バイバイマイシスター 1


 たっぷり残業をして深夜に近い時間、コンビニで今夜の飯を調達した帰り、自然とため息が出る。
 未央ちゃんのことが必要なのだと気づいたまではいいが、その先どうしたらいいのかまるで分からない。未央ちゃんは俺なんか見限って新しい男とよろしくやってるかもしれない。
 未央ちゃんが、俺以外の男の世話をする。そう思うだけではらわたが煮えくり返りそうだ。未央ちゃんは俺のことが好きなんだ。図々しくもそう言いたくなる。まともにふりもしなかったくせに、ほんとうに図々しい。
 マンションのオートロックを抜けて、エレベーターに乗る。チン、と軽快な音がして、俺の部屋のある階に着く。ドアが等間隔で並んでいる廊下に、誰かがしゃがみ込んでいた。しかも、俺の部屋のドアの前に。……おいおい、誰だよ……。
「渉くん?」
「へっ?」
 誰かが立ち上がる。それは、未央ちゃんだった。俺は思わず動揺して、提げていたコンビニ袋を落としてしまう。慌てて拾い上げ、俺は未央ちゃんのそばに寄った。
「いつから待ってたんだよ」
「七時くらいかな?」
 こてんと首を傾げる未央ちゃんに、脱力する。いつもと変わらない態度に、安心する。それと同時に、疑惑が襲う。俺のことなんてどうでもよくなったから、この態度なのか?
「こんな夜中に危ないだろ……まあ、入れよ」
「うん」
 靴を脱いで廊下の電気をつけると、背後から抱きつかれた。思わず立ちすくむ。背後を振り返ろうと思った瞬間、未央ちゃんが言う。

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