最後の恋を終わらせない 5


 月曜日、有休を使って会社を休んだ。未央ちゃんの通う大学まで行って、待ち伏せをしていた。普段から人の出入りが多いので不審には思われないだろうと思ったが、俺があまりにも長々突っ立っているので警備員に胡乱げな目で見られたが、人待ちだというと渋々納得してくれた。
 と、遠くから笑い声が響いた。その声には嫌というほど聞き覚えがあって、そっと構内を覗くと、未央ちゃんと男が談笑していた。笑っている未央ちゃんの手のひらは、男の腕を軽く握っている。
 …………。
 そのまま、チャイムに促されるように、未央ちゃんと男は館内に入ってしまった。俺は、静かに大学をあとにした。警備員に、訝しげな視線を投げかけられながら。
「……っくそ」
 なんだかむかむかする。
 いったい俺は、何のために有休割いてまでわざわざ学校まで来たりしたんだろう?
 マンションに戻って、まだ日の高いうちから酒を飲む。むかつく。なんでだ?
 未央ちゃんが俺を好きだと言ったその口で、男の話に笑っている。しかも、ボディタッチまでして。むかむかする。未央ちゃんが好きなのは俺じゃないわけ? もう俺を見限ってあの男を好きになったの?
 むかむかする。
 ちくりと痛んだ胸に、俺は気づいていた。……好きだとか好きじゃないだとか、そういう話じゃないことも分かっていた。
 未央ちゃんの恋をこの手で終わらせてしまったけれど、俺は自分の恋は絶対に終わらせない。自分勝手でもなんでも、俺は絶対に、このままでは終われない。

 
 END

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