最後の恋を終わらせない 1
気づかないふりをしてきた。
俺は鈍いらしいし自分でも多少自覚もあるから、最初は気づかなかった。気づいたのは、ほんとうに最近のことだ。俺のあとをちょこちょこついてくる妹分が、俺のことを好きだと気づいたのは。
「合鍵も置いとく。ばいばい」
俺は何も言えなかった。いつかはこんな日がくると思ってはいたけど、俺はぬるま湯に浸かっていたかったのだ。恋人未満の関係の、妹分。
部屋のドアが閉まる前に、鼻をすする音が聞こえた。俺が泣かせたんだ。
「……」
新聞をたたんで立ち上がり、テーブルに置かれた合鍵を手に取る。握りしめていたのか、ほんのり温かかった。
俺に、言うのに、どれくらいの勇気を要したのだろう。いつも毒舌で素直じゃない彼女の精一杯の告白に、俺は沈黙と言うかたちで拒否をした。
未央ちゃんのことが嫌いなわけじゃない。好きなほうだ。しかし、恋愛という観点から見ると、果たして俺は未央ちゃんのことが好きなのか、それが分からない。だから何も言えなかった。
たぶん、未央ちゃんを傷つけたんだろうな……。
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