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 ぐっと腕を掴まれて、青子が起き上がる。パンツが見えなくなるが、太ももが際どい。

「何?」
「いや、あの……」
「ミキちゃんって、こんないいとこに一人暮らししてるんだねー」
「いや、一応従兄と住んでるけど」
「従兄さん、どこ?」
「彼女のとこ」
「あ、ミキちゃんのお部屋見たいなー」

 話を聞け。
 ミキは仕方なく、青子を自分の部屋に案内した。とは言っても、限りなく自分の部屋に近い、従兄の部屋なのだが。もうほとんど従兄の荷物はないし、ミキも自由に使っているが、一応ここは従兄の寝室であるのだ。

「わ、超きれい!」
「……」
「気持ちよさそー!」
「……!」

 ぼふっと、青子がベッドにダイブした。もうミキは自分を抑えることができないと判断し、慌てて寝室の外に出て、ドアに寄りかかった。心臓がぎくりと引きつっていやな鼓動を刻んでいる。

「ミキちゃーん、ミキちゃん?」

 どんどんとドアを叩く青子に根負けし、すぐに部屋に戻る。しかし、どう振舞っていいのか、まったく分からないで、ドアのところに立ち尽くす。

「あの、青子」
「ん?」
「ベッドに寝転ぶな」
「なんで?」
「……」

 襲いたくなるからだ、とは口が裂けても言えない。以前の自分なら、すぐに相手に覆いかぶさっていただろうな、と遠い目をする。以前の、というより、青子が特殊すぎるのだ。ベッドにダイブって、狙っているのか? いや、青子だ、そんなことを考えているはずがない。再三、再七くらいの青子の発言で学習した、青子はなんにも考えちゃいない、ということを。
 ミキはため息をついてドアを背にずるずるとしゃがみこんだ。

「ミキちゃんどしたの?」
「……」

 青子の手が、ミキの頭に触れた。それだけで、血気盛んな男子高校生であるミキの性欲はぐっと存在を主張し始めた。青子はそんなことには微塵も気づかず、ミキの頭を撫で続けている。
 ミキは、がばっと顔を上げ、青子の両肩を掴んだ。

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