バイバイマイシスター 2


「好き」
「……」
「渉くんが、他の人を好きでもいいよ、何度だって告白するし、絶対諦めない」
「……」
「だから……」
 嗚咽が聞こえた。俺はたまらなくなって、未央ちゃんの腕を振りほどいた。
「未央」
「……渉くん?」
「ごめん」
「……」
 未央ちゃんの瞳から、涙が一筋こぼれ落ちる。それをスーツの袖で拭い、俺は正面から未央ちゃんを抱きしめた。
「わっ……」
「ごめんな、未央」
「何……」
「ごめん」
「……謝られたって、絶対諦めないからね」
 未央ちゃんをきつく抱きしめる。顔なんか見せられない。今絶対、史上最高に情けない顔をしている。最悪だろ俺、女の子に二回も告白させて、泣かせて。ああ、もう! 俺ってほんとにへたれ!
「ごめん、ほんとは、知ってたんだ」
「……」
「未央が俺のこと好きなこと。知ってた」
 俺は最低な男だ。未央ちゃんのことを、好きだとも言えないし、だからと言って離すこともできない。なんだろう、俺が経験してきた恋とは何もかもが違う。
「……たぶん、好きとは言えない。未央のことを女の子だとは思うけど、恋と言うには少し違う」
 自分でも分かるくらいに身勝手な言い分で、声が震えてしまう。
「未央の大学に行った」
「え」
「男と喋ってて、仲良さそうだったから、話しかけられずに帰ってきた。そのときすげえなんかむかついて、それで俺は前から、未央が男といるのが気に食わないんだったよなって気づいた」
 未央とこの街で再会したときに、未央は男に話しかけられていて、あのときもちょっとむっとした記憶がある。でも、あのときの俺は何も気づいちゃいなかった。

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