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「一応、学校の先生……ではないけど、そんな感じだし、ばれるとやばいから」
「なんでやばいの?」
「青ちゃん、あのね」
「青子」

 ふと、呼ばれて青子が図書室の入り口を見ると、ミキが立っていた。近づいてきたミキは、司書室の異常に気がつく。

「秀哉」
「あ、ども」
「は? 青子、探した」
「私も探してたんだよ!」
「ああ?」

 どうやらすれ違っていたらしい。そう悟ったミキは、がしっと青子の腕を掴んで図書室の出口に向かう。その背中に、秀哉がなおも声をかけた。

「青ちゃん! 約束だよ!」
「うんー。分かったー」

 ミキに引きずられながら、青子はのんきに返事をする。
 帰り道、ミキは青子に問いかけた。

「秀哉との約束って、何」
「んっとねー、ひでぽんが……あ」

 約束は、誰にも言わないこと。それはもちろん、相手がミキであっても、だろう。
 青子は、両手で口を覆って首を振った。

「約束だから、駄目」
「はあ?」
「内緒ってこと!」
「……」

 不愉快。ミキの脳内状態はその一言で片付いた。
 他の男との内緒をつくられるなんて、不愉快だ。が、かたくなな青子の一面を知っているので何も言えない。ぶすっとして黙ったミキに、青子は首を傾げるが、もちろん自分が原因だとは思ってもいないので、放っておくことにした。

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