最後の恋を終わらせない 2


「……ハァ」
「ため息ばっかついてねーで、さっさと仕事しろ」
「はいはい……」
 仕事に身が入らない。イライラした野村に叱咤され、のろのろとキーボードを打つ。俺のほうがイライラしてんだよ……、と言い返す気力もない。
 今日で一週間が経つ。未央ちゃんはほんとうに来なくなった。それが集中力の妨げになっていた。もう一生彼女の手料理を食べることはないのだろうか。
 冗談だよ、と笑いながらうちに来て、夕食をつくってくれているだろう、という甘い考えを持っていた。深夜にカップ麺をコンビニに買いに行ったのは、久しぶりのことだった。
「……」
「おい」
「……何」
「終わったら飲み行くぞ」
「ええ……? 珍しいね、お前が誘うなんて」
「……はやく仕事終わらせろ」
「はいよー」
 久しぶりに野村と飲み、ということで、俺は少し浮かれて仕事を片付けた。野村を見ると、仕事を終えて片付けをしている。
「行くか」
「ほいほーい」
 精一杯明るい、いつもの俺を演じる。軽くて、女好きで、へらへらしてて不真面目で。こんな奴のどこを、未央ちゃんは好きになってくれたのだろう。
 野村に連れてこられたのは、半地下にあるバーだった。女子が好きそう、と思いながら、俺居酒屋でよかったんだけどな、なんて安上がりなことも思う。カウンターのスツールに腰かけ、とりあえずギネスを注文する。出てきたビールをぐいっと呷った野村が、口を開く。

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