「あの、リオン様?」
「なんだ。」
「……いえ……あの……先程からそんなに見られていたらその……恥ずかしいですわ…///」

顔を真っ赤にしたシェリーが手を止めて俯いてそう呟いた。彼女の手元には編みかけの柔らかそうな毛糸のマフラーが広がっている。ソファに寝そべっているリオンは、自分の傍にちょこんと腰掛けて懸命に編み物をしているシェリーを見ているのが楽しくてつい見入ってしまっていた。そんな楽しみの対象である彼女が、こんなにそそるような表情をしているのだからリオンがおとなしくしているわけがない。くるくるした桜色の髪を手に取り、優しくそれに口付ける彼にシェリーは益々顔を真っ赤にした。

「リオン、様…///ずるい、です…」
「…何がだ?」
「だって…私のこと、こんなにドキドキさせるなんて…ずるいですわ…///」

うぅ…と唸り、自分の方を向くシェリーの頭ごとリオンは思わず片手で引き寄せ、潤う唇にそれを重ねる。名残惜しく顔を離せば、目を潤ませ泣きそうな顔の、理性を崩したいのかという程可愛いシェリー。


「…///」
「シェリー、そんな顔してたら本当にこのまま襲うぞ。」
「っ…だ、だって…///」
「それとも、もうスイッチが入ったか?」

にやっと笑いシェリーの頬に触れるリオン。それと同時にシェリーの肩がびくっと震える。リオンは小さく溜息をつき、優しく彼女の頭を撫でた。


「冗談だ。昼間から盛る程馬鹿じゃない。それ、完成させたいんだろ?続けろよ。」
「…はい///」

―リオン様はそういう人。思慮深くていつだって頭がきれて、だからギルドのマスターからも信頼が厚い。


だけど…


「…シェリー??」

リオンはコーヒーでも入れようと思い立ちあがると、服の裾をぎゅっと掴まれたので不思議に思い下を向いた。視界にはこちらは向いていないが耳まで真っ赤にしたシェリーが映る。

「…リ、リオン様…///」
「??どうした、具合でも悪いか?」
「………私…変なんです…」
「変?」
「…今すぐ…リオン様を感じたい…///」「…!!」

リオンは目を見開きシェリーを見つめるが、一方の彼女は、なんてことを言ってしまったんだとばかりに一気に身体中を紅くさせ、慌ててリオンの服から手を離した。

「私…///は、はしたないこと…ごめんなさいリオン様!!嫌いにならないでくださっ…きゃっ!」

今にも泣きそうな顔をしているシェリーを、リオンはふわっと抱き上げてソファに座らせる。額を合わせ、至近距離でぼそっと囁けばシェリーの大きな瞳がまあるく開かれた。

「……遠慮しなくていいんだな?」
「…リオ、ン様…んんっ…」

もう彼を止める術を知らないシェリーに、リオンは深く口付けていく。甘く溶けてしまいそうな、夢を見ているかのような感覚に、シェリーは遠い昔の記憶を重ねていた。懐かしい、温かい大切な人がくれたものを、今彼女に与えているのも、これから与えていくのもリオン以外には考えられない。深く沈むソファーの上で、シェリーは自分がようやく安堵の場所を見つけられたのだとぼんやりと思った。



(貴方がくれる愛情はまるで夢を見ているかのように優しい、それは幼子にとっての子守唄のよう。)


優しい子守唄


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