「……」
「わーい」
ミキが、冷蔵庫から取り出したプリンを、青子はぱくぱくとたいらげる。くそ、可愛い。なんて思いつつ、ミキがそれを眺めていると、青子が不思議そうな表情で見てきた。
「何?」
「別に」
「ミキちゃんって、いっつも私のこと見てるよねぇ」
「……」
「顔、なんかついてる?」
「……別に」
「ふうん」
自分の顔に何かがついているわけではない、と分かった青子は、最後の一口を大きく開けた口に放り込み、飲み込んだ。
「ごちそうさまー」
「……」
「ミキちゃん?」
「……青子」
「何?」
「お前、プリン好きだよな」
「うん、大好き」
「そうか……」
「何?」
怪訝そうな顔で、青子がミキの真意を探ろうとでも言うのか、覗き込んでくる。ミキは、言おうかどうか少しためらって、結局口にした。
「俺のこと、好きか?」
「うん、大好き」
「……」
ミキは、そうか、と呟いて、俯いた。
不満なこと、というのは、まさに今の「大好き」だ。
まるで今の青子の言い方では、プリンとミキが同等であるかのようだ。ミキは、愛している、の意味を込めた「好き」を、未だ青子から聞いていない。つまり、ライクの域を出ない「好き」はよく言っているが、ラブのニュアンスを含めた「好き」は、聞いたことがない。
別に、青子は俺のことをほんとうに好きなのだろうか、などと女々しいことを考えているわけではない。青子は、ちゃんと自分を好きでいてくれているとは、思う。くっつくと安心する、とか言われているし、そこは疑っていない。だがしかし、ラブを含んだ「好き」も言われてみたいのだ。恋する男は、時に欲張る。まあ、ミキの場合実に謙虚な欲だが。
がしかし、次に青子が発した一言が、その状況を変えた。
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