人間に生まれたかった。」

―そうしたら、君と一緒に歳を重ねて、同じものを見て…こんなに寂しい想い、感じることも無かったのに。

「ロキ…。」
「ルーシィ…っ…僕…怖いんだ…」

―愛を知ってしまったから、君を失ってしまった世界を見ることが出来ないんじゃないかと、君を失ってしまうのが怖い。

「…」
「……怖いんだ……」

頬を伝う涙を白い指ですっと撫でながら何度も何度も彼の名を呼ぶ。その声に顔を上げるとルーシィが優しく笑っていた。飾られた花に目をむけて、ねえロキ、と問い掛ける。

「シオンの花の花言葉、知ってる?」
「……うん。」
『君を忘れない。』

同時に声に出した花言葉に、2人は顔を見合わせ笑みを浮かべた。ルーシィは花を一輪手にし、それを見つめるとロキに差し出す。

「いつか、あたしが居なくなっても…あたしはロキを忘れないよ。」
「……ルーシィ…」
「大丈夫。あたしが、ロキのこと忘れないから。」

―あたしが忘れない限り、ロキはあたしを忘れない、淋しくない。

「大好きよ、ロキ。」

そう言って笑うルーシィの顔は、幸せそうでとっても綺麗だった。
部屋に咲き誇るシオンのように。

(僕が君を忘れない限り、君も僕を忘れない。)





風に揺れるシオン


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