2

「なんで二個も弁当箱あんの? お前一個じゃ足んないわけ?」
「いや……青子の分」
「青子? あー、妹?」

 こくり、と頷くと、従兄はふうん、と息を吐き出した。

「健気だねえ」
「……」

 否定はしない。青子の世話をするのが好きな自分は嫌いではないが、若干報われないところもある気がするからだ。いや、青子の満面の笑顔でおいしーと言われればじゅうぶんではないか、そう思い直してみる。
 明日の弁当のおかず、何にしようか、などと考えていると、調理台に置いてあった、マナーモードにしてある携帯が震えた。

「……」

 坂本春菜。と表示されている。従兄の手前、出ようか出まいか非常に迷ったが、通話ボタンを押す。

「……もしもし」
「あーミキくん? 青子知らない?」
「は?」
「家にいないのよ」
「青子が?」

 おかしい。今日も駅前で青子と遊んだミキは、六時過ぎに青子のマンションまで彼女を送っていった。その際特に、どこかに出かけるなどのことは言っていなかったし、今はもう夜の七時だ。

「コンビニとかじゃないすか」
「それが……制服もローファーも鞄もないの。家に帰ってきてないってことでしょう、これって」

 ますますおかしい。ミキは、首をかしげて、とりあえず青子を探しに行くことにした。電話を切って、外に出ようとすると、従兄が話しかけてくる。

「青子ちゃんがどうかしたの?」
「家に帰ってねえらしい」
「……まさか今の電話」
「うん、そう」

 従兄に何か言われる前に、家を出る。そして高校のほうまで向かった。変なことに巻き込まれていなければいいが……と思いつつ、ミキは高校の近所の公園に入った。なかなか広い公園で、遊具があるスペースに行くと、案外簡単にそこにいた。

prev | list | next