「いや……青子の分」
「青子? あー、妹?」
こくり、と頷くと、従兄はふうん、と息を吐き出した。
「健気だねえ」
「……」
否定はしない。青子の世話をするのが好きな自分は嫌いではないが、若干報われないところもある気がするからだ。いや、青子の満面の笑顔でおいしーと言われればじゅうぶんではないか、そう思い直してみる。
明日の弁当のおかず、何にしようか、などと考えていると、調理台に置いてあった、マナーモードにしてある携帯が震えた。
「……」
坂本春菜。と表示されている。従兄の手前、出ようか出まいか非常に迷ったが、通話ボタンを押す。
「……もしもし」
「あーミキくん? 青子知らない?」
「は?」
「家にいないのよ」
「青子が?」
おかしい。今日も駅前で青子と遊んだミキは、六時過ぎに青子のマンションまで彼女を送っていった。その際特に、どこかに出かけるなどのことは言っていなかったし、今はもう夜の七時だ。
「コンビニとかじゃないすか」
「それが……制服もローファーも鞄もないの。家に帰ってきてないってことでしょう、これって」
ますますおかしい。ミキは、首をかしげて、とりあえず青子を探しに行くことにした。電話を切って、外に出ようとすると、従兄が話しかけてくる。
「青子ちゃんがどうかしたの?」
「家に帰ってねえらしい」
「……まさか今の電話」
「うん、そう」
従兄に何か言われる前に、家を出る。そして高校のほうまで向かった。変なことに巻き込まれていなければいいが……と思いつつ、ミキは高校の近所の公園に入った。なかなか広い公園で、遊具があるスペースに行くと、案外簡単にそこにいた。
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