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「お前、もう帰れ」
「え、なんでー」
「飯食ったろ」
「ええー、ご飯食べにきたんじゃないよー」
「いいから帰れ」

 俺が何かしてしまう前に、という言葉は飲み込んだ。青子は不満そうに唇を尖らせて、いやいやと首を振った。

「やーだー」
「頼むから」
「なんでー、帰んないー」
「青子、わがまま言うな」

 ぶう、と相変わらず口を尖らせたままの青子は、再びベッドに横になる。帰りません、絶対、という意思表示だろうが、その体勢がまずいのだ。なんせ、またワンピースの裾がめくれてパンツが見えている。枕を抱っこした青子は、寝返りを打ったりごろごろと転がったりしながら反抗している。

「……」
「なんでミキちゃんそんな冷たいのー」
「お前のためを思ってだな……」
「あっ、おトイレ貸して!」
「……ドア出て左……」

 ばたばたと駆けていく青子を尻目に、ミキはなんとか性欲を沈めようとがんばった。結果失敗に終わる。ドア付近にしゃがみこみ、ミキは呪文を唱えはじめた。

「青子は何も考えてない、青子は何も考えてない、青子は何も……」

 暗示のようなものである。
 そして青子がトイレから戻ってきて、体育座りをしてぼそぼそと呟いているミキを発見し、また頭を撫でた。たったそれだけで、ミキは黙りこくって呪文も意味を成さなくなった。

「青子」
「なに? ってか、ミキちゃんおっきいのにそんなしゃがんでたらウケるよ」
「ウケは狙ってねぇよ。あのな」
「なんかさー、この部屋、ミキちゃん! っていう感じするよねー」

 人の話を聞け。ミキは、何だそれはと思い、青子を見た。

「ミキちゃんのにおいがするー」

 もう限界だった。

「ミキちゃん? わあっ」

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