窓の外をじっと見つめながら、ミーアが尻尾をゆらゆらと揺らしている。寒いのか、猫の耳は垂れ下がってしまっている。
「ミーア。そんな窓際にいたら寒いだろう。暖炉のそばにおいで」
「でも、ヴィニー、雪が降ってます」
「ここからでも、見られるだろう?」
ミーアがしぶしぶ俺のほうへ来た。そして、俺の膝の上に腰を下ろし、見上げてくる。
「雪って、寒いのですか?」
「そうだね。冷たいし、しもやけと言って、手や足が腫れてしまうこともある」
「でも私、触ってみたいです……」
去年も同じことを言っていたな、と思う。
ミーアをはじめ、ヒューマノイドは脳にICチップを埋め込んでしまっているので、知能は蓄積することは可能だがスタート地点が実に幼い。たぶん、ミーアの初期知能は小学生前半程度だっただろう。
そのほうが、買う側にとっても研究所にとっても便利なのだ。研究所としては余計な知識などを埋め込むと時間と金がかかるし、買った側としてはたいていが奴隷や慰み者にする目的なので無駄に頭がいいのは面倒だ。
もちろん俺はミーアにそんなことをしないが、便利、というか都合がいいというのは同じだ。
というのもそれは、幼いミーアに自分が知識を与え、成長させていくという楽しみのためである。どんどん言葉を覚え、賢くなっていくミーアを見るのはとても楽しい。ある種、子育てに通ずるものがあるが、もちろん俺のミーアを見る目は保護者なんて生ぬるいものではない。
「ミーア」
「あ」
猫耳にそっとキスを落とす。それから、暖かい暖炉のそばであるのをいいことに、ミーアの衣服を乱してお楽しみに突入する。
ミーアが再びここに来てから、二度目の冬だ。いろいろあったが、楽しいことも少し悲しいこともすべて、大事な思い出になっている。俺といたことを思い出してくれたミーアは、今も変わらず俺に笑顔を向け、信頼してくれている。
「あ、あ、ヴィニー……」
「いい子だ」
ところで、ヒューマノイドというものも、成長する。
それは、知能的な成長とは違い、身体的な成長のことだ。ミーアは戦争孤児で片腕を無くしていたから、そこだけは義手だが、ほかは普通の人間と変わりない。なので、大きくなる。
初めてミーアを見たときは十三歳くらいの見た目だったのが、今ではすっかり大人になりかけている。
ことを終え、くたっとなったミーアをベッドに寝かせると、俺は仕事が残っているので軽くキスをして部屋を出ようとした。すると、ミーアが呟いた。
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