すずの歯が、僕の鎖骨上の皮膚に思いっきり噛み付いたのだ。八重歯がチャームポイントなだけに、かなり、かなり痛い。
顔を離した彼女は、怒ったような戸惑ったような、とにかくむくれていた。
「ごめんね、でもいつもりっくんがやってるみたいにしてみたのに……」
「……それは、噛み付くんじゃなくて、こうね」
「きゃ……」
すずの首筋からくちびるを離すと、きれいに咲いた鬱血痕。
「うわぁ、どうやるの?」
「……こうやって、くちびるつけて、吸って……」
……どうして僕は、キスマークの付け方なんかレクチャーしているんだ?
「すず、続きいい?」
「んあっ」
かぷ、と耳を甘く食むとすずの肩がピクンと浮いた。よし、このまま流せるぞ……
「だめーぇ! 今日はあたしがやるんだってばぁ!」
「……もうムリ。我慢できない」
「りっくんのバカ! 堪え性なし!」
「……」
言いたい放題言いやがって。
すずじゃなかったら殴り飛ばして身ぐるみ剥いでいるところだ。すずがすずで良かったね。
「なんで今日はすずがしたいの?」
「……だって、」
だって、と彼女の口からこぼれた理由は、あまりに可愛らしいものだった。
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