バイバイマイシスター 3


「未央のことを好きだって言えないのに、未央にはとなりにいてほしいし、いなくなるとすげえさみしいし、こういうのは俺が結婚しても未央が結婚しても変わらないと思ってたけど、そうじゃないんだなって思った。未央にとなりにいてもらうためには、俺が……、俺がそう望まなくちゃいけないんだって気づいた」
 嗚咽が激しくなる。そっと拘束を緩めると、未央ちゃんはぼろぼろと涙をこぼしていた。
 ごめんな、泣かせたりして、傷つけて。そんな気持ちを込めて、俺は俺を見つめる未央ちゃんにそっとキスをした。
「…………な、なんか、今更って感じで、照れくさいな」
「……」
「未央、顔真っ赤」
「う、うるさいっ」
 泣きながら顔を真っ赤にする未央ちゃんは、かわいい。今まで女の子に抱いてきた「好き」とは全然違う気持ち、だから俺は彼女に軽々しく好きだとは言えないと思うけど、でもたぶんこれは。
 もう一度抱きしめて、俺は未央ちゃんの髪の毛に鼻を埋める。シャンプーのいい匂いがする……あ。
「わ、渉くん、あの」
「ワリィ……ここ三年ほどご無沙汰だったもんで……」
 俺は慌てて未央ちゃんから離れて、両手を上げて苦笑いした。顔を赤くしている未央ちゃんからなるべく目をそらすことにより、興奮を鎮めることに成功した。
「……渉くんなら、いいよ?」
「未央、あんまり自分を安売りすんな」
「だって、渉くんのために取っといたようなものだよ」
「へ?」
「……だから、その……私まだ……」
 恥ずかしげに俯く未央ちゃんに、再び興奮が襲ってくる。脳内で理性と欲望がせめぎあい、結局欲望が勝鬨の声を上げかけたのを理性が殴って鎮めた。
「いや、今日はこれだけ」
「んっ」
 両手を上げたままキスをして、俺はあることに気づいて腕時計を見た。……やっぱり。終電、なくなってる……。

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